豪政府、国内資源2企業に計580億円融資へ アルミナとグラファイト、自国産業強化へ
オーストラリアの輸出金融公社 (EFA)は4月17日、ホームページ上で、「アルバニージー政権として、重要鉱物プロジェクト2件に対し合計5億8500万豪ドル(約580億円)を融資する」と発表した。同国の鉱業は足元で経営悪化に苦しむが、政府としては中長期的な脱炭素化の流れの中で自国産業を強化し、中国依存を低減する考えだ。
■クイーンズランドのアルミナと南オーストラリアのグラファイト
(EFAのホームページより)
EFAプレスリリース(英語)Critical minerals funding helps deliver future made in Australia (exportfinance.gov.au)
政府はまず、同国鉱業大手のアルファHPA(Alpha HPA)がクイーンズランド州で建設中の高純度アルミナ処理施設に4億豪ドルを新たに融資する。同施設は、建設中に約490人、完成時には200人以上の雇用を創出する見通し。製品はLED照明、半導体、リチウムイオン電池といったハイテク製品に使用される。
また、同じく同国鉱業のレナスコー・リソーシズ(Renascor Resources)に1億8,500万ドルを条件付きで融資する。同社は南オーストラリア州でグラファイト(黒鉛)工場を建設中で、2022年に既に融資認定を受けていたが、今回の認可により計画が前倒しされることになる。工場建設は第1段階で約150人の建設職と125人の新規雇用、第2段階まで拡張すればさらに225人の建設職と120人以上の雇用創出が見込める。製品はリチウムイオン電池の材料に充てられる見通しだ。
融資資金はEFAが同国政府の40億ドルの重要鉱物ファシリティなどから拠出する。発表資料中で、同国のアルバニージー首相は「新しい仕事と新しい機会をめぐる世界的な競争が始まっている。わが国政府は、オーストラリアが勝利を収めることを望む。これら2つの重要鉱物プロジェクトは、製造業における良質で安定した雇用と、クリーンで信頼できるエネルギーの確保に役立つだろう」と述べた。
両社はともにオーストラリア株式市場(ASX)の上場企業で、発表後の株式市場でともに株価が急伸した。
■鉱物価格の低迷で産業は経済危機
もっとも、豪州の鉱業は足元ではさえない。リチウムをはじめ鉱物価格全体の低迷に加え、電力や人件費などが南米やアフリカに比べて割高であるため、世界的な資源大手が同国での採掘事業を取りやめる動きが相次いだ。2023年には同国の資源大臣が来日して日本企業による投資を呼びかけたばかり。業界団体が鉄スクラップの輸出禁止を提言するなど、鉄鋼業界でも動きがある。
中国依存の低減に向けては米国との協調も目立つ。同国レアアース大手のライナス・レアアースを巡っては4月に入り、一度破綻した米同業のMPマテリアルズコーポレーションとの合併観測が再燃している。
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(IR Universe Kure)
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