ペロブスカイトだけじゃない太陽光発電―PV EXPO

災害時の調整池でも発電を
18日に閣議決定された第7次エネルギー基本計画において、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた解決策として明記されたペロブスカイト太陽電池。低コストや柔軟性に加え、ペロブスカイト太陽電池の主な原料であるヨウ素の世界シェア3割を日本が担っているなどの理由から、日本の再エネ拡大の切り札として期待されているが、本格的な社会実装にはまだまだ時間がかかるだろう。しかしながら、太陽光発電普及に向けた道のりは、ペロブスカイト一択ではない。東京ビッグサイトで19~21日にかけて開催されている展示商談会では、「PV EXPO 太陽光発電展」では、ペロブスカイトではないが柔軟性と軽量性を兼ね揃えたパネルや、調整池などの空きスペースを有効活用する水上太陽光発電など、国内事業者のニーズに沿った多彩な提案が行われた。
PV EXPOは太陽光業界日本最大の展示会で、新エネルギー総合展「SMART ENERGY WEEK」の構成展の一つとして開催された。水素・燃料電池や二次電池、洋上風力、バイオマスなど他の展示会が東棟で催される中、離れた南棟での単独開催となったが、多くの来場者で賑わった。
電巧社は「諦めていた屋根で発電を」のテーマの下、屋根や壁面設置に最適なソーラーパネル「フレキシブルソーラー G+」などを展示。ペロブスカイト太陽電池の利点を備えつつ、すぐに実装可能な提案を行った。
電巧社ブース。軽量性や柔軟性をPRした
「フレキシブルソーラー G+」は優れた複合素材を採用し、同じ出力で従来の重さの70%まで低減した軽量性が特徴の商品。柔軟性や耐久性に優れ、湾曲面にも接着できるため、屋根の強度不足、耐震補強コスト、防水毀損のリスクから導入を諦めていた環境でも設置が可能となる。
日本初(同社調べ)となる施行保証が付いているのも大きなPRとして訴求していた。接着がはがれた場合や施工による屋根からの水漏れ、物体の飛来による損壊時に一定の保証を受けられるため投資リスクは最小限に抑えることができる。
早期の社会実装が望まれるペロブスカイト太陽電池は大きな利点がある反面、寿命が短く耐久性が低いことや大面積化が困難などの課題も多い。もちろん、各企業が研究開発に注力しており変換効率の向上など、日々技術は進化しているが社会実装までにはまだしばしの時間を要するとみられている。それまでの時間をつなぐ救世主として同製品は大いに活躍することだろう。
一方、東和アークスが提案したのは陸地ではなく、水上での太陽光発電だ。同社は地上と同じように架台を組み、上にモジュールを乗せることが可能な「水上太陽光発電フロートシステム」を展示し、来場者の注目を集めた。特に筆者は調整池に設置できる点に強い魅力を感じた。
東和アークスの水上太陽光発電フロートシステム
調整池は水害に備えた施設であり、下流の河道が洪水を流しきれない場合に、洪水の一部を一時的に貯めて、下流側の氾濫を防ぐもの。すでに多くの地域で設置され、住民の安全に貢献してきたが、頻発する自然災害への対応を強固にするため、今後も整備強化や拡大を実施していく可能性が高い。
同社の「水上太陽光発電フロートシステム」は調整池が空の状態のときは地面に設置した状態で設置ができ、調整池に水が流入した際はフロートで浮上。水が引くまでの期間も継続して発電ができる仕組みだ。ダムレベルの推移差にも対応できるという。停電時でも稼働する蓄電池を設置することも可能で、災害時の非常用電源確保にも貢献する。
主要メディアで取り上げられなくても、調整池に水が流入する大雨は国内で意外なほど多く発生している。まずは水上太陽光発電という概念が多くの消費者や事業者に周知されることが、普及に向けた取り急ぎの課題といえる。
(IRuniverse K.Kuribara)
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