11月25日、IRUNIVERSE主催の「第6回サーキュラーエコノミーシンポジウム」を愛知県名古屋市内で開催。国内外で活躍するサーキュラーエコノミー企業や行政の関係者ら13人が講師として登壇し、聴講者も100人ほど集まり、日本のCE(サーキュラーエコノミー)について議論を交わした。
株式会社PFU RAPTOR事業開発部 商品開発課 シニアマネージャー 本江 雅信氏:「廃棄物分別特化AIエンジンRaptor VISIONを搭載したLIB検知システムについて」
株式会社PFUはグループ会社であるリコーは、廃棄物分別の自動化を支えるAIエンジン「Raptor VISION」シリーズを展開することで廃棄物処理業界の自動化を推し進め、持続可能な社会実現に貢献している。特にイメージスキャナーで世界シェア1位を16年連続で獲得しており、光学認識技術・AI技術を自社で蓄積してきた点が強みである。この技術資産を活かし、廃棄物処理分野に特化した画像認識AIの提供に乗り出した。
Raptor VISIONのラインアップは、瓶の色別AI「Raptor VISION Bottle」と、リチウムイオンバッテリー(LIB)混入を検知する「Raptor VISION Battery」の2つである。Raptor VISION Bottleは、自治体の資源ごみ選別において依然として手作業に頼る瓶の色選別工程の自動化を狙う。カメラ画像から瓶の位置や色を高精度に認識し、ロボットと連携して透明・茶色・その他といった色別ピッキングを可能にする。認識精度は実績値で99.99%と高く、関連特許19件、現場データを使ったモデルアップデートサービス、ダッシュボード分析機能など、運用性を高める仕組みも揃える。2024年には青森県の青南商事で導入され、処理量の半分を自動化し省力化に寄与した。
一方、Raptor VISION Batteryは、全国で深刻化するリチウムイオンバッテリー混入火災問題に対応するものである。不燃ごみに紛れ込んだリチウムイオンバッテリーが破砕工程で発火し、町田市では過去3度の大規模火災が発生、復旧費は約14億円超にのぼった。市民啓発や収集時の目視確認だけでは限界がある中、PFUはX線透過画像と独自AIを組み合わせた検知システムを開発した。デュアルエナジーX線と独自の認識アルゴリズムにより素材情報を含む画像を取得し、光・音・投影で作業者に通知する仕組みで、確実な除去を支援する。
Raptor VISION Battery は2024年より町田市で実証を重ね、課題抽出を経て大幅な改良を実施しており、NEDOの懸賞金プログラムではグランプリを獲得した。2025年8月に町田市で実施した2回目の実証実験では、2,287kgの不燃ごみに混入したリチウムイオンバッテリーの中に電池が266個混入しており(内リチウムイオン電池37個)、収集段階で除去されたのは4割にとどまるといった現状が明らかとなった。これに対しRaptor VISION Batteryを導入した結果、混入電池の検知率は84%、誤検知率5%となり「円筒形電池では高精度を示したが、パウチ型電池には継続開発が必要」といった新たな課題が浮き彫りになった。
同社は2024年10月、Raptor VISION BatteryのAIエンジンを正式に製品化した。共創パートナーであるIHI検査計測は、容器包装プラスチック向け検知装置の販売も開始しており、一般廃棄物向け装置は来年度の製品化を予定している。廃棄物処理の自動化と安全性向上に向け、Raptor VISIONシリーズの市場展開はさらに進む見通しである
PwCアドバイザリー合同会社 森隼人氏&末廣多恵子氏:「サーキュラーエコノミー ~M&Aなどを通じた新しい循環の創造」
PwCアドバイザリー合同会社のパートナーである森勇人氏は、M&Aアドバイザリーの豊富な経験を背景に、サーキュラーエコノミーの市場動向と企業戦略を俯瞰した。同社は世界136カ国に約36万人を擁するPwCグローバルネットワークの一員であり、監査・税務・法務に加え、ディール、官公庁支援など幅広い専門領域を有している。
サーキュラーエコノミー市場は、2025年から2029年に向けて平均11.4%成長する見通しである。市場拡大の要因としては、(1)政策動向、(2)技術革新、(3)消費者・社会意識の変化、(4)企業行動の変容という4つのドライバーが関係している。特に欧州ではELV規制、バッテリー規則などといった制度整備が進み、生産者責任とサプライチェーンの透明性確保が求められている。
動脈産業(製造業)と静脈産業(廃棄物・リサイクル)双方で、製品設計の循環化、再生材調達、上流領域への展開などの取り組みが加速している。これらの連携を強化するM&Aも増加傾向にあり、自前構築が難しい領域で“時間を買う”という戦略的買収が増えている。近年では、日系素材メーカーによる世界最大級タングステンリサイクラーの買収が象徴例として挙げられた。
EUバッテリー規則による主要金属の再資源化率義務化が進む中、上流権益の確保やリサイクル企業の買収は今後さらに加速する見通しである。森氏は規制対応やESGリスク評価の重要性を指摘し、PwCとしてESGデューデリジェンスを体系化して支援していると締め括った。
続いてシニアマネージャーの末廣氏が登壇し、静脈産業の市場特性と、動脈産業との連携によるサーキュラー化の深化について解説した。廃棄物処理・リサイクル業は過去10年間で年平均3.2%と安定成長を続けるが、国内の静脈企業は売上高10億円以下の中小企業がマジョリティを占めており、売上10億円超の企業はわずか数%にとどまっているのが現状だ。
国内静脈企業のM&A企業の動向は、処分場容量の確保、エリア拡大、金属・LIBリサイクル領域の取得などと多様化しているが、件数は年十数件程度であり、今後も伸長の余地が大きい。海外の大手静脈企業が長年のM&A蓄積で巨大化してきた歴史を踏まえ、国内企業も戦略的な統合が不可避としている。
動脈×静脈の連携事例として、ペットボトル水平リサイクルで自治体と飲料メーカーが協働した回収・再生スキームが拡大している。また、自動車業界ではELV規制に対応するため、サプライチェーン構築や他社連携が進む。このように、高度な安全性が求められる部品にも再生材活用の議論が広がり、制度対応・技術評価の支援ニーズが高まっているという。
末廣氏は、サーキュラーエコノミーが政策や技術だけでなく社会意識も背景に確実に進展する潮流であると強調。動脈・静脈連携、M&A活用、再生材供給網の整備、規制対応とESGリスク管理こそが企業価値創造の鍵になると発表を締めくくった。
(IRuniverse Midori Fushimi)