タカトリ(6338)24/9Q1 大口SIC向け受注獲得でポジティティブ継続
24/9期0.8%増収5.5%営利増予想もQ1で大口SiC向け受注獲得し改めて成長に期待
株価4520円(2/9) 時価総額248億円 発行済株5491千株
PER(24/9期DO予12.2X)PBR(3.0X)配当(24/9予)40円 配当利回り:0.88%
要約
24/9Q1は83.5%増収、営利3.0倍、10/2と12/20にSiC大口ワイヤーソー29.44億円受注
精密ワイヤーソーを主力事業に半導体製造、LCD製造向け機器も手掛ける。特に化合物半導体(SiCは高硬度、GaNは高脆性、へき開性などの特性を持つ)などの難加工材向けマルチワイヤーソーで世界シェア90%に近いシェアを有する。
24/9Q1決算が2/9に発表され、売上高46.68億円(83.5%増)、営利8.15億円(3.0倍)、経常利益7.54億円(2.6倍)、税引利益5.18億円(1.6倍)と伸長した。
また受注も43.74億円(2.1倍)と拡大、受注残高は113.53億円(41.3%減)と受注残高の消化が進み大幅減ながら異常な受注残高から適正な受注残高に近づいてきた。
収益の大半(売上で98.8%、営利で100.7%)を電子機器事業で占め、同部門は売上高46.14億円(91.7%増)、営利8.71億円(2.8倍)、受注43.01億円(2.2倍)に。
同部門内の開示はないが、売上ではSiCマルチワイヤーソーを中心に新素材加工機器では欧州企業が中国企業と連携を図り、SIC市場の拡大を継続、部材不足などが解消に向かい豊富な受注高の消化が進みSiC切断加工装置が大幅な増収に。
具体的にはSiCウェハを調達したいという思惑でボッシュ、インフィニオン、STマイクロンなどの大手パワー半導体企業がSICC、TankeBlue、San'an等の中国勢と供給契約を締結し、合弁会社の設立などを行っている。半導体製造機器では自動車の電動化や家電、一般産機の省電力化でパワー半導体市場が拡大し堅調な伸びを示した。
ディスプレイ製造装置は装置が不振も一部で既存ユーザーからの改修を受託し売上微増を達成した。
地域別ではアジアが38.61億円(2.1倍)と中国中心に倍増、国内は6.74億円推定(20.1%増)、その他地域は0.79億円(45.6%減)となっており、中国でのSiCパワーデバイス向けのウエハ需要の強さが目立つ。また日本においてもSiCインゴット設備投資などが拡大しつつあり、加えてパワー半導体設備投資も拡大しており半導体製造機器なども拡大している模様。
受注は川上となるSICインゴット製造の遅延、更なる長期化、工場建設の遅れ等が影響、受注計画が遅れている。
しかし23/9Q1では大口の受注のアナウンスがなかったが、この24/9Q1では10月に13.66億円、12月に15.78億円、
合計で29.44億円を海外から受注した。半導体製造機器は受注の増減情報はないものの、ボトムを確認し拡大の方向の様子。ディスプレイ装置受注は低水準で推移も、改造受注で減少幅が緩和されたとみられる。
全体で24/9Q1は2.2倍となり、22/9Q4の48.84億円以来の受注額となったが、22/9Q3のような111.84億円と比較して本格的な受注回復とはなっていない。なおSIC切断装置の受注比率は大口で68%を占めるが、全体では80%程度はあると見られる。
24/9期SiCワイヤーソーの豊富な受注残で0.8%増収5.5%営利増予想と連続最高益予想
Q1時点で24/9H1予想に対する進捗率が売上52%、営利58%、経常利益50%となっており、業績予想に変更はなく、
24/9期は売上高165億円(0.8%増)、営利26億円(5.5%増)、経常利益27億円(3.9%増)、税引利益19億円(0.4%減)予想を据え置き、連続営利、経常最高益更新予想としている。但し上下では24/9H1が43.6%増収、69.7%営利増に対し、受注減で受注残の減少から24/9H2は同期比25.4%減収、26.8%営利減、24/9H1比較で16.7%減収、19.3%営利減予想としている。
同社は部門別、電子機器事業の内訳、受注予測など、説明会、説明会資料作成を行っておらず、大口受注獲得時のみの開示であるため、収益見通しが難しい。しかしQ1時点でも113.53億円と豊富な受注残(24/9Q2~Q4売上想定118.32億円)があり、Q1受注が盛り返し受注残高は23/9期末比2.5%減とほとんど減少していない。同社は24/9H1が同期比大幅増収増も23/9H2比では減収減益予想、24/9H2は受注残高の減少影響で同期比、前期比減収減益予想としている。但し現状は部材調達の緩和、川上のSiCインゴット製造も生産拡大が見込める。
マーケットではディスコによるレーザを連続的に照射することで、分離層(KABRA層)を任意の深さに形成し、KABRA 層を起点に剥離・ウエハ化するインゴットスライス加工が脚光を浴び、従来のダイヤモンドソーが非効率であるとの論調がある。同プロセス(KABRAプロセス)が単結晶および多結晶のあらゆるSiC インゴットに適用できるとしている。従来、Φ6インチSiCインゴットからウエハを切り出すまでの加工時間は、1枚あたり3.1時間前後(1インゴットあたり100時間)が、1枚あたり10分(1インゴットあたり約31時間)へと大幅に短縮、ワイヤ加工の場合、ウエハ表面に生じる40 μm程度のうねりを除去ラップ研削も不要で、素材ロス(カーフロス)が少なく、インゴット1 本あたりの取り枚数が、従来比約1.4 倍となるとの評価がある。
但し、実際の導入では設備投資が大きく(30~40倍程度と想定)、運用コストも高い傾向があり、またカット速度が遅く大量生産には不向きとの指摘、レーザ加熱で材料の一部が損傷する可能性などの指摘もあり、必ずしもレーザ移行が加速する方向には無いようである。
また同社は線速を2500~3000m/分(最大2倍)に高め、芯線直径も100~200μから80μまで細線化も進め、生産性を格段に向上させている。このためKABRA等のレーザ方式と同社のSiCワイヤーソーは共存して伸びるとみられ、再度設備増強の動きが強まる中でSiCワイヤーソーの受注は再拡大が見込める。
また半導体製造機器も中国に加え国内でパワー半導体設備投資が本格化し受注拡大が見込める。このため、期中受注、期中売上も加わり、下期は会社計画を上回る可能性があり、会社予想の上振れが期待される。また25/9期は内外での化合物半導体インゴットの生産増、パワー半導体の拡大が一層加速するとみられ、収益の拡大が続こう。
株価はSiC向け大型受注が相次いで22年11月には高値9760円まで駆け上がり、その後はウエハ用インゴットの拡大遅延影響も有り受注減少、ディスクロージャーの消極的なことも加わり印象を悪くし、株価は下落を始めた。
しかもディスコのKABRAプロセスでダイヤモンドソーの市場がシュリンクする恐れもあるとのことで、23年5月には高値から6割下落し4000円を割る3905円となり、現在は多少反発した状況にある。
このため24/9期会社予想EPS347.97円に対しPER13.0倍と、最高益更新銘柄ながらスタンダード機械平均PER13.9倍並みに止まっている。但し24/9Q1で改めてSiCワイヤーソーで大口受注獲得がなされたことから改めて収益の拡大期待が出てきた。またパワー半導体設備投資で非ワイヤーソー分野の製造装置も拡大が見込めるなど、再度パワー半導体関連装置メーカーとして注目が高まる期待があり、改めてポジティブに考えたい。
展示会ではバックグラインダ、各種テープ貼付装置をパネル展示、非ワイヤーソーも注力
1/24~26東京ビッグサイトで開催されたパワーデバイス&モジュールEXPOでは、半導体製造前工程でレジストフィルム貼付装置、後工程では保護テープ貼付装置、剥離装置、ウエハマウンタ装置、バックグラインダなどが紹介されており、今後、半導体の2.5D、3D化に伴う需要増に期待している。特に今回は化合物半導体の薄化対応でバックグラインダについて説明を受けた。同分野では東京精密が強く、装置の剛性で優れていることに加え、特にウエハ保持でリニアガイド方式による3点支持で高精度を確保できる特許を強味としている。同方式ではチャックテーブルがターンテーブル上の同心円方向の3箇所に配置されると共に2連の研削部を備えた研削装置となっている。
研削部のスピンドルの軸心位置とチャックテーブルの軸心位置との関係が一定に保たれ、安定した研削を可能としている。同社は装置の剛性では元々ワイヤーソーで培った装置の剛性を有し、この特許に抵触しない方法で、今回、安定した研削が可能な方法を生み出した。
具体的には機械的なロック機構とセンサーを組み合わせることで、高精度な位置決め精度を高める方式と見られる。機構として多少複雑な様であるものの、従来の装置ではワーク径や研削ホイール径を変更する場合に問題となるが、同社の装置は被加工物の径が変わっても、チャックテーブルを交換することなく確実に保持できる事で、被加工物の多様性に対応できるとしている。
いずれにしてもパワー半導体においては高出力化でウエハ薄化が必要であり、バックグラインダ並びに保護テープ貼付装置、剥離装置を含め、受注拡大が期待される。
(IRUNIVERSE Mirai)
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