週刊バッテリートピックス 「パナエナジー黒鉛調達」「山手線火災で廃棄に関心」など
2024年2月5日~2月12日のバッテリー業界では、パナソニックエナジーの人造黒鉛供給計画が大きな話題だった。海外企業も含めて企業が生産を拡大する一方、市民の間では火災などモバイルバッテリー廃棄への関心も強い。その流れから、ユミコアなどリサイクル企業への注目も高まっている。
<国内>
●パナエナジー、EV向け人造黒鉛の供給で豪ノボニックスと提携
パナソニック エナジーは2月9日、自社ホームページ上で、「電気自動車 (EV)用リチウムイオン電池の主要負極材料である人造黒鉛について、オーストラリアのノボニックス(Novonix Limited 、クイーンズランド州)との間で長期供給契約を締結した」と発表した。北米でのサプライチェーン強靭化および電池材料生産時の環境負荷低減が目的。
発表によると、リチウムイオン電池の負極材料としての黒鉛は、天然黒鉛と人造黒鉛で構成され、人造黒鉛は充放電を 繰り返しても電池の耐久性を高く維持する特性のために使用されている。ノボニックスが開発した連続黒鉛化炉技術は従来のアチソン炉に比べて、人造黒鉛生産時の CO2 排出量を低減できるという。
パナエナジーは2023年9月、日本政府のカナダ訪問に同行し、黒鉛製造を手掛けるカナダのNMGとの間で負極材料の量産化に向けた協力促進で合意している。
プレスリリース: リリース (panasonic.com)
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●山手線内で火災発生、リチウムイオン電池廃棄への関心高まる
2月6日午後6時ごろ、JR池袋駅に停車していた山手線内から煙が上がり、乗客が避難する騒ぎがあった。けが人はなかったが、2人が煙を吸い込み搬送された。乗客が所持していたリチウムイオンバッテリーが火元だった。この事件を機にリチウムイオン電池の廃棄への関心が高まり、「どのような種類の電池が危険なのか知りたい」といった声が上がっている。
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<海外>
●米デューク・エナジー、海兵隊基地から中国CATL製電池を撤去へ
ロイター通信が2月9日に伝えたところによると、米電力大手デューク・エナジーは米国南部の海兵隊基地に設置した中国寧徳時代新能源科技(CATL)製の蓄電池を「2027年までに自主的に撤去する」と明らかにした。民間向けプロジェクトでもCATLの製品を段階的に廃止する。
米国では、国防面から中国企業に対する警戒感が強まっており、米政府高官は、送電網などのネットワークに接続した米国の重要なインフラを中国政府系ハッカーが標的にしていると警告していたという。
●フィンランドの旧亜鉛炭鉱、重力電池の貯蔵場所に変身へ
(出所:wikipedia)
英オンラインメディアのインデペンデントは2月9日、「フィンランド・ピハヤルヴィの卑金属鉱山であるピハサルミ鉱山で、坑道内でエネルギーを貯蓄する計画が進められていることがわかった」と伝えた。「重力電池」と呼ばれる、位置エネルギーを利用した蓄電システムの配備を目指す。
ピハサルミ鉱山は内部の深さが1444メートルにおよぶ「ヨーロッパで最も深い」と言われる鉱山。かつて亜鉛や銅の採掘が行われていたが、既に閉山されている。新計画ではスコットランドのグラビトリシティが開発した重力電池が導入され、実現すれば坑道内で最大2MW(メガワット)のエネルギーを貯蔵できる可能性があるという。
●韓国LG化学、米GMにEV向け正極材を供給へ 2035年まで10年間
韓国LG化学は2月7日、自社ホームページ上で、米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)とEV向け電池材料の供給契約を結んだと発表した。2026年から2035年までの10年間で24兆7500億ウォン(約2兆7500億円)相当の正極材を供給する。
1回の充電で500kmの航続距離を持つ高性能純EVに搭載することを念頭に、 GMに向けて50万トンの電力供給に充分な正極材を供給する。両社は2022年7月、長期供給に関する包括合意を結んでいた。LG化学は2023年12月、米テネシー州クラークスビルでカソード工場の建設に着工したばかり。GMへの供給製品も同工場で生産する計画だ。
プレスリリース(英語)News Room | PR Center | Company | LG Chem
●中国の1月の新エネ車販売、前年比8割増 前月からは減少、乗用車も振るわず
中国汽車工業協会は2月7日、2024年1月の新車販売台数(輸出含む)が前年同月比47.9%増の243万9000台だったと発表した。6カ月連続で前年を上回った。このうち、新エネルギー車の販売台数は78.8%増の72万9000台。ただ、新エネ車の販売台数は前月比では38.8%減った。
一方、中国乗用車協会が2月8日に発表した1月の中国内の乗用車販売は205万台と、前月比14.1%減少した。前月比での減少は昨年8月以来だった。
●ユミコア、EIBから3億5000万ユーロを調達 EV電池のリサイクルで
ベルギーのユミコアは2月7日、自社ホームページ上で、欧州投資銀行EIBとの間で「EVバッテリーの正極材と活物質の生産・リサイクル及び研究開発に対して、今後8年間で€3.5億の融資を受ける契約を締結した」と発表した。
プレスリリース(英語): Umicore seals € 350 mln EIB loan for EV batteries | Umicore
関連記事: 欧州投資銀行ユミコアのEV用LiB正極材生産・リサイクルへ追加3.5億融資 | MIRU (iru-miru.com)
●英新興EVのアライバル、子会社を会計事務所の管理下に 経営破綻か
米新興企業向けナスダック株式市場に上場する英EVスタートアップのアライバル(Arrival)は2月6日、自社ホームページ上で、「英子会社2社を国際会計事務所のアーンスト・ヤング(EY)との共同管理下に置く」と発表した。同社は1月下旬から経営破綻の観測が伝わり、上場先の米証券取引所でも決算発表の遅れなどを理由に売買を止められている。
プレスリリース:ARRIVAL Announces Appointment of Administrators
関連記事:どうなる英国の電気化?電動ヴァンメーカーArrival破綻 | MIRU (iru-miru.com)
●SMMがウェビナー開催 EV電池とIRAについて
miru がメディアパートナーを務める中国の金属情報メディアSMM(Shanghai Metals Market, 上海有色網)は2月6日、「米インフレ抑制法(IRA)で変わる世界のリチウムイオンバッテリー (The Global Li-ion Battery Pattern Is Changing Under The Influence Of IRA Policy)」と題する会員向けオンラインセミナーを行った。
関連記事:SMMウェビナー「米IRAで変わる世界のリチウムイオンバッテリー」 | MIRU (iru-miru.com)
●欧州のバッテリー企業の動き
関連記事: 欧州バッテリーダイジェスト2024年2月 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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