2024年5月のタングステン市場は上昇している。中国の鉱石価格が過去最高値を更新し続け、国際鉱石価格をはじめすべての形状が値上がりしている。ベンチマークであるタングステンAPTの国際価格も5月16日に仲値$337.5/MTU と、2023年3月半ば以来、約1年2か月ぶりの高値を付けた。

 

■中国供給ひっ迫は本物?

 

過去3か月間のタングステンAPT価格の推移(EU Free market)($/MTU)

 

 

　タングステンAPTの国際価格は4月中に行ったり来たりし、関係者の間では「中国の供給ひっ迫が本物かどうかの様子見気分が強かった」(タングステン取引を扱う中堅商社幹部)との声があった。しかし、5月に入っても中国の鉱石価格の上昇が続いたことで「ひっ迫は本物のようだ」との見方が強まり騰勢を強めた。

 

 

過去3か月間の中国タングステン鉱石価格の推移(WO3 65%)(RMB/mt)

 

　その中国国内のタングステン鉱石価格は快進撃が続く。5月23日仲値はRMB15万6500/mtに達した。統計を取り始めた2014年からの最高値を3月からほぼ毎週のように更新し続けた。

　中国で5月初旬に本格的に始まった当局の環境査察の影響で、タングステン鉱山端と製錬所の一部で生産停止が続いていると伝わっている。一方で中国の製造業の低迷が一服する中で超硬合金の需要がやや回復し、タングステン鉱石の供給がひっ迫しているとされている。これについて前出の商社幹部は「査察の終了時期が見えないとの情報があり、生産再開のめどが立っていない企業があるようだ」と話していた。

 

過去3か月間の国際タングステン鉱石価格の推移(WO3 65%) ($/MTU)

 

　国際鉱石価格も中国価格に追随している。タングステン鉱石の国際価格は5月16日には$262.5/MTUと、2023年6月末以来ほぼ1年ぶりの高値に上げた。

 

■炭化タングステンとタングステンバーは10年ぶり高値

　中国市場の比重が大きい炭化タングステンとタングステンバーは、10年ぶりの高値圏にある。

 

過去3ヵ月間の炭化タングステン価格の推移(99.7%min 2.5-7.0um Fob China)($/kg)

 

過去3か月間のタングステンバー価格の推移(w-4 99.9% China)($/kg)

 

 　炭化タングステンは5月23日に仲値で$47.25/kgと、2014年4月以来の高値を付けた。タングステンバーも5月16日に仲値$48.5/Kgと2014年9月以来の高値に上げた。どちらも2022年や2023年に付けた直近高値を上抜ける形で力強く上昇した。

 

 ■フェロタングステンも2年ぶり高値圏に

 

過去3か月間のフェロタングステン価格の推移($/kg)

 

　フェロタングステンと酸化タングステンは、そこまでの勢いはないものの、やはり上昇した。フェロタングステンは5月23日に仲値$47/kgと、2022年6月以来ほぼ2年ぶりの高値に上げた。

 

過去3か月間の酸化タングステン価格の推移(Wo3 99.99%min FOB China)($/MTU)

 

　酸化タングステンは5月16日に仲値$347.5/MTU。2023年3月以来の高値水準となる。

 

Topics

　三菱マテリアルグループは5月14日、自社ホームページ上で、「ドイツのタングステン製品メーカーであるH．C．スタルク・ホールディング(H.C.Starck Holding( Germany))

GmbH=H.C.Starckの全株式の取得について、提携先のベトナム企業Masan High-Tech Materials Corporation（MHT）と基本合意した」と発表した。2025年3月末までに買収を完了する。

 　H.C.Starckは、100年以上の歴史を有する世界有数のタングステン製品メーカー。世界最大級のタングステンリサイクル能力を保有している。

 

関連記事:三菱マテリアル H.C.Starck Holdingの全株式取得 | MIRU (iru-miru.com)

 

 

(IR Universe Kure)

 

 

関連記事