露ノルニッケル、中国で銅精錬施設を合弁設立か 社長が明かす、2027年までに実現へ
ロシアの非政府系通信社であるインテルファクス通信の4月22日報道によると、同国鉱業大手のノリリスク・ニッケル(ノルニッケル)が中国での合弁工場設立を計画している。ロシアの新興財閥オルガリヒの1人でもある同社のウラジミール・ポターニン社長が同通信とのインタビューで明かした。西側諸国からの経済制裁に苦しむロシア企業が中国に活路を求める流れが強まっている。
■2027年までに銅精錬工場を移転
インタビューによると、ノルニッケルは2027年までにも、老朽化が目立っていた北極圏の銅工場を閉鎖し、匿名のパートナーと共同で中国に銅製錬施設を建設する。計画は既に政治的了承を得て、ロシアと中国のトップレベルの会談の議題に含まれてもいるという。
ポターニン氏はロシア国内の銅工場の現状について、「(西側の制裁で)決済上の障害や供給拒否、意図しない割引、在庫増などが発生し、制裁前の収益の80%しか当てにできなくなっている。その結果、手数料や仲介業者のサービス料といったコストが製品価格の5〜7%にも達してしまった」と話したという。さらに4月12日に英米がロシア産金属に対し追加の制裁措置を発したことも「一段の重荷になる」と認め、その結果、「生産の一部を直接消費する市場(中国)に移す」(ポターニン氏)との判断に至ったとした。
■まずは港の整備から
具体的には、まずは物流インフラを整えることから始まるようだ。同社は北極圏のターミナルの拡張を巡り、ロシア国営原子力企業のロスアトムとの間で、砕氷船のサポートについて既に合意したという。ポターニン氏は、これにより「中国に銅精鉱を年間約200万トン程度、北極海航路で出荷することが可能になる」と話した。
物流インフラの整備は、同社がかねて進行していた銅濃縮炉や他の同精錬施設の増設計画にも寄与するとみられ、ノルニッケル全体で「2030年までに採掘と加工の両方で大きく成長できる」(ポターニン氏)との期待が膨らむ。同氏は「中国との合弁会社の配当金の大部分を、ロシア国内投資のためにロシアに還元する。4年後には、現在より50%近く、2〜4年前よりも20%程度、業績を改善させることができるだろう」と話したとも伝わった。
また、他のロシアの銅企業との協業についても「次の段階では、おそらく彼らと話し合うことになるだろう」と、ロシア企業の間に中国接近の流れが広がる可能性を示唆したという。
■EVへの夢冷めやらず
ポターニン氏はまた、インタビューで、銅に加えて、ニッケル、コバルト、リチウム、リチウム製品、およびリチウムとナトリウムイオン電池材料を専門とする他の中国企業との契約についても示唆した。同氏は「ロシアにとって重要なセクターの先端技術にアクセスでき、協業先も安定供給の恩恵にあずかることができる」と話したという。同氏は電気自動車(EV)産業について「金属の一部を最終製品、バッテリー製造用の材料の形で供給できるようになる。われわれは市場に参入するが、われわれにとっては異例の形で参入する」と述べたという。
ノルニッケルは、ロシアによるウクライナ侵攻前には、フィンランドのノリリスク・ニッケル・ハルヤヴァルタ工場でドイツの電池大手BASFと協力してバッテリー生産に着手する計画だった。この計画は現在、凍結状態だが、ポターニン氏は「私はまだ期待している」とも話したという。
(IR Universe Kure)
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