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米国でのEV充電の問題点

2025/10/10 17:27
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電気自動車供給装置 (EVSE)、つまりは充電ステーション、充電ポイント、充電ドックとも呼ばれるが、その運用・保守に特化した初の企業として、電力会社、ネットワーク事業者、設置業者といったバリューチェーン全体を支援する米国のChargerHelpが最近報告書を発表した。

充電試行の約3分の1が失敗

それによると、現在、アメリカ人の64%が充電ステーションから2マイル(約3.2km)以内に居住しているにもかかわらず、充電試行の約3分の1が失敗していることが明らかになった。 2025年版「EV充電信頼性レポート」によると、充電インフラの稼働率は98.7%から99%であるにもかかわらず、実際に充電に難なく成功するのはわずか71%にとどまっている。

 

初回充電成功率

このレポートは、2,400基の充電器における10万回以上の充電セッションを分析し、稼働率統計に過度な焦点を当てるのではなく、初回充電成功率(the first-time charge success rate )こそがドライバー体験をより正確に測る指標であると主張している。

 

ChargerHelpのCEOであるカメアル・テリー氏は、「稼働率は充電器が利用可能かどうかは教えてくれるが、ドライバーが実際に最初にプラグを差し込んで充電できるかどうかは分からない。初回充電成功率は真のドライバー体験を捉えており、この指標を重視することで、業界は利用可能性と使いやすさのギャップを埋め、普及に必要な信頼を築くことができる。」と述べた。

 

ソフトの問題点と互換性

EV充電の複雑さは、複数のソフトウェアシステムが連携して動作する必要があることに起因している。「充電ステーションと電気自動車は文字通りコンピューター。」とテリー氏は語る。

 

重要なのは、こうしたコンピューター同士の握手と、ソフトウェア同士が互いに理解しえない場合があることだ。

これらのシステムがファームウェアやソフトウェアのアップデートを送信すると、互換性の問題が発生する可能性がある。車両自体、つまりバッテリー管理システムが、充電ステーションが何を求めているのかを実際には理解していない可能性もあることがある。

 

例えば、トラック・ドライバーが緑色の「利用可能」インジケーターが表示されているステーションに到着したとしても、プラグを差し込んだ後、ステーションが認証を開始できなかったり、認証プロセスを開始しても充電を完了せずに利用可能画面に戻ったりすることがある。

 

テスラの垂直統合システムとは異なり、ほとんどの充電インフラは、車両、ハードウェア、充電管理システム、決済処理、コネクタ向けに複数の企業が個別のソフトウェアコンポーネントを開発している。この断片化により、相互運用性の課題が生じ、消費者に直接的な影響を与えているようだ。

 

インフラの老朽化

レポートでは、インフラの老朽化の傾向も明らかにされている。新設ステーションの成功率は、1年後には85%に、3年後には約70%にまで低下するといわれている。これは、古いハードウェアを大規模な機器交換なしに新しいプロトコルにアップグレードできないためによく発生する。

 

旧来のステーションでは、ユニット自体の構造上、新しいプロトコルにアップグレードできない部分があり、実際には、ユニットをアップデートするために、新しい機器を導入する必要があるようだ。

 

これは、従来のインフラを使用している充電サイト所有者にとって、新たな問題となりうる。新しい車両は設置前に既存の充電ステーションでテストされるが、古い充電インフラではテストされないのが一般的で、互換性のギャップが生じる可能性があります。

 

規制監督の問題点

もう一つの課題は、規制監督の限界にあるようだ。州当局による定期的な検査を受けるガソリンスタンドとは異なり、EV充電ステーションは規制監督が限られている。計量・計測部門は公的に設置された充電ステーションを監視しているが、その主な焦点は消費者が支払った電気を確実に受け取れるようにすることであり、システム全体の信頼性ではない。

 

今後の改善点

報告書は、業界にとって3つの重要な改善点を推奨している。初回充電成功率を主要な指標として採用すること、短期的なハードウェアの修正に頼るのではなく、予防保守プログラムを実施すること、そしてプロトコルを標準化しデータを共有するための業界協力体制を確立すること。

 

だが、テリー氏は将来について楽観的だ。「これは解決可能な問題だ。ガソリン車でさえ、馬車からガソリン車への切り替えは容易ではなかった。誰かが解決策を適宜見つけだした。私たちは道路と車両を手に入れ、今、この新たな移行期にいる。」

 

 

(IRuniverse H.Nagai)

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 

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