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信越化学:希土類価格の上昇は同社にとってはプラス。何故、同社の希土類磁石が強いのか考察。

2025/10/26 19:50
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信越化学:希土類価格の上昇は同社にとってはプラス。何故、同社の希土類磁石が強いのか考察。

 10月24日15時半、信越化学は26/3期2Qの決算を発表し、その後決算説明会を開催した。説明に使われた資料は決算短信に添付されている。今回、同社の磁石事業についてQ&Aを抜粋した。

 

〇Q&A

 同社の希土類磁石は電子材料セグメントに仕分けされ久しく、具体的に表面に出てくることが無くなったが、決算説明会においてQ&Aがあったので取り上げる。

 

Q、同社はレアアースの材料を保有しているため、期ズレで値段が上がるのは同社にポジティブであるか?

A、ずいぶん我慢して希土類を備蓄してきた。ただ、備蓄も限りがあるため、うまく使わなければいけない。販売価格の上昇がどのように収益に反映されるかは、わからないがトータルはポジティブであろう。

 

〇同社の希土類磁石は自動車用、HDD用などで強いのはなぜか?考察してみた。

 

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 そもそも希土類磁石(厳密にはネオジウム磁石のこと)は、旧住友特殊金属が発明(開発者は佐川氏)した、世界最強の磁石であったため、他社が、希土類磁石を生産販売する際は、旧住友特殊に特許料を支払う必要がった。希土類磁石の基本特許は旧NEOMAX時代、旧日立金属に2006年に買収されて以降、2018年頃まで特許料を支払っていた。ただ、同業他社の特許料の支払いは、旧住友特殊金属から磁石用の合金を調達することで、特許料の支払いを行っていたが、同社は、自前で原料の希土類を調達していたため、旧住友特殊金属から合金を調達すること無く、同社の売上数量の何%を特許料として支払っていた経緯がある。

 

 他社は合金を調達していたため、希土類磁石の高性能化には限界があったが、同社は自前で合金を製造していたことで高性能化に対応できた。その成果を発揮したのがHEV向けだった。HEV向けはエンジンの横にモータを取りつけるため、磁石の耐熱性が求められた。希土類磁石はもともと熱に弱く、その耐熱性に問題があったが、同社が世界で初めて粒界拡散合金法を開発し、その問題を解決した。同社の合金製造方法である二合金法が役立ったと聞いている。

 

 余談ではあるが、トヨタが97年に世界初のHEVであるプリウスを販売した際、駆動用モータは旧住友特殊金属が独占していた。ちなみに、ホンダの初HEVであるインサイトはボンド磁石で長年取引のあったTDKが100%供給していたが、構造上モータの回転数が上がらなかったので、ホンダはモータの構造をSPMからトヨタと同じIPMに変更、同時に使用する磁石はTDKから旧住友徳金属に切り替わった。これは、構造を切り替えることで磁石の性能が求められたため、TDKでは対応できなかった。

 

 HDDに使われるVCMでは同社と旧住友特殊金属(当時はNEOMAX)が市場を二分していたが、HEVに関しては、同社の存在感が低かった。HEV用で同社が台頭してきたのは2005年にトヨタが市場投入したHEVのクルガーとハリヤーに、同社の希土類磁石が駆動用として初採用されて以降、同社のHEV向けに対する存在感が増していった。両車には高出力ハイブリッドシステム(THS)を進化させたものが搭載され、そこに同社製磁石が使われた。以来、同社のHEV向けは成長を続け旧NEOMAXとトップシェアを競うまでに成長した。

 

 一方、旧NEOMAXは HEV向けでも営業利益率2割を稼ぎ出していたが、旧日立金属の子会社化に伴いその利益率は7-8%まで低下。旧日立金属が経営権を握ったことで希土類の戦略が変わったことが理由だ。また、高収益(営業利益率(5割:IRU推測)を上げていたMRI(永久磁石タイプ)も、日立ブランに変わったことで、ライバルであるGE(超伝導タイプ)の販売攻勢にあい永久磁石タイプの市場自体のシェアが縮小、磁石事業における収益柱を失った。旧日立金属の傘下になったことでNEOMAX(製品ブランド名)が低迷、一方で、同社の希土類磁石市場における存在感が高まり現在に至っている。

 ただ、基本特許が切れて以降、中国の存在感が増していき、東日本大震災以降には、希土類磁石全体の生産量で中国に抜かれ、その順位は現在も変わっていない。ただ、高機能磁石については依然日本メーカーがトップであると信じたい。この点については別の機会に触れたいと思う。

 

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(IRuniverse 井上 康)

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