再エネ電力の「自産自消」を推進、東急グループ

アドバリューとの取り組みのスキーム図
鉄道事業などを展開する東急グループは、再生可能エネルギー電力の内製化に向けた取り組みを強めている。7月末に、再エネ発電所のアセットマネジメントなどを手掛けるアドバリュー(東京都中央区)との協業を発表するなど、今年に入って、太陽光発電所開発などをめぐって、計3つの企業グループとの連携を明らかにした。この枠組みだけで、2026年度までに全国に合計出力60MWを開発する計画で、東急グループの新電力、東急パワーサプライ(東京都世田谷区)とともに、グループ所有の再エネ発電所の開発を加速させる。
東急パワーサプライは16年4月の電力小売り全面自由化を受けて、家庭用電気サービス「東急でんき」の提供を開始。強みを持つ東急線の鉄道沿線の一般家庭世帯を中心に利用が拡大。18年7月からは都市ガス小売りサービスの申し込み受付にも乗り出し、「東急でんき&ガス」の電気、ガスの申し込み件数が24年6月末で累計約66万6000件に達し、首都圏では有数の規模に広がっている。東急でんきは、非化石証書と組み合わせて、実質的に再エネ100%、CO2排出量ゼロを実現している。
19年3月からは国内で初めて世田谷線の全列車運行を再エネ100%で取り組むなど、業界に先駆けた事業も特徴的だ。さらに、東急グループは22年3月に策定した「環境ビジョン2030」で、調達する再エネ電力を「自分たちでつくって、使っていこう」(東急パワーサプライ)という「自産自消」を掲げて、内製化していく方針を示した。こうした方針に基づき、「大規模に継続的に開発していく流れにある」(東急パワーサプライ)再エネ発電事業の一環として、企業グループとの提携を強化している。
開発する地元とのリレーションを重視した連携
東急グループは今年2月に、三菱HCキャピタルグループと再エネ発電での共同開発を発表した。すでに23年6月に、開発基本契約を締結しており、25年度までに合計出力20MWの再エネ発電所の開発を目指している。4月には事業の第一弾となる太陽光発電所の運転が始まり、東急が再エネ発電所開発に関わる初の案件となったという。
具体的な枠組みでは、23年6月に東急と、再エネ発電事業を手掛ける三菱HCキャピタルエナジー(東京都千代田区)が特別目的会社を設立。この会社が、三菱HCキャピタルエナジーを中心に開発した太陽光発電所の保有、管理などを行う。発電した電力は、東急パワーサプライを通じて、東急グループのホテルや商業施設などで使われる仕組み。三菱HCキャピタルは発電所開発や資金面での支援を担っていく。この事業で東急グループでは、25年度までに、22年度比で二酸化炭素(CO2)約1万トンの排出を削減できる見込みだ。
また、今年4月には、出光興産の100%子会社、ソーラーフロンティア(東京都千代田区)との協業開始を公表した。この連携では、26年度までに合計出力30MWの太陽光発電所の開発を目指す。
両社で発電所の機器構成や災害対策要件などの仕様を定め、独自の代理店ネットワークを持つソーラーフロンティアが、提携代理店とともに、仕様に基づいて発電所を共同で開発する。開発された発電所は、東急が設立した特別目的会社が取得。東急パワーサプライを通じて、グループの施設に電力供給される。この取り組みで、26年度までにCO2約1万4000トンの排出が削減できる見込み。
似たスキームで進めるのが、7月に発表されたアドバリューとの協業。アドバリューは発電所の適地調査や設置、運用などを手掛ける企業で、この協業で、26年度までに合計出力10MWの開発を目標とする。東急が設立した特別目的会社が、アドバリューが開発した発電所を購入し、再エネ電力をグループ企業に供給する。27年度には、CO2約4700トンを削減見込みだという。
東急グループが、連携している企業は、いずれも「発電所開発の適地の知識が豊富で、環境アセスメントなど地元とのリレーションの知見が高い」(東急パワーサプライ)という。発電所を開発、運営していくうえで、地元との関係づくりは、近年、重要視されている点でもある。連携企業から支援を受けながら、東急グループは長期的で安定的な再エネ電力の供給体制を構築していく方針。こうした連携を「条件が合えば増やしていきたい」(同)考えだ。
(IRuniverse Kogure)
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