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元鉄鋼マンが第10回バッテリーサミットに参加して(1) LIBのリサイクルは大変だ!

 9月12日に東京学士会館で開かれたバッテリーサミットには多くの人が出席しました。このシンポジウムは、学問研究の成果だけを発表・議論する学会とは違い、事業の可能性と魅力だけを語るビジネスセミナーとも違います。敢えて言えばフュージョンシンポジウムです。参加者も、学者・研究者、経営者、起業家、商社マン(商社ウーマン)、学生、さらには私のような門外漢と様々です。会場では中身の濃い講演と活発な質疑応答があり、それに続く懇親会も含め、盛況の内に会は終了しました。以下に私の感想を申し述べます。

 

 

  1. 福岡県グリーンEVバッテリー資源循環協議会の発足 -地方から世界へ-

福岡県リサイクル総合事業化センター長東北大学名誉教授 中村崇氏

 あくまで福岡県のバッテリーリサイクル事業の紹介ですが、このシンポジウム全体を概観するKey Note Speech(基調講演)とも言うべき講演でした。リサイクル事業の推進は研究室の仕事と現場の仕事が車の両輪です。中村氏は、その両方でリーダーシップを発揮する稀有な人物です。今回の講演では事業の現在の状況と今後の展望・・というより日本の課題についての紹介がありました。

 

 福岡県に大手自動車メーカーがバッテリー工場を建設したこともあり、同地でのEVやHVのバッテリーリサイクル事業が本格化しています。しかし道半ばであり、事業がものになるのはこれからです。もっともこれは日本だけはありません。世界を見渡してもLiBの循環利用の事業化が実現している国はありません。

 

 EVのリサイクルが本格化するのは、EV普及が始まってから、相当のタイムラグを経た後です。各国ともまだその段階に至っていない訳ですが、特に日本の場合、EVの普及自体がほとんど進んでいません。現状では新車販売の構成が、HV54.0%、ガソリン車36.8%、ディーゼル5.5%、PHEV2.0%、EV1.7%とういう状況では、EVのLiBのリサイクルは現実的な問題ではありません。日本で将来EVが主流になるかも議論のあるところです。しかも中村教授によれば、EVの半分くらいは安価だが低性能のリン酸鉄型になるとの予想で、回収対象となるLiやCoの量はどれくらいあるのか・・と不安になります。

 

 しかし、このままでは回収されたブラックマスやEV中古車自体が外国へ“駄々洩れ”になってしまい、経済安全保障の観点からもゆゆしき問題となります。我々は危機感を持つべきです。

 

 問題は幾つかあります。リサイクル工程で中古のLiBの残存性能を正当に評価するシステムも未確立ですし、何より廃車からの「取り外し・回収」を誰もやりたがらないという問題があります。これはある意味当然です。一番、泥臭くてしんどい作業なのなのですから・・・。 そして最も懸念されるのはバッテリーそのものの輸出、バッテリーEVの中古車としての輸出、ブラックマスの輸出、と国内に資源が残らないことだといいます。

 

 中村教授によれば「資源循環は七並べ」とのこと。言い得て妙ですが、札が並んでそろっていても、7につながる札が無ければどうしようもないのです。どうやって一気通貫(こちらは麻雀用語ですが)のシステムを確立するか・・。政府主導になるのか、この会場に集まっている各企業が意気に感じて取り組むのか、気になるところです。海外を見渡した場合、IRAで中国製品をブロックする米国のRedWood社などの動きが気になります。多くのプロジェクトは各国間での競争になります。

 

 当然、LiBリサイクルシステムの確立・事業化も競争であり、日本が遅れをとる訳にはいきません。まさに“今ここにある危機”に多くの人が気づく必要があります。これが中村教授の最も強調したい点だったのでは?と私は推測します。

 

(以下次号)

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第10回バッテリーサミット 強力に盛り上がる!

 

 

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久世寿(Que sais-je)

茨城県在住で60代後半。昭和を懐かしむ世代。大学と大学院では振動工学と人間工学、製鉄所時代は鉄鋼の凝固、引退後は再び大学院で和漢比較文学研究を学び、いまなお勉強中の未熟者です。約20年間を製鉄所で過ごしましたが、その間とその後、米国、英国、中国でも暮らしました。その頃の思い出や雑学を元に書いております。

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