IGS 廃棄物中のリチウムイオン電池を検知するシステムを開発
~神戸大発スタートアップIGS、世界初の計算理論・量子効果センサで混入を検知~
神戸大学発スタートアップ・株式会社Integral Geometry Science(以下「IGS」)は、4月21日、ごみ処理施設でリチウムイオン電池が原因となる出火事故が増加していることを受け、廃棄物に混入するリチウムイオン電池を検出する「リチウムイオン電池検知システム」を開発したと発表、同日より発売を開始すると発表した。
開発背景
IGSは世界初の計算理論による「物体内透視技術」を確立し、医療・エネルギー・インフラなど様々な分野において、透視技術の研究開発と実用化に取り組んでいる。
モバイルバッテリーなどリチウムイオン電池を使用した製品の普及に伴い、捨てられたリチウムイオン電池が原因とみられる、ごみ収集車やごみ処理施設での出火・発煙件数が増加している。環境省の調査によると、2023年度、ごみ処理施設や収集車で2万件超発生し前年度より3割増え、過去最多に。さらに独立行政法人製品評価技術基盤機構によると、ごみに混入したリチウムイオン電池の発火などによる被害額は、2018年度から2021年度の4年間でおよそ111億円(※1)に達しているという。
(※1)参照:独立行政法人製品評価技術基盤機構「「ごみ捨て火災」、被害は100億円超え!~充電式電池は正しく捨てましょう~」
発火を防ぐため、リチウムイオン電池の混入防止が急務となっている。しかしリチウムイオン電池等発火物に関する実態調査では、ごみ処理施設では対策として、手選別のラインの延長や人員の増加、ベルトコンベアのスピードを下げる、流量を下げる、X線選別機などの対策をしていると一部では回答があった一方で、「対策は特にしていない」または無回答の割合は50%以上に上り、適切な対応策が確立されていないことが課題となっている。(※2)
(※2)参照:日本容器包装リサイクル協会「全国市町村リチウムイオン電池等発火物 実態アンケート調査 集計結果」
このような状況を受けIGSは、検出精度が高く、人的コスト・導入コストを考慮した新たな検査システム「リチウムイオン電池検知システム」を開発した。
IGSの「リチウムイオン電池検知システム」
同システムは、IGSが研究・確立した世界初(*)の「物体内透視技術」を応用している。IGSが創り出した世界初の計算理論と量子効果センサにより、不燃ごみの中からリチウムイオン電池を検知することを可能にした。
(*)参照:nature portfolio「Discovering a theory to visualize the world」
■特徴
①電磁場の空間分布を量子効果センサで検出
同システムは、廃棄物の構成材料によって変化する電磁場の空間分布を量子効果センサで検出する。金属・ガラス・陶器・プラスチックなどで構成された日用品や小型家電などが含まれる廃棄物の中から、リチウムイオン電池を検知することが可能になっている。
②様々な大きさの廃棄物にリチウムイオン電池が混入していても、検出が可能
同システムは同社が独自に開発した量子効果センサを搭載。リチウムイオン電池と量子効果センサが密接、または極めて近い距離で検査をしなくとも検出が可能なため、様々な大きさの廃棄物を一斉に検査できる。
③導入・人的コストを低減
同システムは、放射線を使用していないため放射線管理区域やX線技師などの専門家を必要としない。そのため、従来のごみ処理施設にカスタマイズし導入することで、導入・人的コストの低減を実現した。
■検査装置(製品写真 側面図)
ベルトコンベアで流れる廃棄物の検出が可能。また製品にはローラーが供えられており、展開したゴミを一気検査が可能。
※導入・検査方法はカスタマイズが可能
(IR universe rr)
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