国際調査会社の英プロジェクト・ブルー(Project Blue、本社:ロンドン)は12月4日、東京都中央区でバッテリー原材料産業を対象にした専門フォーラム「Critical Materials Forum – Tokyo 2025」 を開催した。コーヒーブレイクを挟み第二部では、電気自動車(EV)完成車の市況やリサイクルについての講演があった。
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休憩前に続き、リサーチマネージャーのロバート・バレル博士(Dr.Robert Burrell)と同マネージャーのドミニク・ウェルス(Dominic Wells)氏の両氏がそれぞれ講演した。
■LFPも三元系も需要は伸びる
結論から言うと、車載電池の世界はやはり中国勢が寡占している。これは前駆体やセルなどの部材も同じだ。背景にはまず中国国内のEV需要の大きさがある。2020年-2025年で見ると、EV完成車の販売台数は中国のみ6割増と急ピッチだったが、他の地域では横ばいが続き、世界全体では足踏みした。これについてバレル氏は「それでもEVは長期に普及が進み、需要は2040年までは拡大する」と予想した。
車載向け電池でも中国独自の事情がある。リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池は、中国での普及率は8割を超すが、世界の普及率はやはり3割程度にとどまる。中国以外の国では三元系電池の人気は根強く、「特に韓国での需要が高い。中国産の三元系電池も韓国向けに輸出されている」(バレル氏)という。バレル氏は両電池の先行きについて「LFPも三元系電池も需要は伸びるだろう」と話した。
ではコスト面から見てはどうか。ウェルス氏は「LFPは三元系より方が安く作れる」と話す。差が出るのはコバルトを使用するか否かだ。ウェルス氏は「リチウムはどちらにも使うし、マンガンのコストは無視できる程度のもの」とした上で、「三元系で使用されるコバルトがコスト高要因になっている」と話した。
そんな高価なコバルトだが、LFPの普及が拡大しても需要は根強いようだ。「特に水酸化コバルトに供給不足懸念が根強く、炭酸リチウム価格に影響する可能性がある」(ウェルス氏)という。ウェルス氏は「今後10年間はリチウム、コバルト、ニッケルのいずれも価格は上昇基調だろう」と予想した。
■リサイクル、完成車メーカーが囲い込み
車載向けを中心とした電池リサイクルについても言及があった。現時点ではなかなか収支が均衡しない産業になっている。まず、原料が不足している。バレル氏は「EV販売の伸び悩みにより廃車の発生率も低迷し、まず原材料となるスクラップが出なくなった」と指摘する。さらに米国のインフレ抑制法(IRA)施行でリサイクルの促進を無理に進めたため、「リサイクル品の品質低下も招いた」(バレル氏)。電池リサイクルは中国でも急激に産業が拡大しているが、バレル氏は「中国企業もまだ収支が均衡していない」と指摘した。
現在、進んでいるのは、自動車メーカーによるリサイクルも含めた自動車生産の垂直科化だ。完成車メーカーや受託生産メーカーが電池やリサイクルまでを含めた生産を一元化し、どこかの過程で損失が出ても最終製品であるEV完成車の価格に上乗せできるようにするというものだ。
総じて、中国による電池産業の寡占は原材料から部品、完成車までと強く広く、なかなか崩せるものではないと言える。
バレル氏は「脱中国依存の動きはあり、例えば米国は中国からのリチウムイオン電池の輸入額を2024年の23ドルから2025年に8億2500万ドルまで削減する代わりに、日韓からの輸入を8割超増やした」とサプライチェーンの再編を指摘する。それでも「中国製は価格面で競争力が高い」(バレル氏)。ウェルス氏は「欧米メーカーは太刀打ちできず、今後10年間は中国による寡占が続くだろう」と述べた。
(完)
(IR Universe Kure)