週刊バッテリートピックス 「第10回バッテリーサミット」「カナダが中国産に追加関税検討」など
2024年9月9日~9月15日のバッテリー業界では、秋のイベントシーズンを迎え国際会議や展示会の話題が多かった。IR Universeも9月12日に「第10回バッテリーサミット」を開催し、盛況のうちに終えた。リサイクルも含めて電気自動車(EV)関連は相変わらずにぎやかだったが、カナダが中国産電池への追加関税検討を発表するなど暗い影も漂う。
<国内>
●マクセル、医療用一次電池を増産へ
マクセルは9月13日、自社ホームページ上で、小野事業所(兵庫県小野市)の生産設備の増強と建屋の増築に約50億円を投資する」と発表した。
今後、需要拡大が見込まれる医療機器向け一次電池の増産のため。2027年度中をめどに医療機器向け一次電池の生産能力を2024年7月時点の約2倍に増強する。
プレスリリース: マクセル|小野事業所に新ラインを構築し、一次電池の生産能力を増強 医療機器向け電池の需要拡大に伴い、約50億円を投資 (eir-parts.net)
●「第10回バッテリーサミット」盛況で開催
IR Universeは9月12日、学士会館(東京都千代田区)で「第10回バッテリーサミット」を開催した。
関連記事:第10回BatterySummit in Tokyo(20240912)アーカイブ | MIRU (iru-miru.com)
●ペロブスカイト太陽電池、官民で普及へ 政府骨子案
ペロブスカイト太陽電池について、政府が今秋にもまとめる普及促進戦略の骨子案が判明した。読売新聞などが9月12日までに伝えた。
骨小案では、「官民で連携して量産技術の確立、生産体制整備、需要創出を三位一体で進める」としたうえで、「事業者の生産体制構築を促す観点から、早期に国内市場の立ち上げを進める」と明記。補助制度で太陽光パネルとの価格差を埋め、国内市場を育成することを目指す。ペロブスカイト太陽電池は日本発の技術で、政府は次世代の太陽光発電の切り札と位置づける。
●日本触媒、LIB用電解質の生産強化へ
日本触媒(本社:大阪市中央区)は9月11日、自社ホームページ上で、「リチウ ムイオン電池(LIB)用の電解質の生産を強化する」と発表した。
関連記事:日本触媒 リチウムイオン電池用電解質 LiFSI の国内供給体制を強化 | MIRU (iru-miru.com)
●TIC、第65回総会を開催
タンタル、ニオブの国際的な業界団体であるTICは、9月8-10日、第65回総会を東京都港区のお台場で開催した。
関連記事:TIC第65回総会アーカイブ | MIRU (iru-miru.com)
●ヤマハ発動機、工作機械で新製品 EV電池の生産需要に対応
ヤマハ発動機は9月10日、工作機械のスカラロボット「YK-XG」の新製品を10月1日に発売すると発表した。EV向け車載電池の製造増加に対応した工作機械で、9月10-13日に東京ビックサイトで開かれた「国際物流総合展2024」で展示した。
●三菱ふそうトラック・バス、川崎に使用済みEV電池の材料回収の実証プラント
三菱ふそうトラック・バス(本社 : 神奈川県川崎市)は9月10日、自社ホームページ上で、「シンガポールのスタートアップTrue 2 Materials Pte, Ltd(本社 : シンガポール市)と共同で、EVの使用済みバッテリーの材料回収を行う実証プラントを、川崎製作所構内に設置することを決定した」と発表した。
プラントでは、2025年初頭にも、使用済みEVバッテリーをバッテリーセルメーカーがそのまま使用できる正負極材および電解質として回収する実証試験を実施する。
プレスリリース:EVバッテリー「材料回収」の実証設備建設を決定 | 三菱ふそうトラック・バス株式会社 (mitsubishi-fuso.com)
●住友金属鉱山、LIBリサイクルでグリーンボンド
住友金属鉱山は9月9日、自社ホームページ上で、「LIBリサイクルに向けた設備投資に充当することを目的にグリーンボンドを発行する」と発表した。
住友金属鉱山、LIBリサイクルの設備投資へグリーンボンド発行 | MIRU (iru-miru.com)
<海外>
●「ドイツ国際モーターショー(IAA)トランスポーテーション2024」開催へ 17-22日
世界最大級の自動車展示会の1つである「ドイツ国際モーターショー(IAA)トランスポーテーション2024」が9月17-22日、ドイツのハノーファーで開催される。今回は商用車に限定した展示会で、トヨタをはじめとする日本勢のほか、ルノーやオペルが水素燃料電池車などの新コンセプトカーを紹介する予定だ。
IAAホームページ: IAA TRANSPORTATION 2024 in Hannover | IAA TRANSPORTATION (iaa-transportation.com)
●GM、CATL電池の米国内での組み立て検討か 外電報道
米ゼネラル・モーターズ(GM)が、車載電池世界最大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)製電池の購入を検討している模様だ。ロイター通信が9月12日、消息筋の話として伝えた。
購入を検討しているのは米南部の工場で、日本のTDKが出資する。組み立て前の電池部品をCATLから購入し、工場内で組み立てる。米インフレ抑制法(IRA)による輸入関税の回避につながる。競合の米フォード・モーターは既にミシガン州の工場でのCATL製電池の組み立てを計画している。ただ、これには米議会から懸念が上がっている。
●第29回国際バッテリーリサイクル会議が開催 スイス
第29回国際バッテリーリサイクル会議(ICBR)が9月10-12日、スイスのバーゼルで開催された。
関連記事:国際バッテリーリサイクリング会議(ICBR)、スイスバーゼルで開幕 | MIRU (iru-miru.com)
関連記事:EU電池リサイクルの競争力に必要なのは規制か投資か? | MIRU (iru-miru.com)
関連記事:バーゼル国際バッテリーリサイクル会議(ICBR2024年)最終日 | MIRU (iru-miru.com)
●カナダ、中国産の電池や鉱物への追加関税検討
カナダ政府は9月10日、ホームページ上で、「中国から輸入する鉱物や半導体、太陽光製品、電池などへの追加課税を検討している」と発表した。
カナダは8月下旬に中国製EVやハイブリッド車(HV)に100%、鉄鋼とアルミニウムには25%の追加関税をそれぞれ課すと発表したばかり。中国側はこの追加関税を巡り、世界貿易機関(WTO)に向け、WTOルール違反として紛争解決の手続きに基づく2国間協議を要請している。
●独電池リサイクルのcylib、工場建設開始
ドイツのバッテリーリサイクルのスタートアップcylibは9月9日、自社ホームページ上で、「独ノルトライン=ヴェストファーレン州で欧州初のバッテリーリサイクル工場の建設を開始した」と発表した。年間3万トンの使用済みバッテリーの処理能力を有する工場にする見通しで、2026年の操業開始を目指す。
(IR Universe Kure)
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