週刊バッテリートピックス 「中国産電池の米関税3倍に」「パナ戦略説明会」など
2024年5月13日~5月19日のバッテリー業界では、米国が、観測が伝わっていた中国産車載電池への輸入関税引き上げを正式に発表し、大きな注目を集めた。旭化成が車載電池向け材料のカナダ工場の建設を進めるなど中長期の需要を見据えた電池開発はなお盛んだが、水素関連への期待はしぼむなど、やや元気のなさも感じられる。
<国内>
●パナ、車載電池事業の改善目指す 戦略説明会
パナソニックホールディングス(HD)は5月17日に開いた戦略説明会で、車載電池事業について、2030年に国産分の国内向けシェアを80%以上にするとの見通しを示した。現在は99%を北米に輸出している。米ネバダ工場の生産性も15%超向上させる。
車載電池は同社の投資領域だが、北米のEV減速など想定外の事態に見舞われ目標未達。事業基盤を強化し、2027年に米インフレ法(IRA)込みで2桁の投下資本利益率(ROIC)を実現できる体制づくりを目指す。
戦略説明会資料:プレゼン (holdings.panasonic)
●日野自、標準電池パックイメージモデル初公開へ
日野自動車は5月15日、自社ホームページ上で、「標準電池パックイメージモデルを日野として初めて公開する」と発表した。
5月22日から24日にパシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」に出展し、公開する。電池パックを標準化し広く普及しやすい構造とすることで電池セルの進化を制約せず、さらには電池パックの組み合わせにより必要エネルギーが異なるさまざまな用途・車型に対応できる製品。同社は7月17日から19日にAichi Sky Expoで開催される「人とくるまのテクノロジー展 2024 NAGOYA」にも出展する。
●宇部マクセル、セパレーター原膜製造設備を新設^
UBE(本社:東京都港区)とマクセル( 本社:東京都港区)の合弁会社である宇部マクセル(本社:京都府乙訓郡)は、5月16日、自社ホームページ上で、「車載用リチウムイオン電池の需要増大に対応するため、堺事業所内にセパレーター原膜製造設備を新設する」と発表した。
関連記事: 宇部マクセル リチウムイオン電池用セパレータ設備増強 | MIRU (iru-miru.com)
●車載電池のCO2排出データを共有へ 欧州規制に対応
一般社団法人の自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター(東京都港区、ABtC)は5月16日、「車載電池の二酸化炭素(CO2)排出量のデータなどを会員企業間で共有できるサービスを始めた」と発表した。欧州で電池のCO2排出量の開示が求められていることに対応する。データ共有で規制に対応しやすくすることを目指す。
同組織は2月に法人化し、5月7日からサービスの提供を始めたばかり。トヨタ自動車など自動車大手14社のほか、自動車部品や電池の業界団体も会員に参画している。
ホームページ:一般社団法人 自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター(ABtC)
プレスリリース:【プレスリリース】自動車および蓄電池サプライチェーン企業間でのデータ連携サービス (abtc.or.jp)
●旭化成、カナダ工場はオンタリオ州に 米国への製品供給も視野
旭化成は5月15日、自社ホームページ上で、カナダで2027年の稼働を予定するEV電池向け主要部材の工場立地を公表した。同国東部オンタリオ州の南部に建設する。米国との国境に近く、両国の電池メーカーなどへの供給を想定する。原材料調達は現地で行うことを検討している。
旭化成は4月下旬、ホンダとカナダでのEV電池向けセパレーター事業で協業すると発表していた。
プレスリリース:カナダセパレータ工場の立地を公表 | 2024年度 | ニュース | 旭化成株式会社 (asahi-kasei.com)
関連記事: 週刊バッテリートピックス 「ホンダ旭化成カナダ協業」「北京モーターショー開幕」など | MIRU (iru-miru.com)
●ヤマハ発動機、横浜にショールーム 高齢者向けアシストも発売
二輪メーカーのヤマハ発動機は5月15日、自社ホームページ上で、横浜市に新たなショールームを開業すると発表した。
横浜みなとみらい 21 中央地区 53 街区の「横浜シンフォステージ(YOKOHAMA SYMPHOSTAGE(TM))」EAST棟1階に、ショールーム「Yamaha E-Ride Base(ヤマハ イーライド ベース)」を6月6日にオープンする。オープンイベントとして電動アシスト自転車で横浜の街を周遊するガイドツアーなどを開催予定。
同社は5月にはバッテリーと充電器を刷新し扱いやすくした高齢者向けの「PAS SION-U(パスシオンユー)」の新モデルを発売した。
●VOLTAと三井物産、シンガポールで合弁会社
VOLTA(本社:静岡県富士市)は5月15日、シンガポールのMiracle Eternal PTE LTD.(MES)と三井物産(本社:東京都千代田区)との間で、合弁会社設立で合意したと発表した。
関連記事:VOLTA、Miracle Eternal PTE LTD.、三井物産と合弁会社設立 | MIRU (iru-miru.com)
<海外>
●米国、中国産車載電池への輸入関税3倍に引き上げ
バイデン米政権は5月14日、中国産電気自動車(EV)への輸入関税を現行の25%から4倍の100%に引き上げると発表した。車載用電池は現行の約3倍の25%とする。中国は同日即時に反発し、商務省が「強烈な不満」との声明を発表した。
関連記事:米国、中国産EV関税4倍に引き上げ 車載電池は3倍、中国は即刻反発 | MIRU (iru-miru.com)
●1-3月期の燃料電池車36%減 水素への関心薄れる SNE reserch
韓国調査会社のSNE reserchが5月13日に発表したリポートによると、2024年1-3月期に世界で新たに登録された燃料電池車(FCEV)台数は2382台で、前年同期から36.4%減った。
(出所: SNE reserch)
FCEVは燃料電池と水素タンクを搭載し、水素と酸素を化学反応させて電気で走る次世代エコカー。2022年までは投資意欲の増大で生産が大幅に伸びたが、2023年にEV減速と歩調を合わせて失速。2024年に入っても同様の傾向が続き、各国の水素への関心は薄れ続けている。
プレスリリース:Press Release - Insight -SNE Research
(IR Universe Kure)
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