7月工作機械受注1283.6億円(3.6%増)と同月比増に戻るも補助金効果薄れ前月比減少
8/21の15時に日本工作機械工業会の2025年7月工作機械受注確報が開示された。7月受注は1283.6億円(同月比3.6%増、前月比3.6%減)と同月比増加に戻ったが、前月比では国内で補助金効果が薄れ減少、ただし5ヶ月連続1200億円超えとなった。トランプ関税問題の進展見せるも不透明感も多く力強さにかける展開続く。
外需5.3%増929.11億円と10カ月連続同月比増ながら前月比4カ月連続減1000億円割れ
外需は929.11億円(同月比5.3%増、前月比0.4%減)と10カ月連続同月比増も、前月比は4ヶ月連続減少し4ヶ月連続1000億円割れ。主要4業種中で航空・造船・輸送用機械のみ同月比減、前月比では一般機械、電気・精密が増加した。一般機械は309.1億円(同月比19.8%増、前月比14.0%増)と2ヶ月ぶり300億円超えと概して堅調。自動車は191.0億円(同月比10.4%増、前月比11.0%減)と5ヶ月ぶり200億円割れで一服。電気・精密は130.6億円(同月比23.8%増、前月比6.1%増)と再度130億円超に。航空・造船・輸送機械は82.2億円(同月比15.7%減、前月比22.1%減)で、2ヶ月ぶり100億円割れ。
主要3極別ではアジアが475.5億円(同月比8.6%増、前月比0.7%減)と、16カ月連続同月比増、15カ月連続400億円超と堅調持続。東アジアは353.5億円(同月比4.2%増)で、このうち中国は319.5億円(同月比8.3%増、前月比0.7%減)と同月比15ヶ月連続増加。一般機械112.8億円(15.2%増)、自動車102.2億円(34.6%増)とBYDなどのEV投資継続が寄与。電気・精密は65.7億円(24.7%増)。全体として中国の工作機械NC化向上促進への補助金政策継続が支えている。その他アジアは122.0億円(23.7%増)で、インドが61.11億円(22.5%増)、ベトナムが29.3億円(2.5倍)と2ヶ月連続で29億円台となり、中国代替需要増などが寄与している模様で大口受注が続いた。
北米は267.1億円(同期比0.9%減、前月比5.4%減)。このうちアメリカは237.9億円(同月比3.6%増、前月比4.6%減)と6カ月連続同月比増加。米国主要4業種は一般機械75.1億円(39.5%増)と建機向け大型特需が継続、自動車は22.4億円(43.0%増)とトランプ影響でICE(内燃機関)向け受注の押上げも、ほかが一服し2ヶ月連続30億円割れ。電気・精密は16.7億円(10.6%減)ながら4ヶ月ぶりに15億円超え。なおメキシコが18.04億円(26.9%減)とトランプ関税問題が再度不透明感から反動減、2月の9.97億円以来の低水準に。カナダは11.18億円(25.9%減)とトランプ関税の影響が継続している模様。
欧州は164.4億円(同月比11.8%増、前月比3.3%増)と19ヶ月ぶりに同月比増、3ヶ月連続前月比増となった。ドイツ34.4億円(同月比6.7%減)にとどまるも、イタリアは25.5億円(同月比33.0%増)、イギリス18.5億円(57.8%増)などとなっている。19ヶ月ぶりに増加となったものの、国別、月別の跛行色がある。主要業種4業種では自動車を除き同月比増に。一般機械が46.8億円(4.8%増)、3ヶ月連続50億円割れ、自動車は19.0億円(11.3%減)と8カ月連続の20億円割れでEV不況の影響が大きい。航空・造船・輸送用機械は17.1億円(25.3%増)と防衛向けが好調だったが、4カ月連続20億円割れ。
外需全体ではアジアが牽引しているものの伸び率は1ケタ、EUが同月比プラスに転ずるも率は小さく、米国はトランプ関税がプラスに働いている模様も息切れ気味。全体では4ヶ月連続で1000億円割れとなり、世界景気の不透明感と重なり伸び率の低調さが気になる。
内需354.5億円(同月比0.7%減、前月比11.0%減)と4カ月連続400億円割れ
内需は354.5億円(同月比0.7%減、前月比11.0%減)と4カ月連続400億円割れ。主要4業種は同月比、前月比で自動車、航空機・造船・輸送用機械が増加した。一般機械は136.1億円(同月比12.2%減、前月比18.4%減)と、発電向けなど堅調も総じて低調で、5ヶ月ぶりに140億円割れとなった。また前月比では補助金影響が剥落したことも影響した模様。自動車は80.3億円(同月比26.0%増、前月比15.9%増)とトランプ関税影響継続も老朽化対策更新受注が寄与。電気・精密は40.3億円(同月比22.7%減、前月比31.2%減)と、半導体向けが伸び悩み、その他は総じて低調。航空機・造船・輸送用機械は22.7億円(同月比65.4%増、前月比30.7%増)と航空関連、鉄道車両、港湾輸送設備向けなどが寄与した。
全体としてトランプ関税が一応決着、躊躇していた先からの受注回復の兆し、老朽化設備の不具合からの受注なども散見される。ただし自動車は依然として関税実行時期が不透明で、EVの不透明が継続、当月の増加は継続性が疑問で、受注の本格回復には時間を要する。
7月販売2.4%増1202億円、受注残10.9%減7251億円は26ヶ月連続同月比減
7月販売は1201.7億円(同月比2.4%増)と2ヶ月連続増加。受注残高は7251億円(同期比10.9%減)と3ヶ月連続7000億円乗せも26ヶ月連続同月比減少している。
7月工作機械4社受注16.2%増、4社合計は同月比14ヶ月連続増加
日刊工業新聞が集計している工作機械主要4社の7月受注が8/14に発表された。4社合計で343.4億円(16.2%増)と、14ヶ月連続同月比増加となった。各社輸出が増加し、国内はツガミを除き減少、全体では2ヶ月ぶりに2ケタの伸びに回帰した。
オークマは144.04億円(16.9%増)と10ヶ月連続同月増で、このうち輸出が102.44億円(27.9%増)と中国で半導体製造装置、風力、一般機械向けが増加、米国はエネルギー。航空宇宙、石油・ガス、医療向けが好調で、10ヶ月連続増加。一方、国内は41.6億円(3.5%減)と2ヶ月連続同月比減少となった。
牧野フライスも88.84億円(4.2%増)と13ヶ月連続同月比増加。輸出が68.52億円(16.2%増)となり12カ月連続増加、中国でNEV関連に加え自動車関連金型向けが増加している。国内は20.32億円(22.8%減)と3ヶ月連続同月比減少した。
芝浦機械は24.41億円(83.8%増)で、国内が7.78億円(18.7%減)も輸出が16.63億円(4.5倍)と北米で鉱山・発電用タービン向けで大型工作機械が増加、中国向けでは風力発電、産業機械向けが増加、国内は見送り続く。
ツガミは86.11億円(16.6%増)で、輸出が80.14億円(17.6%増)と高水準を維持している。国内はプラスも依然水準が低く低調とのこと。
全体として引き続き工業会の伸びを上回っている。これは国内向けが厳しいものの、複合機、高機能機、大型機、米国、中国に強みを持つなどで差別化できていることが要因。一方、全体では専用機や中小企業向けなど主力の工作機械会社は受注低迷するなど業種内格差が広がっている。
出所:日本工作機械工業会8月受注発表資料、日刊工業新聞社掲載4社受注よりアイアールユニバース加工
(H.Mirai)