コバルト、ヘッジファンドが底値買い? 価格はじり貧も「トランプ後」の商品高狙うか
「1人負け」の様相が続くコバルト価格だが、ここにきて投機買いが入っているとの情報が浮上した。ヘッジファンド勢が現物コバルトを買いだめし、先行きの商品相場の高騰に備えているという。「安い時に勝って高い時に売る」のはもちろん投機の基本。足元のコバルト価格は相変わらずじり貧で、需給面では上向く材料も乏しいが、どうなるか?
■LGコバルトは8年ぶりの安値
米ブルームバーグ通信は7月1日、「アンカレッジ・キャピタル・アドバイザーズ(Anchorage Capital Advisors)やスクエアポイント・キャピタルLLP(Squarepoint Capital LLP)などのヘッジファンドが、コバルトの現物を買っている」との消息筋の情報を伝えた。
アンカレッジはコバルト金属と水酸化コバルトを、スクエアポイントはトレーダーからコバルト金属を購入しているという。
足元のコバルト価格は相変わらず低迷している。ベンチマークであるLGコバルトは6月20日に仲値$12.375/LBを付けた。2016年秋以来ほぼ8年ぶりの安値水準にある。
過去10年間のLGコバルト価格の推移(Co99.3%)($/LB)
コンゴ民主主義共和国(DRコンゴ)などで中国勢が増産を続けている一方、電気自動車(EV)向けバッテリー需要はEV失速とコバルトフリー電池の普及で想定を下回る。需給どちらも好転の要素は乏しく、業界関係者の間では「市況改善はまだ先」(外資系商社の担当者)とのあきらめムードが広がる。
■小さな取引市場、価格操作しやすく
ヘッジファンドのコバルト買いにはいくつかの理由があるようだ。ブルームバーグによると、コバルトの取引市場はマーケット自体が株や為替と比べて小さいため価格操作がしやすく、現物を買うことによって資金が市場に流入すれば容易に価格を押し上げることができる。価格が上昇したタイミングで現物を売れば利益確定が容易であるとの考えのようだ。実際、10年ほど前にはヘッジファンドがコバルトの投機取引で大規模な収益をあげた例があったという。
また、2020年に米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でコバルト取引が始ま.るなど取引機会が増えたことにより、コバルトの先物と現物の価格差を利用したヘッジ取引も容易になった。前出のアンカレッジは、CMEでのコバルト取引にも積極的だという。
■トランプ復帰で商品上昇の傾向は「ニューノーマル」確定に
(出所:ドナルド・トランプ公式ホームページ)
コバルトは1人負けだが、商品相場全体では上昇基調が続くとの見方が多い。ロイター通信は6月30日、HSBCエコノミストのポール・ブロクサム氏が「11月の米大統領選でトランプ氏が当選するならば、世界の商品相場の上昇は加速することになる」と予想したと伝えた。
ブロクサム氏は6月22日のHSBCサイトでの公開レポートで「コモディティ市場の供給サイドは、地政学、気候変動、エネルギー転換などの根強い要因によって制約されている」とし、「商品価格の上昇は既に『ニューノーマル』だ」と述べた。トランプ大統領の復帰は米中などの地政学的な分断を加速するため、その傾向に拍車をかける可能性があるとの見立てだ。
レポート全文(英語): Commodities upswing underway (hsbc.com.au)
多くの商品相場が長期に上昇を続けるなら、コバルトにもいずれ反転の時が来るはずではある。ヘッジファンドの読みはそんなところにあるのだろうか。
(IR Universe Kure)
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