LME、インドネシア精錬ニッケル商品の上場承認 鉱石から加工へ産業転換、中国後押し
ロンドン金属取引所(LME)は5月24日、インドネシアの精錬ニッケルブランド「DX-zwdx」の上場を承認したと発表した。精錬ニッケルのブランドのLME上場はインドネシア産では初めて。インドネシアの目指す「単純な資源産出国から付加価値の高い製造業国へ」の方針に弾みをつける一歩となる。背後で後押しするのは中国企業だ。
■中国・シンガポールの合弁企業が生産者
LME発表:BRANDS 24 186 LISTING OF NICKEL BRAND DXzwdx.pdf
同ブランドの製造元は、中国の電池メーカーである中偉新材料と、シンガポールのRIGQUEZA INTERNATIONALの合弁会社「PT CNGR Ding Xing New Energy」。スラウェシ州の年産5万トンのニッケル鉱山が原資となる。PT CNGRは、2月にDX-zwdxのLME上場を申請していた。
インドネシアは産業転換を視野に、2020年にニッケル鉱石の輸出を禁止した。それまでは鉱石輸出が主流で、中国に輸出してステンレス鋼に加工する形を採り、いわば世界のニッケルのサプライチェーン(供給網)の最上流部分にいた。しかし、それを転換することを目指し、鉱石輸出を止めるとともに中国をはじめ外資の加工業者の投資誘致を積極化した。
中偉新材料はその期待に応えてインドネシアに投資する中国企業の1つだ。インドネシア経済担当調整省は5月26日、「中国中偉新材料が10~12月にも東南スラウェシ州北コナウェ県で新たな施設を建設することを計画している」と明らかにした。中偉新材料のインドネシア工場としては5か所目になる。中偉新材料はインドネシア産ニッケルを使用して純度99.99%の電解ニッケル(ニッケルカソード)を生産している。
中偉新材料のインドネシア工場
(出所:インドネシア経済担当調整省)
■産業転換の光と影
中国企業と手を携えての産業転換はうまくいっているように見え、今回のLMEでのブランド上場はその1つの結果だろう。しかし、中国向けの加工品需要が盛り上がる一方、鉱石採掘産業には、政策上で置き去りにされるリスクが見え隠れする。ネットメディアのビジネス・ワールドは5月29日、「インドネシアのフィリピン産ニッケル鉱石輸入が急増している」と伝えた。自国内に豊富な資源を蓄えるにもかかわらず、供給できずの他国から輸入する事態が発生している。
関連記事:沈むインドネシア、浮かぶフィリピン ニッケルで明暗、中国銑鉄価格は半年ぶり高値 | MIRU (iru-miru.com)
「単純な資源輸出では先進国に利用されるだけ」――新ブランドの上場を産業転換の光とすれば、鉱石供給のひっ迫はさしずめ影。背後にあるのはこんな焦燥感であるようだ。
(IR Universe Kure)
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