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中国やインドから登壇、若手スタートアップも登場ーー第12回BS

2025/09/26 12:13
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中国やインドから登壇、若手スタートアップも登場ーー第12回BS

講演するPatrick Xu(パトリック・シュウ)氏

 

 IRUNIVERSEは9月25日、東京国際フォーラム(東京・千代田)で、「第12回バッテリーサミット」を開催した。前半部分から4名の講演者の講演内容を紹介する。

 

■「Market data and trends Following  implementation of Importad Export for Black Mass」

SMM(上海有色網)新エネルギー事業部 キーアカウントマネージャー  Patrick Xu(パトリック・シュウ)氏

 

 SMMは中国の金属情報プロバイダー大手。中国の金属市場について詳細な情報を持つ。今回はデータの希少なブラックマスの貿易に関する話題を取り上げた。

 前提として、ブラックマスは使用済み電池からリサイクル目的で抽出される廃棄部原料のことだ。ここからニッケルやコバルト、リチウムなどの金属を抽出あるいはブラックマス自体を精製して新たな電池として活用できる。SMMによると、2020年ごろから主に電気自動車(EV)向けにリチウムイオン電池産業が拡大し、現在では産業廃棄物の6割近くを電池由来が占める。中国では、このうち多くがリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池だ。

 興味深いのは、LFP由来の廃棄電池の方が、以前からEV用電池として使われてきた三元系電池よりも、リサイクルコスト面で安定しているとの指摘だった。それは含有する金属の価格変動に左右されるためで、近年はバージン金属価格でリチウム価格に比べコバルト価格の変動が大きいが、LFPはコバルトを含まないため廃棄物時点でも安定した価格を保つことができる。逆に言えば、ブラックマスになった場合、コバルトによる価格変動をリチウムが下支えする構図となる。

 一方、貿易については、ブラックマスの規格が国によって違い、ニッケルやコバルトの含有量が一定水準を超えないとブラックマスとして輸入を認めない国が多い。その点で、例えばコバルトの含有量が欧米日韓は8割近くとする反面、東南アジアは6割程度であり、中国企業の貿易相手としては東南アジアの方がやりやすい現実があるとの話だった。

 一方、中国は8月にブラックマスの輸入を解禁した。

 

関連記事: 中国、ブラックマスの輸入を解禁へ――8月から正式施行

 

 この件について、シュウ氏は「短期的には他国から中国への輸入が増えるだろうが、中長期での中国ブラックマス市場への影響は限定的と思う」との見方を示した。

 

■「中国におけるLFPバッテリーのリサイクルについて」

Ganzhou Longkai Technology Co., LTD 国際事業部長 Feng Zizhen氏

 

 

 3人目の登壇は中国の電池リサイクル企業である贛州龍凱科技(Ganzhou Longkai Technology Co., LTD)からFeng氏。同社は江西省贛州市の鉱業パークに本社があり、主に電池廃材から炭酸リチウムを抽出する事業を展開する。2019年に設立したばかりの若い会社だ。

 炭酸リチウムは前述したEV向けLFP電池の主材料となる。同社は「車から車にリサイクル」を目指し、粗製炭酸リチウムなどから純度99..6%の電池グレード炭酸リチウムを抽出することに成功した。この工程で電池セルを放電せず、直接に粉砕・加工できる技術を持つ。

 会場からは、同社の生産能力について、原材料8万トンに対する製品の抽出量が1.5万トンに過ぎないのかとの指摘があり、炭酸リチウム以外の製品生産についての質問があった。これについてFeng氏は生産比率は再度確認したいと答えた上で、「銅やアルミなどブラックマスから抽出できる他の金属の生産にも前向きだ」と話した。同社は現在、工場の増築を進めているという。

 Feng氏によると、原材料の調達も現在の問題点の1つ。LFP電池由来のブラックマスは、中国ではまだ量が少ないという。韓国からの輸入品も使っているが、三元系電池のブラックマスは規制により輸入ができず、増産需要に原材料調達が追い付かない面があるという。ただ、中国でEV普及が急ピッチで進む中、Feng氏は「LFPブラックマスは将来必ず増える」と話した。

 

■「The situation of lead and Lithium\ion Battery Recycling in India」

MRAI(Material Recycling Association of India)事務局長 Amar Singh氏

 

 

 続いての登壇はインドから、金属リサイクル協会(MRAI)事務局長のSingh氏。IR Universeのセミナーには、6月25日に開催した「自動車リサイクルサミットⅣ in 東京」に続いての登場となった。

 MRAIは世界に会員1700人超を抱える大型業界団体で、インド政府とも連携する。インドではリサイクル事業を手掛ける企業は多いが、政府系が4割、民間企業が6割を占める。Singh氏によると、民間企業は中小から零細まで玉石混交で、環境保護面などで問題を多く抱えると指摘した。

 それは産業構造内にも見て取れ、例えば鉛蓄電池のリサイクル企業は、800社超のうち15-20社に過ぎない大手が産業全体の5割超を占める。また、LFPリサイクルを手掛ける企業はまだ社未満で、この産業への大手の参入はまだないとの説明だった。かなり産業内の状況が混とんとしており、政府系と民間企業の水準の差も大きい様子が伺える。実際、記者が後にSingh氏に「インド投資のネックは電力物流などのインフラと思うが」と尋ねたところ、「政府系の機関・企業と取引する分には、インフラ面での心配はない」との答えだった。

 インドも単純な資源輸出国からの転換を目指す。現在はブラックマスを海外に輸出しているが、政府の方針としては海外流出の阻止と循環経済の目標達成を目指し、自国内の処理産業も育てる考えだ。会場からは、具体的な日本からの投資はあるのかとの質問があった。Singh氏は「最近はやや少ないが、それでもインドの上場企業に対するアプローチなどを聞いている」と答えた。

 

■「GreenBatteryのビジョンと戦略」 

株式会社Greenbattery COO藤井理巧氏

 

 

 外国からの登壇が続いた後で、日本のスタートアップが登場した。Greenbatteryは2024年12月に設立したばかりの蓄電池設置販売スタートアップ。創立ほやほやながら東京・港の本社のほかに東北と九州に支社を持つ。9月17~19日に幕張メッセで開催された国際展示会「第24回SMART ENERGY WEEK」にも出展した。

 事業内容は系統用蓄電池の建設補助だ。国内投資家と連携し、用地の取得から蓄電池の設置・運用、行政への申請代行までを手掛ける。即金での決済も取り入れ、ワンストップでスピーディーに案件を進めるのが特長という。

 会社節理の背景にあるのは危機感だ。日本のエネルギー自給率は15%程度で、このうち7割弱を占める化石燃料は99%を輸入に頼る。一方で、地政学的リスクの高まりや世界の国際紛争の増加、日本の貿易赤字などを考えると、藤井氏は「エネルギー問題に取り組むべきとの考えに至った」と話した。目標として「エネルギーの自立」を、ヴィジョンに「再エネルギー余剰の100%活用」、ミッションに「全国に4ギガワット時(Gwh)規模の蓄電池を普及させる」をそれぞれ掲げる。将来的には米新興企業向けナスダック株式市場への上場を目指すとしている。

 歩みを始めたばかりで、表立った実績はまだ出ていない同社。それでも会場には、日本の若者の志の高さに感嘆するムードが広がった。

 

(IR Universe Kure)

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