国際自動車リサイクル会議2025(IARC)ベルギー・アントワープ2日目

ベルギー・アントワープで19日から開催されている国際自動車リサイクル会議(IARC)2日目は、昨日に引き続き、現在調整作業が進行中のELV規則案要件に焦点を当てた議題によるセッションが行われた。
本日のキーノートスピーカーとして、ルノー・グループ子会社で自動車のサーキュラーエコノミーに特化する「The Future is Neutral」の事業部部長から同社における自動車の最新事業戦略の発表があった。The Future is Neutralは、ルノーがこれまでに形成した自動車バリューチェーンの利用と新たなパートナーシップにより、リマン・リユース・リサイクル事業を展開している。
2日目初めのセッションのテーマは、ELV規則案のなかで強化されるEPRシステムだ。EPRシステムについては、自動車メーカーとリサイクラー間における個々の回収システムの構築か第三者組織への委託(PRO)による遂行が認められている。自動車OEMは、PROの設置より個々のシステムを好む傾向にあり、フランスの大手OEMもそのケースでOEMと解体業者間で回収システムを契約により構築しているが、近年の国内規制改正により、自動車のPROも創設されている。そのフランスからは、自動車解体大手INDRAから重量車を含む自動車の拡大生産者責任についてのトークがあった。INDRAはOEMとの回収契約に加え、優良な破砕業者を選択し原料回収の質に応じて契約・更新している。
一方でベルギーでは、生産者責任組織(PRO)・Febelautoが自動車の輸入業者からの委託により、拡大生産者責任を遂行している。また同組織は自動車だけでなく、自動車のタイヤ、オイル、バッテリーなどのEPRも遂行している。またFebelautoは、タイヤや自動車のレザーシートなどのアップサイクルにも注力しており、プレゼンテーションの一環として、リサイクルレザーを使用して作られたドレスをモデルが着用、会議場で披露する一幕もあった。タイヤのアップサイクルでは、乳牛用のマットレスを作っている。タイヤのマットレスで眠らせると牛の牛乳生産率が上がるとのことだ。
午後のセッションでは午前に続きEPR制度のパートIIとして、フランスにおけるリサイクル・リユース・サーキュラーエコノミー連盟と自動車のPRO、Recycle mon vehicleから国内のEPRスキームについてのプレゼンテーションがあった。日本からは熊本大学の外川教授が日本の自動車リサイクル事業に関するトークを行なった。議題は、日本とEUにおけるEPR制度の違いに焦点を当てながら、中国における輸入規制強化による日本への影響、日本のATF市場における外国人の参入、日本の自動車リサイクルシステムと中古車輸出との関連について、日本の現状が説明された。欧州における日本のELV事業に関する認知度は低く、貴重なプレゼンテーションだ。質疑応答では多くの質問が飛び交った。
(講演する熊大 外川先生)
終日最後のセッションの議題は、最も注目を集まるELV規則要件の一つであるプラスチック再生材含有目標値だ。欧州プラスチック協会(Plastics Europe )からは、欧州におけるプラスチックリサイクルの現状とELV規則案の目標値についてのプレゼンテーションがあった。ELV規則案における欧州委員会のプラスチック再生材含有目標値提案は25%うち25%がクローズドループだが、EU理事会の修正案では20%うちクローズドループ25%、欧州議会の修正案では、20%うちクローズドループ15%となっている。しかしながら欧州議会の修正案には前述とは異なる数値の提案も多くあり、まだまだ流動的なことを示している。また、プレ・ポストコンシューマー、バイオプラスチックなどどのプラスチックが含まれるのかについても、理事会と議会の意見が分かれており、こちらも流動的だ。今後の協議に注目が集まるところだ。
欧州のプラスチック業界の見解では、プラスチックリサイクルの促進には規制による牽引が必須であり、そのためには「野心的」な目標値の設定が必要であると述べた。欧州リサイクル協会Euricからは、需要の低下、低価格の輸入品の増加、バージン価格の下降、高エネルギーコストなど、欧州のプラスチックリサイクル業界が現在直面する障壁が挙げられた。その上で、プラスチックリサイクル能力を拡大し、経済性を確保するにはさらなる投資が必要であり、やはり規制による後押しが必須であることが強調された。プラスチック業界における再生材の含有目標値をめぐるプラスチック業界の意見は、「25%の提案値は高く現実的でなない」とする大部分の自動車OEMとは非常に対象的である。
第24回を迎えた国際自動車リサイクル会議のセッションは、Tomboy氏による2日にわたる会議内容のまとめとステアリング委員会会長であるOlivier FRANCOIS氏から閉会の辞の挨拶とともに終了し、その後参加者にはネットワーキングカクテルが用意された。21日にはワークショップとプラントツアーが開催される。
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SCHANZ, Yukari
オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。
趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。
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