広がるリスクオフ 原油・金下落、銅は5か月ぶり安値に 世界マネー逆流、半導体株も痛手
日経平均株価の暴落をはじめとした世界株安で、リスクオフの流れが急速に広がっている。8月5日の米国市場では、原油と金の先物相場がともに下落した。銅相場はとっくに1万ドルの過去最高値水準を割り、3月以来ほぼ5か月ぶりの安値にある。リスク資産である原油はもちろん、これまで高値圏での推移を謳歌してきた金や銅からもマネーが流出している。
■金下落、原油はサウジの収支均衡ライン下回る
過去6か月間のLME銅相場の推移($/ton)
金属市場で昨年から花形を演じていた銅相場は、先行してピークを終えた。LME3か月先物が過去最高値の$1万930/tonを付けたのは5月20日。8月5日には$8757と、前日から4%近く値下がりした。江守ファンドの江守哲氏は「中国景気が悪く銅需要が鈍いはずの状況下で、過去最高値を付けていた方が異常だった」と指摘。価格の適正化が進んだとする。
過去3か月間のNY金相場の推移($/toz)
米金先物相場は8月5日に$2444.4/tozを付けた。8月1日に付けた過去最高値からは1.5%安い水準にある。強気一辺倒だった金にすら調整の動きが出たことになり、世界株安の威力を物語る。
過去1年間のNY原油相場の推移($/barrel)
原油先物相場は$72.94/barrelと、節目の$73を割り込み、2月以来の安値水準にある。市場では「既に産油国サウジアラビアの財政収支が均衡するラインを大きく割り込んでいる」(金融アナリストの川上敦氏)との声があり、今後、産油国が減産などの措置に乗り出す可能性が強まっている。
■マネー、新興株からも逃避 半導体、EV、電池…軒並み安
リスク回避の動きは、商品相場以外でも新興関連株への売りとなって際立つ。
米インテルのリストラ報道が重荷となる半導体関連は、アジアでも急落した。半導体受託生産(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)株と、同大手の韓国のサムスン電子株は8月5日、上場する台湾と韓国の株式市場でそれぞれ制限値幅の下限(ともに10%安)まで下げた。台湾も韓国も株式市場の規模が小さく、それぞれの市場で時価総額が最大である両銘柄の指数寄与度は大きい。特にハイテク銘柄が時価総額の6割程度を占める台湾の加権指数は、8月5日に8%安と日経平均株価指数に劣らず暴落した。
売りが続いた8月5日の米株式市場では、電気自動車(EV)のテスラ株は4%安、半導体のエヌビディア株は6%安だった。中国の新興銘柄は8月6日も安く、電池世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は深圳株式市場で、EVのBYD株は香港市場で、それぞれ続落している。
■金属相場、株逃避資金の受け皿になるか
もっとも、先行きの相場動向については悲観一辺倒というわけでもない。特に金属市場は株などのリスク資産からの逃避マネーの受け皿になる可能性がある。江守氏は銅相場の先行きについて「これまで売り込んできた人の動きに沈静化の兆しが出ている」とし、今後の下値は比較的堅いとみる。
同氏は金相場については「調整はごく短期的。中国やロシアなどが外貨準備の代替にするなど安全資産としての役割は大きく、中長期に強気にみて良いだろう」と話した。
(IR Universe Kure)
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