週刊バッテリートピックス 「日本の中古EV電池、潜在8兆円」「ノースボルト事業縮小」など
2024年8月19日~8月25日のバッテリー業界では、リサイクル電池関連のニュースが目立った。ファブリカコミュニケーションズやエンビプロが中古電池事業に積極姿勢を示し、日本総研が8兆円もの潜在市場の試算を出した。一方、新規の電池事業も生産に意欲的な企業が多いものの、ノースボルトが事業を縮小するなど陰りも見えた。
<国内>
●四国電力や農工大、みかん園で微生物燃料電池の実験
四国電力は8月23日、ホームページ上で、有機物を分解する際に電子を放出する「発電菌」の働きを利用した微生物燃料電池の実証試験を、愛媛県のみかん園で実施すると発表した。東京農工大学や同大発のスタートアップ企業と共同で実験し、発電量を測定して農園で使うセンサーなどの電源になり得るか検証する。
東京農工大は最近、イオン伝導性と力学的強度を両立するリチウム2次電池用固体高分子(ポリマー)の電解質材料も開発。次世代電池の開発で研究成果を上げている。
プレスリリース: pr005.pdf (yonden.co.jp)
●ファブリカ、丸紅、東芝の3社が中古EV電池の劣化診断で指標を作成
自動車整備のファブリカコミュニケーションズ(本社:愛知県名古屋市)は8月23日、ホームページ上で、「丸紅傘下の丸紅プラックスおよび株式会社東芝と共同で、中古EVの電池の状態を診断する実証事業を開始した」と発表した。
東芝が保有する電池劣化診断技術を用いる。3社は2022年4月から評価指標の確立に取り組み、最近、試作版を完成していた。
プレスリリース: 中古電気自動車(EV)の電池の状態を診断する実証事業を開始 | ファブリカコミュニケーションズ (fabrica-com.co.jp)
●日本の中古EV電池、潜在市場8兆円 海外流出なら損失
(出所:日本総研ホームページ)
日本総合研究所は8月22日、ホームページ上で、日本におけるEV電池のサーキュラーエコノミー(循環経済)潜在市場についての公開レポートを発表した。
その中で、今後、中古EV電池が輸出されず、そのすべてが国内のサーキュラーエコノミー市場に流通した場合、日本国内におけるEV電池のサーキュラーエコノミーの市場規模は、2030年には約6000億円、2050年には約8兆円に達すると予測した。しかし、現時点では、中古EV電池のほとんどが海外に流出しており、このまま海外流出に歯止めがかからない場合、国内においてEV電池のサーキュラーエコノミーが形成されず、潜在的な市場は失われる可能性が高いと指摘した。
プレスリリース:EV電池の国内サーキュラーエコノミー市場潜在的な市場規模を予測~2050年までに約8兆円規模へ成長する可能性~ (jri.co.jp)
●日本軽金属、フッ素樹脂製ガスケット不使用のLIB用端子部を開発
日本軽金属は8月22日、フッ素樹脂製ガスケットを用いずに仕上げたリチウムイオン電池用の端子部を開発したと発表した。
関連記事:日本軽金属 フッ素樹脂製ガスケットを使用しないリチウムイオン電池用端子部を開発 | MIRU (iru-miru.com)
●エンビプロ、LIBリサイクルの5か年利益は3億円 中期経営計画
エンビプロ・ホールディングスは8月22日、5カ年の中期経営計画(中計2029)を発表した。 その中で、国内市場の成長が予想されるリチウムイオン電池(LIB)リサイクル事業の目標値は売上高が22億円、経常利益が3億円と設定した。
関連記事:エンビプロ中期計画を発表、29年6月期に経常利益47億円 | MIRU (iru-miru.com)
●日本電気硝子、広温度域のNIBをサンプル出荷
特殊ガラスメーカーの日本電気硝子(本社:滋賀県大津市)は8月21日、-40℃~+200℃の広い温度域で動作可能な耐熱仕様の全固体ナトリウムイオン二次電池(NIB)のサンプル出荷を開始したと発表した。宇宙開発や半導体分野での需要を見込む。
関連記事:日本電気硝子、耐熱使用の全固体NIBのサンプル出荷開始 | MIRU (iru-miru.com)
●パナ、スバルとマツダ向けにEV電池供給へ 生産拠点整備を最終調整、報道
パナソニックホールディングス(HD)がSUBARU(スバル)とマツダ向けにEV用電池の国内生産拠点の整備で最終調整に入ったことが分かった。8月20日の読売新聞や日本経済新聞などの各紙が伝えた。パナソニックエナジーの生産拠点を新たに増設する。
パナは現在、事実上米テスラ向けのみにEV電池を供給しており、スバルやマツダ向けが実現すれば供給先の多様化が進むことになる。一方、スバルやマツダにとっては高品質のEV電池の安定供給につながる。
●パワーエックス、物流施設に大型蓄電池を納入
パワーエックスは8月20日、自社ホームページ上で、物流不動産開発のプロロジス(本社:東京都千代田区)が埼玉県で運営するマルチテナント型物流施設に、定置用蓄電池「Mega Power」1台を納入した、と発表した。
関連記事:パワーエックス、物流倉庫に定置用蓄電池導入しエネルギー効率向上 | MIRU (iru-miru.com)
<海外>
●韓国アリセル火災、18人立件 相次ぐLIB火災に対策急ぐ
韓国警察当局は8月23日、6月に電池メーカー「アリセル」のリチウム電池工場で起きた火災を巡り、工場の代表ら18人を業務上過失致死などで立件したと発表した。火災の原因は、同社が自社製品の危険な品質不良の兆候に対処することなく、納期に間に合わせるために生産を急いだことだったとも指摘した。この火災では23人が死亡した。
韓国はバッテリー生産大国だが、近年はリチウム電池火災が続発している。8月1人には仁川の集合住宅の地下駐車場でEV火元の大規模な火災が発生した。
これを受け、韓国政府は8月13日、同国内で営業する自動車メーカーに対し、自社の電気自動EVに搭載したバッテリーに関する情報を開示するよう要求した。
●スウェーデン電池のノースボルト、米国での技術開発を打ち切り 北米に集約へ
スウェーデンの電池大手ノースボルトは8月20日、自社ホームページ上で、米西部カリフォルニア州でのリチウム金属電池の技術開発を打ち切ると発表した。技術開発拠点をスウェーデン中部のヴェステロースに集約する。EV販売の世界的な失速などを受け、事業戦略を見直す。
プレスリリース(英語):Northvolt to advance lithium-metal battery technology from Northvolt Labs
同日付のロイター通信によると、ノースボルトは2021年にリチウム金属電池の技術開発を手がける米企業を買収したが、今回の決定に伴い買収企業が所有していた工場を閉鎖する。ノースボルトは欧州の電池企業ではリーダー的な存在だが、近年は生産の遅れや納品トラブルなどの問題も抱えていた。
●第24回先進自動車用バッテリー会議が12害開催へ 米ラスベガス
先進自動車の大型会議である「第24回先進自動車用バッテリー会議 (AABC) 2024-(24th Annual Advanced Automotive Battery Conference (AABC) 2024)」が12月9-12日、米ネバダ州ラスベガスのマンダレイベイ・リゾート・アンド・カジノで開催される。自動車の電子化について多方面から分析・検証する会議で、世界のバッテリー大手からも幹部らが講演する。
(IR Universe Kure)
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