週刊バッテリートピックス 「経産省が産業力強化法を改正」「カナダ、中国EV追加関税」など
2024年8月26日~9月1日のバッテリー業界では、政府筋の動向が目立った。経済産業省は産業力強化法を9月2日から一部改正する。財政予算案へのエネルギー関連の要求額も伝わった。一方、海外ではカナダが中国産の電気自動車(EV)への追加関税を発表。米国では車載電池世界最大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)への制裁要請も持ち上がった。
<国内>
●政府、EVや太陽電池支援へ 産業力強化、財政予算案にも盛り込む
経済産業省は8月30日、次世代産業の育成に向け産業力強化法の一部を改正すると公布した。ホームページ上で8月27日に発表していた。9月2日から施行する。
同省は2025年財政予算案で電池産業を含む次世代エネルギー関連への財政要求を盛り込むことで調整中とも伝わる。具体的には、ペロブスカイト太陽電池や洋上風力発電などに2555億円を充てる。EVやPHVなどの導入支援として1444億円も求める方針とされ、次年度以降に支出できる「国庫債務負担行為」を含めると、次世代エネルギー関連の財政予算要求額は総額1兆6000億円規模に達するという。
政府は中古EV産業の支援にも乗り出すとも伝わる。8月29日の読売新聞や日本経済新聞は、中古電池の性能を保証するサービスなどを導入して、EVの普及を図るとともに中古EVを国内で循環させ、経済安全保障を強化する考えだと伝えた。具体的にはトヨタやSOMPO系の中古EV電池評価を支援するという。中古EV電池評価は、自動車整備のファブリカコミュニケーションズや丸紅、東芝なども手掛ける。
関連記事: 週刊バッテリートピックス 「日本の中古EV電池、潜在8兆円」「ノースボルト事業縮小」など | MIRU (iru-miru.com)
●日本ガイシ、ハンガリー国営からNAS電池受注
日本ガイシは8月30日、自社ホームページ上で、「ハンガリー国営のエネルギー会社MVMグループの子会社MVM Balance Zrt.から、電力貯蔵用NAS電池を受注した」と発表した。電力系統安定化用途の系統用蓄電池の実証に使用する。
日本ガイシは2023年夏からハンガリーの取引先との事業を行い、主にNAS電池の提供で関係を続けてきた。NAS電池はナトリウムと硫黄の化学反応により充放電する大容量電池。
プレスリリース:ハンガリー国営エネルギー会社の系統用蓄電池実証向けにNAS電池を受注 | ニュース | 日本ガイシ株式会社 (ngk.co.jp)
●横国大や名工大、リチウムマンガン酸化物正極材料を開発
横浜国立大学(横国大)、名古屋工業大学(名工大)、島根大学、科学技術振興機構(JST)の4者は8月27日、「ナノ構造を高度に制御した「リチウムマンガン酸化物正極材料を開発した」と発表した。既存のニッケル系層状材料に匹敵するエネルギー密度をマンガン系材料で達成可能であることを立証した。
プレスリリース(名工大):実用的な高エネルギー密度のコバルト・ニッケルフリー電池材料を開発―ナノ構造を高度に制御したリチウムマンガン酸化物材料の合成に成功―|国立大学法人名古屋工業大学 (nitech.ac.jp)
●トヨタ、VWとFCVで全面提携か 日経報道
日本経済新聞電子版は8月27日、トヨタ自動車と独BMWが、燃料料電池車(FCV)で全面提携すると報じた。トヨタが水素タンクなどの基幹部品を供給し、BMWが数年内にFCVの量産車を発売する計画で、両社で欧州の水素充塡インフラも整備するという。
●パナ、大阪万博で太陽電池やバイオライト展示へ パナエナジーは米ライセンス取得
パナソニックホールディングス(HD)は8月26日、自社ホームページ上で、2025年大阪・関西万博に出展するパビリオンの一部の概要を公表した。「大地」と題された展示エリアで、ペロブスカイト太陽電池のほか、微生物に酵素を送り込んで発光させるバイオライトなど研究開発中の技術を紹介する。
パナソニックを巡っては、米技術開発企業のCAMX Power LLC(本社:米マサチューセッツ州)が8月21日、「パナ傘下のパナソニック・エナジーがLIB用カソード活性材料の最新GEMXプラットフォームのライセンスを取得した」と発表していた。GEMXはCAMXが開発した、コバルト使用を抑えたEVバッテリー生産の特許技術。
●エナジーウィズ、ニッケル亜鉛電池を提案 報道
エナジーウィズ(本社:東京都千代田区)が、鉛蓄電池の約4倍の寿命性能を持つニッケル亜鉛電池の提案を始めた。日刊工業新聞が8月26日に伝えた。既に工場内の無人搬送車(AGV)用途として顧客に提供し、電池性能試験を開始したという。正式発売は2027年の模様だ。
●東京ガス、蓄電池サービスの申し込み受付開始
東京ガスは8月26日、電力供給の安定化と再生可能エネルギーの普及拡大に貢献する「蓄電池制御サービス」の申し込み受付を始めたと発表した。
関連記事:家庭用蓄電池の充放電制御サービスの対象拡大、東京ガス | MIRU (iru-miru.com)
<海外>
●米議員、中国CATLの制裁リスト入り要請 ロイター報道
米連邦議会の共和党議員2名は8月28日日、中国車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)を中国軍と協力しているとされる企業のリストに加えるよう国防総省に要請した。ロイター通信が同日伝えた。
要請したのは上院のマルコ・ルビオ議員と下院のジョン・ムールナー議員。CATLが中国共産党やその軍部と深いつながりがあるとし「米国の国家安全保障を危険にさらす」と指摘した。CATL側は「全く根拠がない」と反発しているという。
●英ローモーション、EV動向ウェビナー開催
英調査会社のローモーションは8月27日、世界のEV市場動向についてウェビナーを開催した。
関連記事:タイが中国の電気自動車製造拠点に成長、西側市場への拡大に課題 | MIRU (iru-miru.com)
●カナダ、中国EVに100%追加関税
カナダ政府は8月26日、ホームページ上で、中国製品への輸入関税引き上げを発表した。中国製の電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)に100%、鉄鋼とアルミニウムには25%の追加関税をそれぞれ課す。EV向けは10月1日付で発効する。
関連記事:カナダ、中国製品に追加の輸入関税 EVは10月1日から100%、鉄鋼・アルミは25% | MIRU (iru-miru.com)
●中国科技大、「火星大気電池」提案
火星
(出所:Wikpedia)
中国科学技術大学は8月26日、ホームページ上で、「火星の大気を直接燃料とする火星大気電池の研究で大きな進展があった」と発表した。
火星大気電池は火星の大気組成(火星の大気組成をシミュレーションしたもの)を電池の反応燃料物質とし、高エネルギー密度と長期サイクル性能を実現できるとするもの。現在はリチウム金属と二酸化炭素を反応物とするリチウム二酸化炭素電池が火星探査に使用されているが、火星の複数のガスと激しい気温差に対応しきれていないという。
プレスリリース:中国科大在火星气电池研究中取得重要进展-中国科大新闻网 (ustc.edu.cn)
●トヨタ、中国合弁の燃料電池工場が北京で操業開始
トヨタ自動車の中国現地法人は8月21日、ホームページ上で、「合弁会社の華豊燃料電池の工場が北京経済技術開発区で操業を開始した」と発表した。
華豊燃料電池は、トヨタと燃料電池バスを手がける北京億華通科技(本社:北京市)が、2021年に折半出資で設立した。新工場の総面積は約11万平方メートル。
プレスリリース:丰田燃料电池研发与生产专用工厂在北京投产 (toyota.com.cn)
(IR Universe Kure)
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