米国、パラジウムとチタンの対ロ制裁追加をG7に要請か 外電報道
米国がウクライナ侵攻に伴う対ロシア制裁としての金属輸入制限について、パラジウムとチタンを新たに加えることを検討するよう、先進7か国(G7)に要請した模様だ。米ブルームバーグ通信が10月24日に消息筋の話として伝えた。ロシアはパラジウム生産で世界の4割を占め、チタンは航空機向け金属チタンでロシア産のシェアが大きい。
10月22日に米ワシントンで開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議で要請があったと伝わった。米国はロシアがパラジウムやチタンを、ウクライナ侵攻で軍事利用していると懸念したという。
G7は既に2022年から金などのロシア産金属の一部について輸入を禁止。2024年4月には英米がアルミ、銅、ニッケルのロシア産製品の取引所での取り扱いを禁じた。米国は既にロシア産チタンの輸入を禁じており、他国にも追随を促した格好だ。
■パラジウム、ロシア産が世界の4割
世界のパラジウム生産国
(出所:JOGMEC)
パラジウムはロシアの生産量が多いため、かねて制裁対象として度々取りざたされてきた。侵攻直後の2022年3月にNY市場での国際価格が$2981.9/tozと直近高値を付けた。2023年12月にも制裁対象になるとの観測から急騰する場面があった。10月24日価格は$1064.7。2024年に入ってからは$1000を挟む水準で落ち着いた値動きだった。
過去3年間のパラジウム価格の推移($/toz)
パラジウムの主な用途は自動車用触媒で、全体の8割を占める。ほかにコンピューターチップや自動車の触媒コンバーターにも使われる。ロシアではニッケル大手のノリニッケルが、パラジウムでも同国最大手だ。
■チタン、ロシア側も輸出禁止を検討
一方、チタンを巡ってはロシア側も輸出制限をかけることを検討している。ロシアのプーチン大統領が9月11日、閣僚とのオンライン会議で、西側諸国による経済制裁への対抗処置として、ウラン、チタン、ニッケルの輸出制限を検討するよう指示したと伝わった。
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チタンを取り扱う日本の中堅商社の担当者からは「近年はロシア産離れが進んでおり、万が一、制裁対象になったとしても大きな影響はないのではないか」との声が聞かれる。ただ、欧州では仏エアバスなどの航空機メーカーはなおロシア産チタンに依存しているとされ、貿易が制限されれば影響が出るとの見方もある。
■数度にわたり検討も双方影響を考慮し実現せず
パラジウムもチタンも、西側諸国もロシアも武器化として制裁対象入りを検討してきた資源だ。それが今まで実現してこなかったのは、双方ともに制限しては困る理由があるからだろう。戦費に困るロシアはもちろん、ロシア産原油の制限によるインフレに苦しんだ欧州としても、追加の制限はできれば避けたいのが本音だ。
ブルームバーグは「G7のうちでも、フランスやドイツ、イタリアなどは制裁に踏み切るとすれば欧州連合(EU)参加国の承諾も取り付けなければならない」と指摘した。
(IR Universe Kure)
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