2025年7月28日~8月3日のバッテリー業界では、車載電池世界最大手である中国の寧徳時代新能源科技(CATL)関連のニュースが相次いだ。まず7月末発表の1-6月期純利益は33%の増益と2024年12月期から改善。説明会やドイツ勢との協業など動きも活発だった。日本勢は電池の再利用を巡る実験が相次いだほか、異業種間の提携も目立った。
IR Universeは9月25日、第12回Battery Summit を開催する。今回は、中国の金属情報プロバイダーSMM(上海有色網)との共催となる。
9月25日(木) 第12回 Battery Summit in TOKYO | MIRU
日程
2025年9月25日(木)13:00~18:30
2025年9月26日(金)バッテリー関連工場訪問予定
会場
東京国際フォーラム Hall D7
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目5-1
<国内>
●ホンダ、定置用燃料電池電源の実験開始 トクヤマ、三菱商事と共同で
3社の実験イメージ
(出所:ホンダ発表資料)
ホンダは8月1日、自社ホームページ上で、「副生水素と車両からのリユースを想定した定置用燃料電池電源のデータセンター向け実証を山口県周南市で開始した」と発表した。
この実験は、ホンダがかねてトクヤマおよび三菱商事との3社共同で準備してきたもの。2023年6月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「水素社会構築技術開発事業」として採択された事業に当たる。
実験では、トクヤマが苛性ソーダ製造で生成する副生水素を活用し、ホンダが燃料電池自動車からのリユースを想定して開発する定置用燃料電池電源から、三菱商事が運営する分散型データセンターに電力を供給する。
プレスリリース:副生水素と車両からのリユースを想定した定置用燃料電池電源を活用した実証を開始 | Honda 企業情報サイト
●富士電機と三菱ガス 化学、メ タノールの水素燃料電池で協業へ
電機大手の富士電機(本社:東京・品川)と三菱ガス 化学(本社:東京・千代田)は8月1日、それぞれの自社ホームページ上で、「燃料電池 と、メタノールを原料とする水素生成器を統合した発電システムの共同実証に向けた検討を開始した」と発表した。メタノールから水素を生成し発電するまでを効率的かつ低コストに行う「メ タノール改質型水素燃料電池システム」の商用化を目指す。
プレスリリース:20250801
●旭化成と豊田通商、LIB向けセパレータでキャパシティライト契約
旭化成と豊田通商は7月31日、それぞれの子会社が車載用リチウムイオン電池(LIB)向けセパレータについて、キャパシティライト契約を締結したと発表した。
関連記事:旭化成と豊田通商、リチウムイオン電池用セパレータのキャパシティライト契約締結 | MIRU
●パナ、米国での電池生産後ろ倒しか オートモーティブは鉛電池値上げ
パナソニックホールディングス(HD)は7月30日、米カンザス州で7月に量産を始めた電池工場の能力増強計画について、将来的に約32ギガワット時を目指す方針を明らかにした。当初は2027年3月期末までに約30ギガワット時としており、事実上の後ろ倒しとなる。米ブルームバーグ通信が同日伝えた。
一方、傘下のパナソニック オートモーティブシステムズは同日、自動車用鉛蓄電池(補修用)の価格を2025年10月1日から改定すると発表した。
関連記事:パナソニック オートモーティブシステムズ、自動車用鉛蓄電池の価格改定 | MIRU
●オークネット、中古EV電池診断短縮 1日→5分に
中古車オークションのオークネットは7月29日、自社ホームページ上で、「中古EVの電池性能を自動で診断する装置を7月30日から導入する」と発表した。1日以上かかっていた診断時間が5分以内に大幅に短縮する。
プレスリリース:オークネット 中古EVバッテリーの「自動劣化診断ライン」を始動 ~24時間の診断時間をわずか5分以内へ短縮。需要増加へ向けて対策を完了~ | 株式会社オークネット
関連記事: 自動車リサイクルサミットⅣ報告④ SEI松本郁氏、日本シーム舩橋悟氏、オークネット大畑智氏が登壇 | MIRU
●第一工業製薬、電池用接着剤の生産拡大へ
工業用薬剤の第一工業製薬(本社:京都市)は7月29日、自社ホームページ上で、「リチウムイオン二次電池用の 水系複合接着剤の生産を拡大する」と発表した。
四日市の工業地域に生産設備を新設し、30億円を投じて負極用水系複合接着剤(バインダー)を生産する。2027年度の操業開始を目指す。同社は5月にも滋賀県で生産を拡大していた。
プレスリリース: 20250729_12201.pdf
● CATLとGoodWe Japan、系統用蓄電池システムで説明会
中国のCATLとGoodWe Japanは7月28日、系統用蓄電池システムに関するオンライン説明会を共同開催した。
関連記事:系統用蓄電池システムに関する共同説明会① 中華メーカーGoodWe JapanとCATLの蓄電池システムの紹介 | MIRU
関連記事:系統用蓄電池システムに関する共同説明会② 国内企業3社の発表を紹介 | MIRU
<海外>
●CATL、1-6月期は33%の増益 増収も確保
CATL が7月30日に上場する深圳証券取引所で発表した2025年1-6月期決算は、売上高が前年同期比7.2%増の1788億元、純利益は33.3%増の304億元(約6300億円)で、1-6月期としては最高益となった。2024年12月期は減収と15%の増益にとどまったことから、業績は回復したことになる。同社は5月に香港株式市場に重複上場した。
CATL1-6月期業績概要
(出所:深圳証券取引所のCATL開示資料)
関連記事:週刊バッテリートピックス 「CATL通期減収」「ノースボルトやAPB経営危機」など | MIRU
●LGエナジー、米テスラに電池供給か
韓国中央日報などの現地メディアは7月30日、「同国電池大手のLGエナジー・ソリューションが、米電気自動車(EV)大手のテスラにリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を供給することが分かった」と伝えた。
関連記事:韓国LG系、テスラにLFP電池供給か 米企業の調達多角化で、米韓は輸入関税15%で合意 | MIRU
●独BASF、CATLと提携
ドイツ化学大手BASFと中国CATLは7月28日、電池用正極活物質の開発・供給に関する「枠組み契約」を締結したと発表した。
関連記事:欧州からの風:July 2025 「BASF・CATL、正極活物質の共同開発で提携強化」 | MIRU
●米ライテン、ノースボルトの欧州資産を買収へ
リチウム硫黄電池を手がける米ライテン(Lyten)は、7月28日、自社ホームページ上で、3月に経営破綻したスウェーデンの電池大手ノースボルトの資産を買収すると発表した。ノースボルトが擁していたスウェーデンの人材などを獲得する。
ライテンはノースボルトが経営破綻する前の2024年秋に、既にノースボルトの北米資産などを買収していた。今回は、エネルギー貯蔵製品などの欧州資産を買収する。買収に向け、株主らから新たに2億ドル超の資金を調達したとも発表した。
●独政府、リチウム生産に本腰 電池需要見据え
ドイツ連邦経済エネルギー省(BMWE)は7月28日、西武2州の地方政府と連携し、電池の製造に不可欠なリチウムの国内生産インフラの構築に向けた「戦略的投資プロジェクト」を支援すると発表した。
関連記事:欧州からの風:July 2025 「ドイツ政府、バルカン・エナジー社のリチウムプロジェクトを支援」 | MIRU
(IR Universe Kure)