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インドネシア、新政権発足 8%成長目指す、鉱業では銅やボーキサイト、錫に注力

 インドネシアで10月20日、ブラボウォ元国防相が大統領に就任し、10年ぶりに新政権が発足した。任期は5年間。1期目に年間8%の経済成長を実現し、2045年までの高所得国入りを目指す。優先産業に位置付ける5産業のうち、鉱業ではニッケルのほかに銅やボーキサイト、錫などに力を注ぐ。

 

ブラボウォ新大統領

(出所:インドネシア政府ホームページ)

 

■5産業に注力、半導体や航空宇宙にも食指

 ブラボウォ氏は任宣誓後の演説で、汚職の根絶と食料やエネルギーの自給体制強化を訴えた。さらに同日、内閣の陣容も発表。大臣と副大臣は100名超で、ムルヤニ財務相やバフリル・ラハダリア・エネルギー・鉱物資源相らが続投となったのをはじめ、多くがジョコ・ウィドド前政権からの再任となった。ジョコ氏の長男のギブラン氏も副大統領に就任した。

 一方、インドネシア現地メディアのアンタラ(ANTARA)は10月16日、「同国の国家開発計画庁(バペナス、Bappenas)高官が2025-2029年のプラボウォ政権1期目の優先産業として、5産業に注力すると明かした」と伝えた。5産業は天然資源、サービス、熟練労働集約型産業、基礎産業、技術集約型イノベーション。このうち、天然資源には農業、鉱業、海洋資源が含まれる。
 鉱業では、ニッケルで進める加工業への転換を、銅やボーキサイト、錫にも広げる。また、技術集約型のイノベーション産業では、化粧品・医薬品、半導体、機械・装置、バッテリーベースの電気自動車(EV)、航空宇宙など、先進的分野への進出も目指す。
 

■銅や錫の加工業転換はうまくいくか

 内閣の人事の多くを前政権から引き継いだことから、インドネシア内外のアナリストの間では、新政権は基本的な経済政策を前政権を引き継ぐとの見方が多い。特に単純な資源輸出から加工品生産・輸出を手掛ける製造立国への転換、いわゆる「川下化」方針は、引き継がれる方向だ。

 ただ、鉱業分野において、この方針がすべてでうまくいくかは未知数だ。みずほリサーチ&テクノロジーズは10月16日付の公開レポートで、鉱業分野における川下化方針について「世界的にインドネシアの占有率が高いニッケルでは一定の成果が得られているものの、ボーキサイトや銅などのニッケル以外の鉱石についてはうまくいかない可能性がある。ボーキサイトや銅などはインドネシア以外の国でも調達可能であるため、むしろインドネシア国内での加工義務を嫌って投資が減少するリスクがあろう」と指摘した。

 

■45年までの高所得国入り目指す

 インドネシアは2024年4-6月期に実質総生産(GDP)5.05%の成長を達成した。バペナスは今後について「インドネシアの黄金の20年」として、2029年までの8%成長、そして2024年までの高所得国入りを目指す目標を掲げる。

 

バペナスが掲げる「2045年までの黄金の20年」イメージ

(出所:バペナスホームページ)

 

 ただ、これについては現在のままでは難しいとの見方は多い。理由としては、人口ボーナスが収束しつつあり労働・消費人口が減少に向かうことや、海外からの直接投資の縮小傾向などが挙げられる。前出のみずほリサーチ&テクノロジーズのレポートでは、「労働投入、資本投入、生産性の3視点から分析すると、2045年の高所得国入りを実現する成長率レンジ(年率4.6%-6.0%)を実現できるかは微妙だ」と指摘した。

 新政権の課題についても、100人にもわたる閣僚に象徴されるように、行政機構が拡大していることが懸念材料として指摘されている。硬直化した官僚システムと行政費用の拡大はイノベーションにとって弊害となるためだ。

 さらに、群島国という地理的条件から、国家として1つにまとまりにくいというネックもある。アンカラによると、前出のバペナス高官は「島々は統合された経済圏にならなければなりません。そうすれば、インドネシアは良好で大きな経済力を持つことができます」と話したという。島々の経済的一体化を進めるために、空運を中心とした物流システムの整備も急がれる。
 

 インドネシアは今後、ボルネオ島ヌサンタラへの首都移転も計画する。新政権のかじ取りに注目が集まる。

 

 

(IR Universe Kure)

 

 

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