中国のニッケル銑鉄&鉱石価格動向(25年5月第2週) さえない、最終需要鈍く調達意欲が低迷
2025年5月第2週の中国のニッケル銑鉄とニッケル鉱石価格は、さえない動きとなっている。最終製品の需要が伸びず在庫が十分であることから取引先の調達意欲が低く、市場全体のムードが低調だ。一方でインドネシアが鉱業ロイヤルティを引き上げたり、米国の相互関税の影響が及んだりと、波乱要因は潜在する。
■銑鉄ピークアウト、鉱石は動きなし
上海有色網(SMM)は5月8日付のレポートで、「取引先である前駆体メーカーの在庫が十分で、ニッケルの調達意欲は低調だ」と指摘した。生産地であるインドネシアでは4月に洪水があり、鉱石などの供給はひっ迫の兆しがあるものの、供給減を見越しての買いはまだ少ない。
一方、インドネシア政府は鉱業企業から徴収するロイヤルティ(使用料)を引き上げた。米ブルームバーグ通信やインドネシアの鉱業専門コンサルティング会社のTuraコンサルティングが4月16日に伝えた。インドネシア国内のニッケル産業の整備が進めば、中国を含む国際ニッケル価格に影響してくる可能性が高い。
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過去3ヶ月間のニッケル銑鉄価格の推移(NPI content 10-15% China)(RMB/Nickel/MTU)
中国のニッケル銑鉄価格は5月8日に高値RMB990/MTUを付けた。節目のRMB1000を割り込み、3月上旬以来の安値に値下がりした。4月上旬から中旬にかけてRMB1035の直近高値を付けたがピークアウトした。
過去3ヶ月間のニッケル鉱石価格の推移(1.8min CIF China)($/ton)
中国のニッケル鉱石価格は3月20日に仲値$75/tonに上げ、その後は横ばい。その前も2024年10月から5か月間にわたり横ばいが続き、動きは鈍い。
■精錬は急落後持ち直す、相互関税前の水準には届かず
過去3か月間のLME($/ton)とSHFE(RMB/ton)のニッケル価格の推移
精錬ニッケル価格は4月上旬にトランプ米政権による相互関税発表を受けて急落した後、やや持ち直している。ロンドン金属取引所(LME)のニッケル価格は5月8日に現物$1万5355/tonを付け、急落時の$1万3000台から持ち直した。しかし、急落前の3月半ばに付けていた直近高値$1万6000台には遠く、勢いは鈍い。
上海先物取引所(SHFE)のニッケル価格も同じ動き。5月8日に現物RMB12万4080/tonと4月上旬のRMB11万台から持ち直した。しかし、3月のRMB13万台には届いていない。
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5月2日
フィリピンのニッケル生産企業であるグローバル・フェロニッケル(GFNI)は5月2日、株式を上場するフィリピン証券取引所で、「初めてインドネシアにニッケル鉱石を輸出した」と発表した。
初出荷は4月30日で、5万6625トンを輸送した。内訳はニッケル含有量が1.25%の低品位鉱石と鉄含有量が20%未満の製品。今後は計500万トンの出荷を目標にする。売上高の構成は、中品位ニッケル鉱石47%、低品位ニッケル鉱石53%になる見通しだ。
プレスリリース:Press Release
4月24日
国際ニッケル研究グループ(INSG)は4月24日、ホームページ上で、2025年のニッケルの需給見通しを発表した。供給量が373万5000トン、需要量が353万7000トンで19万8000トンの供給過剰になる見通し。供給過剰の規模は2024年の17万9000トンから拡大し、2024年10月の前回予測時の13万5000トンも上回ることになる。
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4月23日
インドネシアのエネルギー鉱物資源省(EMR)は4月23日、ホームページ上で、「韓国のLG エネルギーソリューションが撤退した同国の電気自動車(EV)向け電池材料事業は、中国の浙江華友コバルトが引き継ぐ」と発表した。
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4月21日
インドネシア統計局が4月21日に発表した3月の貿易統計によると、ニッケル製品の輸出量が132万9500トンだった。
このうちニッケル銑鉄(NPI)は106万7028トン、混合水酸化沈殿物(MPH)が19万807トン、黄酸ニッケルが2万3510トン、ハイニッケルマットが1万9222トン、フェロニッケルが7272トン、電解ニッケルが4361トンだった。
関連記事: インドネシア 1~3月のニッケル製品輸出量は350万トンに | MIRU
4月16日
ニッケルなど金属の探査・開発を行う豪アルデア・リソーシズ(Ardea Resources)は4月16日、住友金属鉱山から460万豪ドルの戦略的投資を受けると発表した。
関連記事: 住友金属鉱山 豪Ardea Resources社に出資 Kalgoorlieニッケルプロジェクト開発をさらに支援 | MIRU
(IR Universe Kure)
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