ミャンマー内戦、世界に経済的影響拡大の兆し 中国が物流停止、反政府軍がレアアース生産地制圧
ミャンマーの内戦拡大が資源貿易に影響する可能性が出てきた。中国が10月に入り、ミャンマーとの国境の貿易窓口を閉鎖したと伝わった。一方で少数民族の武力勢力がレアアースの主要生産地域を制圧したとも伝わる。国連をはじめ世界の働きかけは続くが、長引く混乱による世界への経済的影響は避けられなくなりつつある。
■中国が国軍支援で物流停止 反政府勢力がレアアース生産地制圧
ミャンマー州分布地図
(出所:wikipedia)
ミャンマー独立系メディアのミャンマーナウは10月24日、「国境貿易業者によると、中国政府は10月22日以降の国境沿いのすべての貿易を事実上停止させた」と伝えた。同日からシャン州北部のほか、東部のミューズおよびモングラの国境ゲートを閉鎖したという。ミャンマーナウは、これを中国が「国境沿いに拠点を置く少数民族武装集団に圧力をかけ、ミャンマーの軍事政権に対する攻撃を終わらせるという中国の取り組みの一環」と伝えた。
一方、ロイター通信は10月23日、「ミャンマーの少数民族武装勢力であるカチン独立軍(KIA)の報道官が10月22日、KIAが北部カチン州の主要なレアアース(希土類)鉱山の支配権を握ったとロイターの取材に対して明らかにした」と伝えた。ミャンマーのレアアース採掘場はカチン州のパンワ、チプウィの両都市周辺に集中しているが、報道官によると、KIAは10月19日にパンワを支配。ロイターがミャンマーの地元メディアを引用して伝えたところでは、チプウィはパンワよりも前にKIAが支配した。
■日本の錫輸入元としてで4位
ミャンマーは錫やレアアースの生産・埋蔵量が多いことで知られ、錫の埋蔵量では世界10位。日本にとっても4番目の錫の輸入元だ。金属の輸出先としては鉛や亜鉛を含めてタイや中国が多く、特に中国はほぼすべての金属で主要な輸出先だった。
ミャンマーの金属埋蔵量と生産量
(出所:JOGMEC)
ミャンマーでは2021年に国軍がクーデターを起こし、反対する少数民族武力勢力との内戦が勃発。2023年10月には少数民族武力勢力が複数で国軍を攻撃し、内戦が一段と拡大した。
国連総会で人権問題を扱う第3委員会では10月29日、オーストラリアの元外相で国連でミャンマー問題を担当するビショップ特使が状況を報告した。軍のトップとも会談したことを明らかにするとともに、「忘れられた危機になる可能性がある」として、和平プロセスを可能にする共通の土台を見いだす必要があると訴えた。また、国連人権理事会が設立した「ミャンマーに関する独立調査メカニズム(IIMM)」は10月29日、ミャンマーでの戦争犯罪および人道に対する罪が増加し、残虐性が深刻化していると報告した。
(IR Universe Kure)
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