バナジウム市場近況2025#1 安値横ばい、新旧正月の谷間で様子見
2025年1月初めまでのバナジウム価格は安値圏で横ばい。欧米をはじめとする海外でクリスマスから新年の休暇シーズンだった一方、中国をはじめとするアジア圏では2月初めから春節(旧正月)の連休に入る。新旧正月の連休の谷間で、積極的な取引を手控えるムードとなっている。
バナジウムは主に鉄鋼の添加剤として使用され、生産・使用ともに中国が多い。その中国の国家統計局が1月9日に発表した2024年通年の卸売物価指数(PPI)は前年比2.2%下落した。12月単月では2.3%の下落で、下落は27カ月連続となった。
中国の2024年のPPIを詳しく見ると、生産材料の卸売指数は下落率が3%を下回る月も多いなど、PPI全体に比べても振るわなかった。鉄鋼の卸売価格は2024年通年で4.3%、建築材料も5.7%それぞれ値下がりした。鉄鋼の主要用途である不動産向け需要が戻らず、バナジウム価格にも下押し圧力となっている。
中国の生産財卸売価格の推移
中国の産業別PPI
(出所:いずれも中国国家統計局)
■五酸化バナジウムは12月下旬から横ばい、フェロバナジウムは1か月動きなし
過去3か月間の五酸化バナジウム価格の推移(V205 fob China)($/lb Vo205)
五酸化バナジウムは2024年12月19日に仲値$4.58/lbを付け、年をまたいでも同水準で推移している。中長期では過去2年間に渡りじり安で、水準としては2016年秋以来の安値圏で推移している。
過去3か月間のフェロバナジウム価格の推移(V78%min US$/kg EU)($/kg)
鉄鋼向けのフェロバナジウムは2024年12月6日に仲値$25.15/kgを付け、1か月以上動きがない。同年9月以来の安値だが、中長期の水準としては2022年3月の$60超えをピークに、じりじりと下落傾向にある。
Topics
1月6日
オーストラリア鉱業大手のQEMは1月6日、自社ホームページ上で、同社がクイーンズランド州で手掛けるジュリアクリーク・バナジウム・エネルギープロジェクトが、州政府により環境保護事業として認められたと発表した。豪政府による重要鉱物プロジェクトにリスト入りする可能性が出てきたという。
プレスリリース: Investor Centre
12月24日
東洋エンジニアリング(TOYO)は、「マレーシア子会社が、素材大手の太陽鉱工のマレーシア子会社から使用済み触媒リサイクル設備の建築事業を請け負った」と発表した。
関連記事: 太陽鉱工、マレーシアに触媒リサイクル工場 モリブデンとバナジウム回収、日本へ輸出 | MIRU
12月18日
出光興産はオーストラリアの関連企業を通じ、同国でバナジウム鉱山の開発・バナジウム電解液の製造を推進するヴェッコ(Vecco Group Pty Ltd、本社:ブリスベン)の持株比率を51%へ引き上げると発表した。
関連記事:出光興産、バナジウム事業の豪Vecco社へ過半出資 | MIRU
(IR Universe Kure)
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