ローツェ(6323)25/2Q1決算説明メモ ニュートラルからややポジティブに変更
25/2期29.5増収、85.4%営利増は受注上伸で増額期待、26/2期はHBM等で収益上伸期待
株価34500円(7/11) 時価総額6085億円 発行済株17640千株(9/1:176400千株)
PER(DO25/2期予:22.5X)PBR(6.59X) 配当(25/2DO予)155円 配当利回り:0.9%
要約
・25/2Q1は75.5%増収85.4%営利増、経常2.2倍、57.2%受注増とAI関連上伸大きく寄与
・25/2期29.5%増収31.0%営利増予想もAI関連活況、円安寄与もあり収益増額期待高まる
・高採算の半導体関連装置が牽引、AMAT、TSMC、中国ローカル向けも伸長し収益上伸続く
25/2Q1は75.5%増収85.4%営利増、経常2.2倍、57.2%受注増とAI関連上伸大きく寄与
半導体・FPD・ライフサイエンス関連の自動化装置の開発・製造・販売を手掛け、主力事業のウエハ搬送システムで、世界シェアトップクラス。25/2Q1は売上高292.88億円(75.5%増)、営業利益87.48億円(85.4%増)、経常利益113.61億円(2.2倍)、税引利益87.74億円(2.5倍)、受注高249.43億円(57.2%増)、受注残高613.74億円(1.5%減)と、豊富な受注残の順調な消化とAI関連の上伸受け大幅な収益上伸に。
セグメント別では半導体・FPD製造装置関連が売上高291.35億円(75.6%増)、営利89.62億円(83.0%増)受注246.69億円(59.3%増)、受注残610.83億円(0.1%減)に。品目別では半導体関連装置が売上高268.36億円(91.9%増)、受注226.16億円(66.2%増)、受注残521.80億円(6.0%減)に。売上面では主力ユーザーAMAT向けが59.55(51.4%増)と前24/2Q2以降四半期で60億円前後の売上で推移している。納入先第2位と見られるTSMCは売上記載が無いが、台湾向けが37.62億円(32.3%増)となっており、こちらも24/2Q1の28.43億円をボトムにQ2以降38億円弱で推移しており、TSMC向けも増加基調となっている模様。さらに中国向けが133.64億円(3.6倍)と半導体製造拠点の増強の活発化が大きく寄与している。ちなみに24/2Q137.21億円に対し、Q2に57.99億円、Q3は94.31億円、25/2Q1では133.64億円と24/2Q1比で3.6倍となっている。受注も依然好調で、特に中国向けに加えAI半導体、とりわけHBM関連向けに大幅受注拡大となっている模様。
FPD関連装置売上は2.62億円(24.3%減)、受注11.48億円(8.4%増)、受注残45.73億円(3.2倍)に。売上面では韓国サムスン向けに大型案件がなく、受注もQ2のサムスンベトナム向け大型受注(26億円)の反動減で大幅減少に。
利益面では増収効果に加え、MIX良化もあり大幅増益、経常利益では円安による為替差益27.31億円(22.05億円増)となっており、経常利益は倍増となった。
25/2期29.5%増収31.0%営利増予想もAI関連活況、円安寄与もあり収益増額期待高まる
25/2期会社予想に変更はなく、売上高1207.84億円(29.5%増)、営業利益316.17億円(31.0%増)、経常利益315.18億円(16.4%増)、税引利益229.16億円(17.1%増)予想を据え置いた。主力品目別では半導体関連1024億円(29.7%増)、FPD関連装置65億円(75.4%増)、ライフサイエンス13億円(6.5%増)を見込む。現状、半導体製造装置関連はフル生産が続いているとみられるものの、緩やかな生産拡大が続くとみられ、円安もあり会社計画を上回る売上が期待される。またFPDは受注残案件の韓国サムソン向け売上が寄与しよう。
利益面では半導体関連について増収効果が大きく、Q1での営業利益率について年度を通じて確保するとみられる。但し、6/24に開示されたNanoverseTecnologies,Ltd..(以下N社)、を連結子会社化することとしたことでコスト増が見込まれる。N社は2022年7月に設立された米国オレゴン州を拠点とする半導体製造装置の開発、製造、販売を主な事業とする。今後の半導体プロセスにおいて有用な新技術の研究開発を続け、複数の競争力のある特許を保持している。この技術群は今後成長が加速するアドバンストパッケージ分野において重要な技術を含んでおり、N社は評価機を半導体メーカーへ納入する予定となっている。また同装置には同社搬送装置が採用されている。N社の特許は、主に半導体業界向けの計測、検査、レーザー技術に関連しており、特にスケーリングされた画像に幾何学的形状を配置し、その形状に関連する動作を画像上で行うグラフィカルプログラミングシステム(米国特許20100138028)と、表面保護に使用される樹状高分子組成物(米国特許8206827)とみられる。N社は23年12月期に営業損失20億円を計上している開発先行企業であり、24年12月期も同額程度の研究開発負担による赤字計上があると判断、その分を差し引いても売上増額効果で営業利益の増額が期待される。また経常利益については円安傾向が継続しており、25/2期についても営業外で為替差益が発生する見通しから、経常利益では更なる増額が見込まれる。
受注については最大手ユーザーであるアプライドマテリアルズ社の収益が24/10期までは四半期横ばいで推移も、25/10期には大きく拡大する見通しにある。特に7月8日には銅配線を2nmロジックノード以降へと微細化してコンピューティングシステムのワットあたり性能を高める、画期的なマテリアルズ エンジニアリング技術を発表した。Low-k絶縁材料で配線抵抗を低減、3D積層チップを高強度化が可能。業界初となる材料の組み合わせを用いて銅配線の微細化を2nmノード以降へと進める技術。具体的にはルテニウムとコバルトを組み合わせた二元金属(RuCo)を用い、ライナー厚を33%減らし2nmにし、表面特性を改良してボイドフリーの銅リフローを可能とし、電線抵抗を最大25%引き下げてチップのパフォーマンスと消費電力を改善できるとのこと。ロジックだけでなくHBMでも利用できるとのことで、受注急拡大が期待される。また第2番目のユーザーとしてTSMCがあるが、TSMCの24/12Q2決算では売上高が6735億台湾ドル(前年同期比32%増)、6月が2078億台湾ドル(33同月比33%増)となっており、コンセンサスを上回って推移、今後24/12期収益の上振れが期待される。設備投資についても現在見積もられている上限値の320億ドル(5%増)を改めて超える可能性もある。また前期伸長した中国向けについても設備投資意欲が旺盛であり、25/2期もさらに受注拡大が見込まれる。このほか23年3月にM&Aで子会社化したイアス社の製品群も成長が見込める。主力製品は全自動VPD装置(自動気相分解装置)。Siウエハ中の金属不純物をICP-MS(誘導プラズマ質量分析法:溶液に含まれる元素濃度を高感度、多元素同時に分析できる装置)で自動分析するための前処理装置として開発されたもの。半導体製造は金属汚染管理が重要で高集積度化で従来方法の全反射蛍光X線法(TRXF)では管理濃度が薄く検出限界に達している。このため前処理濃縮法としてイアヌ社の気相分解装置を使って検出限界を2ケタ改善したうえでICP-MS分析する手法が主流になりつつある。なお同社装置と併用し、異物混入防止のシナジー効果も期待できる。売上規模は30億円水準もシナジー効果で売上加速が期待される。このため、同社25/2期の半導体関連受注金額だけでも1000億円を超え1200億円も視野に入ってこよう。
高採算の半導体関連装置が牽引、AMAT、TSMC、中国ローカル向けも伸長し収益上伸続く
同社の半導体関連装置の主力ユーザーは半導体向けでAMAT、TSMC、マイクロン、FPDでサムソンなど。また最近は中国ローカルが会社設立ラッシュで中国向けが急拡大している。現状、先端デバイス向け設備投資でAI半導体など設備増強の動きが加速、26/2期は関連装置の奪い合いの状況もあり得る。とりわけHBMの不足が深刻で、HBM向けの新規受注拡大が期待される。加えて昨今、異種デバイスの積層化や3DNAND以外で3番手のマイクロンもHBMへ本格投入に動き出している。アドバンスドパッケージ用装置では、シリコンウエハ上でパッケージングする中工程が必要となり、複数のウエハを3Dに積層するが、高性能化のためにはウエハを薄くしてTSV(竪穴形成)技術を介して積層数を如何に増やすかがポイントとなり中工程搬送システムの需要が急拡大する見通し。同社はアドバンスドパッケージ(中工程)搬送システム、先端デバイス向けに対応、M&Aで関連技術での新製品群の投入も期待できる。また分析装置においては、新レーザーアブレーション装置など先端分野で裾野の拡大、シナジー効果も期待され、半導体関連装置は売上、受注とも過去最高額更新が続こう。
株価は業績好調、特にHBM向けなどで受注拡大しており、AMAT、TSMCが主力ユーザーでもあり上場来新値更新を続けている。9/1に1:10の株式分割を実施するが、25/2期会社予想EPS130.07円に対しPER26.5倍はプライム機械平均PER19.2倍に対し割安感が薄れた感がある。しかし25/2期も受注、売上ともに増額含みであり、AI半導体向けで上伸が続くとみられ、9月の分割もあり流動性も高まるため、ニュートラルからややポジティブに評価を再度引き上げたい。
(H.Mirai)
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