アンモニアの燃料利用促進へ、国交省が検討会立ち上げ

カーボンニュートラルポートのイメージ(国交省ホームページから引用)
国土交通省は7日、港湾での水素やアンモニアの受入環境整備に向けた検討会の初会合を11日に開催すると発表した。同化学物質を安全かつ効率的に受け入れるための施設配置や輸送体制などを検討する上で留意すべき点などを取りまとめる考えだ。クリーンエネルギーとしての認知度が高まってきた水素とともに、アンモニアの燃料利用が促進されることが期待される。
現在、港湾業界では施設の脱炭素化推進により荷主や船社から選ばれる競争力のある港湾を形成することが重要課題の一つとして位置づけられているほか、港湾・臨海部エリアに位置する産業のエネルギー転換への貢献が求められている。
今回立ち上げられる「港湾における水素等の受入環境整備に向けた検討会」は、カーボンニュートラルポート(CNP)構想実現に向け、水素やアンモニアを含む脱炭素燃料の輸送や産業利用を進めるための検討会ではあるが、アンモニアを船舶の燃料として活用しようとする動きもみられる。
船舶用エンジンメーカーのジャパンエンジンコーポレーションは5日、国産アンモニア燃料エンジンの試験運転完了を発表したばかり。高いアンモニア混焼率でのエンジンの安定運転に加え、温暖化係数の高い亜酸化窒素(N₂O)の発生も燃焼制御によって非常に低いレベルに抑制できることを確認したという。
同社は、既にこれらの成果をフィードバックしたアンモニア燃料フルスケールエンジン初号機の製造に着手しており、2025年4月に試運転を開始し、9月に完成予定とのことだ。
また、アンモニア製造プロセスにおける脱炭素化の研究も日々進められているようだ。8日にはIHIが再生可能エネルギー由来の水素を使ったグリーンアンモニアの製造試験に成功したと発表している。
アンモニアは燃焼時にCO₂が発生しないカーボンフリーの燃料ではあるが、一般的な製造方法としては、天然ガスを改質して製造した水素と空気中の窒素をもとに製造されており,その過程では天然ガス由来のCO2が排出されているのが現状だ。
そこで、IHIは独自の「Power-to-X技術」を活用したグリーンアンモニア製造試験装置を、そうまIHIグリーンエネルギーセンター(福島県相馬市)に設置し、水素製造からアンモニア合成までの一連のプロセスを検証するための試験を実施。目標としていた効率でアンモニアが製造できることを確認した。今後は、製造プラントの運転条件の最適化や反応器データの取得などを行い、早期の大型化・商用化を目指す。
Power-to-X技術によるエネルギー変換のイメージ(IHIリリースから引用)
アンモニアといえば、理科の実験で強烈な刺激臭を嗅いだ経験からマイナスイメージを持っている消費者も多いだろう。しかし、サーキュラーエコノミーの実現に導く救世主として広く支持される未来もそう遠くないかもしれない。
(IRuniverse K.Kuribara)
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