週刊バッテリートピックス　「政府が蓄電池に3500億円支援」「VW工場閉鎖」など

2024/09/08 14:37

　2024年9月2日~9月8日のバッテリー業界では、経済産業省による蓄電池への大規模支援方針が大きな話題だった。一方、電気自動車(EV)をめぐる動向は様々で、シャープが新規参入を発表し、ドイツのBMWが水素燃料電池車（FCV）の量産方針を示した一方、独フォルクスワーゲン(VW)は同国内の工場閉鎖を示唆して社会問題化している。

<国内>

●経産省、蓄電池に最大3500億円支援　パナや日産、トヨタなどに

　斎藤健経済産業大臣は9月6日の定例記者会見で、「蓄電池及びその部素材や製造装置に関する設備投資や技術開発の支援を行う」と発表した。同省が認定した蓄電池の供給確保計画12件に対し、政府として最大3500億円を助成する。

　対象には、パナソニックエナジーがスバル及びマツダとそれぞれ協業する計画のほか、日産及びトヨタグループの計画が含まれる。投資計画の規模は合計1兆円規模とされる。

プレスリリース:齋藤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要（METI/経済産業省）

　これを受け、パナエナジーとSUBARUは9月6日、群馬県大泉町に円筒形リチウムイオン電池工場を新設すると発表した。パナはマツダとは、山口県にEV向け電池を製造する工場を新設する。

　日産は福岡県内の電池生産施設に1533億円を投資。トヨタも福岡県内で電池工場を建設し、全車種をEV化する方針の高級車ブランド「レクサス」の専用工場であるトヨタ自動車九州（福岡県宮若市）に供給する。

●シャープEV参入　堺工場の一部は積水化学が取得か

　シャープは9月6日、自社ホームページ上で、EVコンセプトモデル「LDK+」（エルディーケープラス）を、9月17-18日に東京国際フォーラム（東京都千代田区）で開催する同社の技術展示イベント「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”」で公開する」と発表した。同社として初のEV参入で、親会社である台湾の鴻海科技集團※1（Foxconn）と連携して事業展開する。

プレスリリース:EV（電気自動車）のコンセプトモデル「LDK+」を「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”」で公開｜ニュースリリース：シャープ (jp.sharp)

　シャープを巡っては、読売新聞などの複数の一般紙が9月4日、「積水化学工業がシャープ堺工場（大阪府堺市）の一部取得を検討していることが同日わかった」と伝えていた。工場内の本社棟と2010年に稼働したものの2019年11月に稼働を停止した旧太陽電池工場が対象。積水化学が2025年の事業化を目指す次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の生産拠点にするとみられる。

●LFPごみ分別実験が活発化　IHI検査計測や環境省

　IHI傘下のIHI検査計測（本社：横浜市）は9月3日、自社ホームページ上で、「9月9日-12日に、東京都町田市バイオエネルギーセンターで燃やせないごみの検出に関する実証実験を実施する」と発表した。株式会社PFU（所在地：石川県かほく市）と共同開発中のリチウムイオン電池等の検知システムの実用化に向けた実験で、町田市の支援も受ける。

　ごみ処理中のリチウムイオン電池火災に関しては社会の関心が高まっており、環境省も対策に乗り出す。

●亜鉛電池の実験進む　北大など

(出所:北海道大学の発表資料)

　北海道大学と東北大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究グループは、「亜鉛イオン電池」用の正極材料として「スピネル型亜鉛マンガン複酸化物（ZnMn₂O₄）」ナノ粒子のグラフェン複合体を開発した。北海道大学などが8月20日付でホームページ上で発表した。これまでの材料では500Wh/kg程度にとどまっていた正極活物質（ZnMn₂O₄）の重量当たりのエネルギー密度について、現在主流の2次電池であるリチウムイオン電池に匹敵する600Wh/kgを実現した。

　亜鉛を使った次世代電池の開発は各方面で進んでいる。エナジーウィズ（本社:東京都千代田区）は8月下旬、ニッケル亜鉛電池の提案を始めた。

<海外>

●独自動車が明暗　VW工場閉鎖、BMWはFCV量産へ

　ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は9月7日、自社ホームページ上で、ドイツ国内での工場閉鎖と閉鎖費用の計上による業績への影響見通しを発表した。

プレスリリース: Support for information and consultation process at Brussels site resolved, adjustment of annual forecast as a result and other unplanned expenses in the Group | Volkswagen Group (volkswagen-group.com)

　VWが本拠地ドイツでの工場閉鎖の可能性についてルクセンブルグで説明会を開いたのは9月4日。人員削減も示唆しただけに、労働組合側は「破産宣告に等しい」とストライキをちらつかせて徹底抗戦の姿勢を打ち出している。独工場を閉鎖すればVWの1937年の創業以来の出来事で、ドイツ国内で社会問題化している。

　一方、独同業のＢＭＷは9月５日、自社ホームページ上で、水素で走る燃料電池車（ＦＣＶ）の乗用車を2028年から量産すると発表した。

Hydrogen Pioneers take collaboration to the next level (bmwgroup.com)

●韓国、車載電池情報の開示を義務化　相次ぐ火災発生で

　韓国政府は9月６日に開いた国政懸案関係閣僚会議で、EVを国内で販売するメーカーに対しバッテリーの主な情報の公開を義務付ける内容を盛り込んだEV火災安全管理対策を策定、発表した。韓国聯合ニュース日本語版が同日伝えた。これまで勧告制だった電池情報の公開を義務化し、電池の認証制度や情報公開を進めるほか、地下駐車場の消火設備の普及に取り組む。

　韓国ではリチウムイオン電池由来の火災による大規模な被害が相次いでいる。8月には仁川の地下自動車駐車場で、6月には電池メーカー「アリセル」の工場で死傷者が発生する大規模火災が起きた。6月の工場火災を巡っては、8月下旬に刑事事件として立件され、同月末にはトップが逮捕された。

●カナダ、鉱物リサイクル2社に支援金　車載電池などから回収

　カナダ現地紙によると、同国オンタリオ州キングストン市は9月4日、車載電となどから材料を回収する同国の鉱物リサイクル企業であるサイクリック・マテリアルズ(Cyclic Materialsと、グリーン・グラファイト・テクノロジーズインク(Green Graphite Technologies、GGT)の2社に、合計840万ドル(約12億円)の支援を発表した。

●中国の長安汽車が欧州進出　香港紙報道

　香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの9月4日の報道によると、中国国有自動車メーカーの重慶長安汽車が9月3日、正式にヨーロッパ市場への進出を公表した。長安汽車は中国政府直轄の中国兵器装備集団の系列企業で、中国の業界中心企業を指す「陣営企業」4社の１つ。かつてはスズキと、現在もマツダと協業する。

●韓国ポスコ、豪黒鉛企業に出資

　二次電池向け黒鉛(グラファイト)を生産するオーストラリアの資源大手ブラックロック・マイニング(black Rock mining)は9月3日、自社ホームページ上で、「韓国複合企業のポスコ・グループが4000万ドル(約57億円)を投じ、同社の発行済み株式の19.99％を取得する」と発表した。

●2024年世界パワー・バッテリー会議が開催　中国四川省

四川省宜賓市

(出所:宜賓市政府ホームページ)

　2024年世界パワー・バッテリー会議(2024 World Power Battery Conference）が9月1日-2日、中国南西部の四川省宜賓市で開催された。宜賓市政府や中国国営の新華社通信などが伝えた。中国内外から180社余りが出展し、約400人のゲストが参加した。同市では2019年から同会議を開催している。

(IR Universe Kure)

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