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ウラン巡り大国の思惑が交錯 「輸出しない」「輸入しない」ロシアと米国、中国が混戦

 ウランを巡る大国間の思惑が交錯している。ロシア産ウランを巡り、米国が今週に入り中国がロシアの制裁逃れを助けていると非難し、中国が反駁する場面があった。そのロシアのプーチン大統領は9月11日にウランやニッケルなどの輸出制限検討を閣僚に命じた。原発見直しを受けてウランの人気が高まる中、各国が火花を散らしている。

 

■禁輸対象のロシア産濃縮ウラン、中国が経口輸出か

 ロイター通信は9月18日、「中国政府が、米国によるロシア産ウランの経口輸出調査に反駁した」と伝えた。中国外務省が、「中国は常に、いかなる違法な一方的制裁に対しても反対してきた」などと改めて主張したという。

 ロイターはこの前日の9月17日に、「米エネルギー省などが中国によるロシア産ウランの輸入を追跡している」と報道。米国は、中国がロシア産ウランを輸入して国内で使用した上で、濃縮ウランとして米国に輸出していると疑っているという。米国は5月にロシアのウクライナ侵攻に伴う対ロ制裁措置の1つとして、ロシア産の低濃縮ウランの輸入を禁止していた。

 

■ロシア「輸出しない」VS米国「輸入しない」???

 そのロシアのプーチン大統領は9月11日、閣僚とのオンライン会議で、西側諸国による経済制裁への対抗処置として、ウラン、チタン、ニッケルの輸出制限を検討するよう指示した。日本を含め多くのメディアが同日伝えた。

 

関連記事:チタン原料市場市況2024年9月 じり安、中国の金属チタンが最安値圏 需要戻らず | MIRU (iru-miru.com)

 

 ロシアはウラン鉱石の生産量では世界6位。ただ、原子力発電に用いられる濃縮ウランの生産企業では原子力国策会社のロスアトムが世界トップクラスのシェアを誇る。隣国カザフスタンに豊富な埋蔵がある。

 

(出所:日本原子力産業協会)

 

 

 対して、米国のウラン供給は海外産に依存する。カナダ産が多いが、ロシアがウクライナに侵攻する前までは、ロシアからの輸入も輸入全体で3番目に多かった。

 米国だけでなく、先進国を中心に世界的に原子力発電が見直され需要が拡大するとの期待は強まっている。東日本大震災から13年が経過し、脱炭素の流れの中で見直されている。ウラン価格は2月には節目の$100/lbを超える場面があった。足元では$80前後に落ち着いているが、水準としては2007年以来17年ぶりの高値圏にある。

 

過去20年間のウラン価格の推移($/lb)

 

 

「人気者」となったウランを巡る大国の思惑は交錯するが、どうもかみ合っていないようだ。米国の輸入禁止措置は、ロシアに痛手になるとの目論見から来たものだった。しかし、そのロシアは、自ら輸出の制限を検討している。もちろん生産過程におけるどの部分での措置なのかによるとはいえ、結局は中国のほう助のような抜け道もあり、貿易制限による武器化は難しいと思われる。

 

■米中対立は深刻化、台湾問題で米企業制裁

 これとは別に、中国が様々な場面でロシアをほう助しているとの疑惑は根強い。ブルームバーグ通信は9月18日、キャンベル米国務副長官が同日の下院外交委員会の公聴会で、「ウクライナ領空に侵入するロシアの無人機などに中国の電子機器や技術が使われている」と指摘し、「中国最高指導部がロシアへの軍事産業支援を推進している」と非難したと伝えた。

 米中間の緊張も高まる。中国外務省は9月18日、米国の9軍事企業を同日付で経済制裁の対象にすると発表した。

 

中国側プレスリリース: 关于对美国军工企业采取反制措施的决定_中华人民共和国外交部 (mfa.gov.cn)

 

 中国は米国防安全保障協力局(DSCA)が9月16日に、国務省が台湾に対する軍事支援を決定したと発表したことに反発した。米国から台湾への支援内容は軍用機と関連設備の部品の返却や修理、再輸送などで、総額は約2億2800万米ドル(約320億円)程度とされた。

 

 ウランは言うまでもなく軍事向け材料の1つであり、地政学的リスクが高まれば、価格を含めその動向にも反応が出る。多くの火種を抱える米中、そして資源国であるロシアの3者の関係は、今後も注意する必要があるだろう。

 

(IR Universe Kure)

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