コバルト、米中対立の新たな火種に? 米国が防衛備蓄として追加検討か・外電報道
コバルトが米中対立の新たな火種になる可能性が浮上している。ロイター通信が3月18日、「米国防総省の調達部門である国防補給庁(DLA)が2023年にコバルトを防衛備蓄目的で購入することを検討した」と伝えた。コバルトは中国の存在感が大きく、米国も備蓄にかじを切れば、両国の間で「コバルト備蓄合戦」が繰り広げられてもおかしくない。
■今年度の備蓄購入は見送り
ロイターが消息筋の話として伝えたところによると、米国は2024年9月に終了する2024年会計年度にコバルト購入を含めることは見送り、現時点でコバルトは防衛備蓄に含まれていない。ただ、国家防衛備蓄制度(NDS)のコバルト備蓄は冷戦時代に約1万3000トンあったのが現在は推定で333トンまで減っているとの指摘があり、購入を検討したようだ。
DLAの報道官はこれについて、「隔年での調査の結果、現時点でコバルト備蓄が脆弱とは判断していない。ただ、将来的な状況の変化の際には再評価する」と説明したという。
■中国勢がコンゴ囲い込み、他国企業は苦境に
コバルトはコンゴ民主主義共和国(DRコンゴ)からの供給が世界の7割を占めるが、そのコンゴのコバルト産業は、生産から物流まで中国勢が押さえ込んでいるのが現状だ。中国はそうして得たコバルトを国家糧食・物資備蓄局(SRB)が買い上げ、備蓄に励んでいる。
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中国勢の増産は世界的なコバルト価格の低迷を招き、中国以外の金属会社の苦境につながっている。米金属会社のジャーボア・グローバルが、管理職の一部をパートタイムにし、フィンランドで従業員の5%を解雇したと伝わった。同社は2023年に、米国産コバルトの生産増加につながると期待されていた米アイダホ州での工場建設を中止している。
2023年までコバルト生産で世界首位だったスイス資源大手のグレンコアは、2024年の生産目標を3万5000-4万トンと、23年実績(4万1300トン)から縮小した。
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中国勢の増産とインドネシアでのコバルト混合物の生産増から供給過剰観測が続き、コバルト価格は2024年に入っても低迷が続く。3月20日のLGコバルトの仲値は$13.625/LBと、下落基調だった前年の同時期に比べても約18%安い水準にある。
過去3年間のコバルト価格の推移(Co99.3%)($/LB)
(IR Universe Kure)
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