週刊バッテリートピックス 「太陽電池の実証実験」「リチウム硫黄電池に注目」など
2024年12月2日~12月8日のバッテリー業界では、太陽電池や水素燃料電池など新素材関連の話題が目立った。大学との共同研究で新たな技術を開発する方向が多い。電気自動車(EV)の車載電池関連はEV失速の長期化もあって静かだが、こちらも欧州自動車のステランティスがリチウム硫黄電池の開発に意欲を示すなど新素材が注目された。
<国内>
●太陽電池を電車の窓に 名古屋大などが実験
名古屋大学は12月6日、ホームページ上で、「カーボンナノチューブ電極を用いた太陽電池を電車の窓に張り付ける実験を同日始めた」と発表した。同様の実験は世界初。
大阪・森之宮のe METRO MOBILITY TOWNにある大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)の地下鉄引退車両の窓枠に貼り付け、発電量などを調べる。カーボンナノチューブは日本の研究者が開発した導電性のある炭素材料。従来の太陽電池材料に比べ耐久性が高いのが特徴だ。
プレスリリース:090a35372a54c7b21d15623f319c5a4c.pdf
●消費者庁、リチウムイオン電池の取り扱いに注意呼びかけ 暖を取る製品にも使用で
(出所:消費者庁ホームページ)
消費者庁は12月5日、ホームページ上で、リチウムイオン電池の取り扱いについて再度注意を呼び掛けた。寒さが本格的に厳しくなる中、暖を採る製品にも多くリチウムイオン電池が使われているため、製品に強い衝撃や圧力を加えないなど正しい使い方をするよう促した。令和6年10月から令和7年1月まで、日本を含む経済協力開発機構(OECD)の加盟国は、リチウムイオン電池の安全性に関する国際共同啓発キャンペーンを実施している 。
プレスリリース:リチウムイオン電池使用製品のトリセツ ― 暖をとる製品にもリチウムイオン電池が使われています! ― | 消費者庁
●三菱HCキャピタル、太陽電池のPXPと資本業務提携
三菱HCキャピタルは12月4日、自社ホームページ上で、「フレキシブル太陽電池の開発を手掛けるPXPと資本業務提携契約を締結した」と発表した。フレキシブル太陽電池を活用した脱炭素ソリューションの開発を推進する。
プレスリリース:2024120401.pdf
一方、PXPは同日、ソフトバンクをリードインベスターとする「資金調達で総額15億円を調達した」と発表した。
プレスリリース:PXPがソフトバンクをリードインベスターとするシリーズAラウンドで総額15億円の資金調達を実施 | 株式会社PXPのプレスリリース
●パナソニック、英工場の電力を再生エネに 水素電池や太陽電池などで
パナソニックは12月3日、「英国の電子レンジ組み立て工場に、水素を活用した再生可能エネルギーを導入した」と発表した。純水素型燃料電池に太陽電池と蓄電池を組み合わせた3種の電池の連携制御を導入し、工場内で必要な電力を賄う。
●環境省、 第2回「ヤード環境対策検討会」開催
環境省は12月3日、第2回の「ヤード環境対策検討会」を開催した。
関連記事:第2回「ヤード環境対策検討会」――「廃電池・金属スクラップ事業環境の整備が必要」 | MIRU
●クリティカルマテリアルフォーラム2024」が開催
「クリティカルマテリアルフォーラム2024」が12月3日、ヒルトン東京で開催された。
関連記事:クリティカルマテリアルフォーラム2024:市場の未来を議論する場 | MIRU
●山梨大と三菱ふそう、水素燃料電池で協力
山梨大学と三菱ふそうトラック・バスは12月2日、それぞれのホームページ上で、「水素燃料電池(FC)の共同研究を柱とする包括連携協定を結んだ」と発表した。(1)研究開発、(2)人材交流、(3)教育・研修の機会の共有――などの分野で協力する。
プレスリリース(三菱ふそう):ふそう1203_山梨大学と包括的連携協定を締結.pdf
プレスリリース(山梨大学):三菱ふそうトラック・バス株式会社との包括的連携協定締結式を挙行 | 山梨大学
●日本ガイシ、ハンガリー社にNAS電池
日本ガイシ(本社 : 名古屋市)は12月2日、自社ホームページ上で、「ハンガリーの再生可能エネルギー事業者Greenergy Holding向けに電力貯蔵用NAS電池を受注した」と発表した。
ハンガリーのエンジニアリング企業であるDuna Center Therm Uzemi Szolgaltato Kft.を通じて受注した。最大出力が直流500キロワットのコンテナ型NAS電池2台を販売する。運転開始は2025年6月の予定。日本ガイシは、かねてハンガリー国営のエネルギー会社MVMグループや、大手変圧器メーカーなどと取引がある。
プレスリリース:ハンガリーの再エネ事業者向けにNAS電池を受注 太陽光発電の効率利用・収益力向上に貢献 | ニュース | 日本ガイシ株式会社
<海外>
●欧ステランティス、米新興とリチウム硫黄電池の開発で提携
欧州自動車大手ステランティスは12月5日、自社ホームページ上で、「米電池技術新興企業のゼータ・エナジー(本社:テキサス州)と、EV向けのリチウム硫黄電池の開発で事業提携した」と発表した。現在主流のリチウムイオン電池に比べ軽量で、生産コストも約半分で済む可能性がある。
プレスリリース:Stellantis and Zeta Energy Announce Agreement to Develop Lithium-Sulfur EV Batteries | Stellantis
●中国、一部重要鉱物の米国向け輸出を禁止
中国商務省は12月3日、ホームページ上で、軍民両用の重要鉱物について米国向け輸出を原則禁止すると発表した。同日付で発効する。電池材料のグラファイトについても使途などの審査を厳格化した。
関連記事:中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出を禁止 昨年の規制から一段と強化、3日発効 | MIRU
●米GM、ミシガン州のEV電池工場を韓国LGエナジーに売却
米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は12月2日、自社ホームページ上で、韓国電池大手LGエナジー・ソリューションと合弁で建設中の米ミシガン州のEV電池工場について、LGに売却すると発表した。売却手続きは2025年3月までに完了する見通し。GMはこの工場への投資を回収し、オハイオ州とテネシー州の工場に振り向ける。工場の従業員数は約100人。
発表では売却額は明かされなかった。12月3日のロイター通信は消息筋の話として「10億ドル(約1兆5000万円)程度」と伝えた。
プレスリリース:GM to sell stake in Lansing battery cell plant to partner LG Energy Solution
(IR Universe Kure)
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