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元鉄鋼マンのつぶやき#134 ドジャーズ、フィリーズ、かずさマジック

2025/10/08 10:30 FREE
元鉄鋼マンのつぶやき#134 ドジャーズ、フィリーズ、かずさマジック

 大リーグ(MLB)のポストシーズンの白熱した試合が面白く、目を離せません。日本のプロ野球もそれなりに面白いのですが、時速160kmの速球を軽々と打ち返すプレーなどの見応えある場面はやはり大リーグに限る・・と思います。

 ドジャーズとフィリーズ、どちらも名門チームですが、その歴史は微妙に違います。そしてその名前も面白いのです。フィリーズはまさにペンシルベニア州の州都フィラデルフィアの、フィラデルフィアっ子という意味のフィリーズですし、そのロゴマークは有名なフィラデルフィアの自由の鐘です。火災の時の放水で割れたヒビもちゃんとマークに掛かれています。

一方、ドジャーズはもともと「よける人」という意味だそうです。

どうしてそんな名前なのか?と言えば、ドジャーズがニューヨークに本拠地を置き、ブルックリンドジャーズという名前だった頃に遡ります。その頃のドジャーズは大リーグで初めて黒人選手を迎え入れ、彼の大活躍で初のワールドチャンピオンになったことで有名です。今、ドジャーズは日本人選手の大活躍で好成績をあげている訳で、新しい戦力を迎え入れることで勝利するというのはこの球団の伝統なのかも知れません。

そのドジャーズのブルックリンの球場は大通りに面していて、その通りには路面電車が走っていました。つまり、選手も観客もアンパイアも、その路面電車を巧みによけながら、球場に通った・・ということで「よける人」つまりドジャーズなのだそうです。ドッジボールのドッジと同じです。

そう考えると、アメリカのプロチームの名前は面白いなぁ・・と思います。

ヒューストンはNASAの本部がありますから、宇宙飛行士にちなんでヒューストン・アストロズです。シアトルは港町ですから、海の男ということでシアトル・マリナーズは当然です。ウィスコンシン州ミルウォーキーはビールの生産で有名な町ですから、ミルウォーキー・ブリュワーズと言う名前はぴったりです。ミネソタ州の州都ミネアポリスとセントポールは双子都市と呼ばれ、ここを本拠地とする球団がミネソタ・ツインズなのは頷けます。

しかし理解に苦しむ名前もあります。ペンシルベニア州のもうひとつの大リーグチームであるピッツバーグ・パイレーツは海の無い山間の都市なのに海賊の名前が付いています。ピッツバーグ・パイレーツにはちょっと個人的な思い入れがありますが、それは別稿に譲ります。

ピッツバーグには大リーグの野球チームの他に、有名なアメリカンフットボール(NFL)のチームがあります。ピッツバーグ・スティーラーズです。一瞬泥棒の集団か?と思いますが、勿論そうではなく、鋼都ピッツバーグにちなんだ鋼の男の集団という意味です。

随分昔ですが、筆者がUSスチールの幹部と雑談した時、話題に困ってスポーツの話をしたことがあります。筆者が大リーグのピッツバーグ・パイレーツのファンだと語ると、相手は大いに喜び「ではフットボールのピッツバーグ・スティーラーズは好きか?」と尋ねられ、アメリカンフットボールを何も知らない筆者は答えに困り「済みません。アメリカンフットボールは日本ではなじみが無いので分かりません」と言いました。それを聞いて相手は大いに落胆したようで、そんなことならスポーツの話題など出さなければよかった・・と思いました。ピッツバーグは今でもUSスチールの本社があり、彼らのホームタウンです。

アメリカンフットボールのチーム名にも特産品や主要産業の名前が登場します。ウィスコンシン州グリーンベイはミシガン湖に面した小さな町ですが、そこには大きな缶詰工場があります。だからチーム名は、グリーンベイ・パッカーズです。ウィスコンシン州は酪農も盛んで、チーズも特産品です。だからチームカラーは緑と黄色(チーズの色)で、ファンは頭の上にチーズのかけら(の模型)を付けて応援します。

ことほど左様に、大リーグのチームやアメリカンフットボールのチームは地域に根付いており、ローカル色が強いのです。

翻って、日本のプロ野球のチームはどうか?と考えると、チーム名に地元愛が感じられません。チーム名に地元を示す名前が入っているとすれば、広島カープ(鯉城と言われる広島城にちなむ)ぐらいです。中日ドラゴンズのドラゴンが名古屋城のシャチホコ由来(かつての名前は金鯱だった)とすれば、それも含まれますが・・。

ジャイアンツもタイガーズも米国の大リーグの球団の名前をそのまま付けたみたいですし、ジャイアンツはユニフォームのデザインもサンフランシスコ・ジャイアンツに似ています。ユニフォームのデザインと言えば、中日ドラゴンズのそれは、一時期ドジャーズのユニフォームにそっくりでしたし、広島カープのユニフォームもシンシナチ・レッズのそれにそっくりでした。頭文字が共通だから、まねして良いというものでもないでしょう。広島ファンは、赤ヘル軍団と称し、赤はカープオリジナルのチームカラーだと言いますが、シンシナチの人は、あれはレッズの偽物だと思うかも知れません。

日本のプロ野球は実力的にも大リーグに近い存在になったのですから、大谷翔平が言う通り「憧れるのはもうやめましょう」。何時までも大リーグの真似をしているようでは、亜流でしかありえません。

Jリーグのサッカーチームとなると、その名前も意味不明で、何語なのかも分からず国籍不明になります。サンフレッチェが、毛利元就の三本の矢から来ていて、サンは日本語の三、フレッチェがイタリア語の矢だと聞いても、首を傾げるばかりです。ガンバ大阪のガンバは、イタリア語の「足」と、日本語の「頑張ろう」のかけことばというのは分かりますが、何だか「俺はイタリア語を知っているぞ」と自慢しているようで、響きません。

手前味噌になりますが、筆者のホームタウンの鹿島アントラーズは、鹿の角がスクラムを組む有り様のようで、まさに地元に因んでいますし、力強さを感じます。一方、水戸ホーリーホックはタチアオイの意味ですが、これは水戸黄門の「葵の印籠」から名付けたもので思わず笑ってしまいます。まあ、地元志向の名前ではありますが・・。

チーム名の話になるとキリがありません。

ここで筆者が考えるのは、本来、地域の代表であるはすの野球チームが、大企業の広告宣伝の道具になって集う都市対抗野球です。

筆者の友人は都市対抗野球に参加するノンプロのチームを揶揄して「プライドはプロ、技量はアマチュア、根性はサラリーマン」と言っていました。当時サラリーマンだった筆者は「サラリーマンで何が悪い!」と食って掛かった記憶があります。

筆者が注目するのは、新日鉄と住金が合併したあとの都市対抗野球がどうなったかです。都市対抗野球に出場するチームの実力は、母体の企業の財務力を微妙に反映します。そして企業が吸収合併された後にその力関係がどう反映するのかに興味があるのです。

住友金属鹿島(当時)は茨城県を代表するチームとして都市対抗野球に何度も参加しています。一方、新日鉄君津(当時)も強豪で今は「かずさマジック」というチーム名もあります。

互いにライバルだった鹿島製鉄所と君津製鉄所は融合が進み、鹿島の生産設備は縮小・合理化の一途を辿っています。それは仕方ありません。しかし千葉県と茨城県に分かれる野球チームは統合する訳にはいきません。これからどうするのか?鹿嶋地区の生産規模が縮小していき、高炉も止まれば、野球チームは茨城県から撤退し「かずさマジック」に吸収されるしかないでしょう。その際には「かずさマジック」などという小さな名前は替えるべきです。確かに君津は上総(かずさ)にありますが、千葉県代表として、東京ドームに行くのなら、下総(しもうさ)、安房(あわ)も包含した名前にすべきで「千葉マジック」にすべきでしょう。でもマジックという名前も、何やら奇策に頼るようでヘンテコです。どうしたらいいでしょうか?

日本製鉄は、現在、USスチールのテコ入れに頭を悩ましています。ホームタウンであるピッツバーグの市民を慰撫する必要もあります。ここはピッツバーグ市に敬意を表して、日本製鉄君津の球団名をパイレーツにするというのもいいでしょう。

すると球団名は「千葉パイレーツ」になります。あれっ?どこかで聞いた名前ですね。どこで聞いたのか・・・。なんだか昭和の漫画の臭いがします。

えっ?日本製鉄の経営陣は、そんな小さなことで悩んでいる暇は無いってことですか? もっと、大きな問題、つまりトランプ関税をどう回避するか?全米鉄鋼労組の要求をどうかわすか? ホワイトハウスが握る黄金株の行使をどう避けるか?に悩んでいるのですか?

それならやっぱりチーム名は「よける人」で、ドジャーズに決まりです。「かずさマジック」改め「千葉ドジャーズ」です。何だか大谷翔平が怒りそうですが・・・。

 

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久世寿(Que sais-je)

茨城県在住で60代後半。昭和を懐かしむ世代。大学と大学院では振動工学と人間工学、製鉄所時代は鉄鋼の凝固、引退後は再び大学院で和漢比較文学研究を学び、いまなお勉強中の未熟者です。約20年間を製鉄所で過ごしましたが、その間とその後、米国、英国、中国でも暮らしました。その頃の思い出や雑学を元に書いております。

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