原子力を含む脱炭素電源を「最大限活用」―エネルギー基本計画素案

経済産業省は17日、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会を開催し、次期エネルギー基本計画の素案を発表した。S+3E(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)の原則を維持しつつも、原子力を含む「脱炭素効果の⾼い電源を最⼤限活⽤する」方針などを示した。
2021年に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では、東京電力福島第一原子力発電所事故の経験から、「原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」と明記されていたが、次期基本計画の素案ではその記載は削除され、「原子力発電維持」の姿勢が明確となった。
素案では、DXやGXの進展による電力需要増加が見込まれるなかで、「経済成長や産業競争力強化を実現できなければ、雇用の維持や賃上げも困難となる」と強調。「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用していくことが極めて重要となる」と纏めた。
原子力発電における具体的な政策としては、再稼働の推進やバックエンドプロセスの加速化、次世代⾰新炉の開発・設置などを挙げた。次世代革新炉については、廃炉を決定した原⼦⼒発電所を有する事業者の原⼦⼒発電所サイト内での次世代⾰新炉への建て替えを対象として、「具体化を進めていく」とした。
産業界からは原子力支持の意見が多く聞こえるものの、エネルギー政策に関する意見箱には、「原発に頼るのだけは絶対やめてください」「巨大なリスクを抱える原子力発電は即刻廃止すべき」など批判的な意見が目立つ。素案には、「東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むことが、引き続きエネルギー政策の原点」との記載もあるが、実質的には原発依存度の低減を撤回したことになり、世論がどう反応するかが気になるところだ。
なお、素案では銅やレアメタルなどの重要鉱物の確保にも言及しており、「安定的な供給確保に向けて、備蓄の確保に加え、供給源の多⾓化等に取り組むとともに国産海洋鉱物資源の開発にも取り組む」と記載している。ベースメタルについては、22年度時点で37.7%にとどまっているベースメタルの自給率を、30年までに80%以上とすることを目標に掲げた。
(IRuniverse K.Kuribara)
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