週刊バッテリートピックス 「日系3社EV協業へ」「韓国電池の決算振るわず」など
2024年7月29日~8月4日のバッテリー業界では、日産自動車、ホンダ、三菱自動車の3社の電気自動車(EV)での協業検討開始が大きな話題となった。競争の激しい世界のEV業界で、日本勢が一丸となって対応していくことになる。一方海外では、EV失速に伴い韓国電池大手のさえない業績が発表になるなど、世界の情勢は厳しい。
<国内>
●日系自動車3社がEV協業の検討開始
日産自動車、ホンダ、三菱自動車の3社は8月1日、EVや次世代車「SDV」の分野で、協業の検討を始める覚書を結んだと発表した。
プレスリリース(三菱自):⽇産⾃動⾞、Honda と三菱⾃動⾞、 三社での戦略的パートナーシップ検討の覚書を締結(ニュースリリース)-三菱自動車 (mitsubishi-motors.com)
日産とホンダはEV向け車載ソフトウエアや部品の共通化も目指す。
プレスリリース(日産): 日産自動車とHonda 次世代SDVプラットフォームの基礎的要素技術の共同研究契約を締結 (nissannews.com)
●農工大、二酸化炭素用いたLIB材料の可能性実証
東京農工大学(農工大)は7月31日、ホームページ上で、二酸化炭素(CO2)を原料とする高分子(ポリマー)材料の一種である「CO2/エポキシド共重合体」と「リチウム塩」の混合物からなる「イオン伝導性固体高分子電解質」について、「リチウム二次電池(LIB)用のフレキシブルな電解質膜として応用可能であることを実証した」と発表した。
高分子の架橋構造制御と超高塩濃度化を検討した結果、同材料は優れたイオン伝導度と力学強度の両立を実現することが分かった。従来型のものよりも安全性が高く、カーボンニュートラルの実現に寄与すると期待される。
●FDK、ニッケル水素電池を発売
FDK(東京都港区)は7月31日、ニッケル水素電池「HR-AATEX」を8月から発売すると発表した。既存モデル「HR-AAUTEW」と比較して、約1.2倍の電池容量と-40℃の環境下における約6倍の放電時間を実現した。
プレスリリース:車載アクセサリ市場向けニッケル水素電池(HR-AATEX)を開発 ~ -40℃放電特性を飛躍的に向上させ、寒冷地でエネルギーを必要とする車載アクセサリに新しいSolutionを提供 ~ | FDK
関連記事:FDK、-40℃放電特性を向上させたニッケル水素電池の量産開始へ | MIRU (iru-miru.com)
●盆踊りに燃料電池車の水素利用 愛知
(出所:Abobeイメージイラスト)
中日新聞が7月31日に伝えたところによると、愛知県知多市の佐布里小学校で7月20日に開かれた「佐布里盆踊り」で、燃料電池自動車(FCEV)の水素で発電した電力が屋台などで使用された。こうした取り組みは同市初。
同市のガス会社である知多高圧ガス(同市新刀池)が提案したという。知多高圧ガス3月に市内初の水素ステーションを開設したばかりだった。
●パナ、純水素型燃料電池の熱を活用へ実験
パナソニック・ホールディングスは7月29日、自社ホームページ上で、燃料電池工場で生産に必要な電力を再生可能エネルギーで賄う滋賀県草津市の実証施設で、「水素型燃料電池の発電時に発生する熱を吸収式冷凍機(空調機)の熱源として活用する実証実験を始めた」と発表した。
関連記事:純水素型燃料電池の熱を吸収式冷凍機で活用実証、パナソニック | MIRU (iru-miru.com)
●秋葉原に太陽電池実験ハウス 一般見学も、10月まで
YKK AP(東京都千代田区)は、7月25日、自社ホームページ上で、「東京都千代田区などと連携し、次世代型ソーラーセル、ペロブスカイト太陽電池の日射量や発電量データの収集を行う実証実験ハウスを、同区の秋葉原駅前広場に設置した」と発表した。10月10日まで設置する。ハウス内は一般見学もできる。
プレスリリース:秋葉原駅前広場にて、ペロブスカイト太陽電池を用いた建材一体型太陽光発電(BIPV)の実証実験を開始 | YKK AP グローバルウェブサイト (ykkapglobal.com)
関連記事:ペロブスカイト太陽電池の実証ハウスが東京・秋葉原駅前広場に登場、YKK APなど設置 | MIRU (iru-miru.com)
<海外>
●米グループ・ワン、カリウムイオン電池を発売 従来型の形状
米バッテリースタートアップのグループ・ワン(Group 1)が、普及度の高い18650円筒形電池の形を用いたカリウムイオン電池を発売した。PRビジネスワイヤが8月1日に伝えた。
この形のカリウムイオン電池は世界初で、リチウムイオン電池に比べ経済的な上、形が従来型のものであることから、リチウムイオン電池に置き換わる可能性がある。
●韓国SKオン赤字、サムスンSDIは減益 4-6月期
韓国石油元締めのSKイノベーションが8月1日に発表した2024年4〜6月期決算で、電池子会社SKオンの最終損益は4601億ウォンの赤字だった。売上高は1兆5535億ウォン。ハンガリーの新工場の稼働率低下と初期投資費用がかさんだ。
SKイノベーションの4-6月期決算は、最終損益が458億ウォンの赤字だった。赤字額は前年同期の1068億ウォンから縮小した。売上高は0.4%減の18兆7991億ウォンだった。
韓国電池大手では、サムスンSDIが7月30日に発表した2024年4-6月期決算が、営業利益が前年同期比38%減の2802億ウォン、売上高が24%減の4兆4500億ウォンと減収減益だった。米国での車載電池事業の失速が響いた。
プレスリリース:SAMSUNG SD Announces Second Quarter 2024 Earnings Results (samsungsdi.com)
●英調査ロー・モーション、EVウェビナー開催
国際市場調査会社の英ロー・モーション(Rho Motion)が7月31日、英ロンドンでEV市場に関するウェビナー「2024 EV & Battery Market Slowdown: Temporary Setback or Long-Term Trend?」を開催した。
関連記事:補助金終了がEV浸透率に逆風、中国が市場を牽引―英・EV&バッテリーセミナー | MIRU (iru-miru.com)
関連記事:2024年上半期、EV&バッテリー市場動向:新たな課題と展望 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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