2025 SMM APAC鉛蓄電池産業会議(LABC2025、主催:SMM)が12月4日〜5日の2日間、ベトナム・ホーチミン市で開催された。同会議には世界30カ国以上から約300名の鉛蓄電池産業の主要プレーヤーが参加し、ベトナムの主要企業に加えて、世界の鉱石サプライヤー、電池メーカー、エンドユーザーが集結した。会場では、原材料調達、サプライチェーン最適化、持続可能なリサイクルソリューションの構築など、業界が直面する多様な課題について活発な議論が行われた。
本稿では、会議のブース展示で取材した企業(主に中華系)を紹介する。
SHANDONG JINKELI POWER SOURCES TECHNOLOGY CO., LTD.

SHANDONG JINKELI POWER SOURCES TECHNOLOGY CO., LTD.(山東金科力電源科技有限公司)は、1982年に設立された電池添加剤分野のグローバルリーディング企業であり、本社を中国山東省淄川経済開発区に構えている。同社は中国の淄川、高青およびベトナムに生産拠点を有し、長年に渡って鉛蓄電池を中心とした電池産業向けに高付加価値な添加剤ソリューションを提供してきた。
7つの独立研究所と5つの共同研究開発プラットフォームを持つ同社は、先進的な電池材料、配合技術、新製造プロセスおよび新技術の研究を推進している。製造・品質面では、IATF16949品質マネジメントシステム、リーン生産、デジタル管理を導入し、製品の安定性と信頼性を高水準で確保している。現在、世界30カ国以上で300社を超える顧客と長期的かつ安定したパートナーシップを構築している。
MIRU取材チームはブース担当者(ベトナムの生産拠点担当)にミニインタビューを実施し、以下のコメントを得た。
ベトナムには鉛インゴットを生産するリサイクル工場が約5社存在し、いずれもベトナム政府が発行するリサイクルライセンスを保有している。これらの工場は、首都ハノイから40〜50キロメートルという至近距離にリサイクル生産ラインが立地している点が特徴的である。一方、ハノイ近郊の生産ラインは環境汚染の問題が指摘されており、政府が当該地域の汚染を抑制するため、何らかの対策を講じる可能性があるとの情報があったという。
中国では、北京から数キロ圏内に汚染産業が存在することは想定しがたいが、ベトナムでは都市近郊にリサイクル工場が立地している現状がある。規制や管理が十分かどうかは企業によって差があり、政府、特にハノイ周辺では管理強化が進められているものの、課題は残っている。
同社の鉛インゴットの材料は主に韓国、シンガポール、マレーシアの大手商社、インドなどから購入しているとのこと。同社は鉛材料のクリーンな取引のため、鉛の取引に対するライセンス取得のために費用を支払っているが、違法と合法の線引きは必ずしも明確ではなく、その比率についても正確な把握は難しい状況にあるとのことだ。
鉛インゴットの流通については、基本的にベトナム国内向けであり、海外輸出はほとんど行われていない。一部のベトナム企業は鉛蓄電池を米国へ輸出しているが、昨今の関税は15〜20%と高い水準となっている。こうした状況から、ベトナムは鉛関連製品の輸出国というよりも、むしろ大量の鉛原料を輸入する市場としての性格が強いといえる。
Jiangsu Baolian Gas Co. , Ltd
Jiangsu Baolian Gasは、産業用酸素供給を中核事業とするガスメーカーであり、中国江蘇省蘇州市に拠点を置く。特に主に酸素、水素、炭素回収分野に注力しており、顧客ごとに最適化されたガス供給ソリューションを提供している。酸素は鉛蓄電池をはじめとする各種電池製造工程に不可欠な存在であり、バッテリー産業と高い親和性があることから2025 SMM APAC鉛蓄電池産業会議inホーチミンに参加したとのこと。
同社の事業領域は鉛蓄電池にとどまらず、製紙、水処理、ガラス、鉱物処理など多岐にわたる。特に紙・水処理・鉛酸電池関連は同社にとって規模の大きい主要事業分野であり、各産業の製造工程において酸素を活用することで、反応効率の向上や不純物濃度の低減に貢献している。
海外展開においては、中国国内に加え、すでに韓国市場で複数の取引実績を有しており、鉛蓄電池向けを中心に酸素供給を行っているほか、韓国からの設備や部材の調達も進めているとのこと。一方で、日本市場については、水素関連ビジネスで過去に東京を訪問した経験はあるものの、本格的な市場展開にはいまだ至っていないという。必要となる各種認証制度や参入プロセスへの理解が十分でないことが、その要因の一つとして挙げられる。å
同社は、酸素供給を主軸とするガス企業としての立場を明確にしつつ、水素や炭素回収といった分野にも取り組みながら、鉛蓄電池産業をはじめとする製造業のニーズに応えていく方針である。サービスによってブランドを確立し、協力によって成長を目指すという理念のもと、環境保護と持続可能な産業発展への貢献を志向し、今後は日本を含む国際市場との連携強化を視野に入れているという。
Tangent Trading Ltd
Tangent Trading Ltdは、シンガポールに拠点を置く再生金属分野において高品質なサービスを提供する企業である。強固な財務基盤とグローバルな顧客・サプライヤーネットワークを組み合わせる同社は、2020年よりロンドンに拠点を置く金融・コモディティ分野に強みを持つグローバルな金融サービスグループであるMarex Groupの一員となり、非鉄再生金属の有力トレーダーとして事業を展開している。特に銅およびアルミニウムを中心とした取引を主軸としつつ、鉛を含む非鉄金属全般で国際取引を行っている。
長年にわたり構築してきた国際的なネットワークにより、物流調整から確実な納品、期日どおりの支払いに至るまで、安定性と信頼性の高いサービスを提供している。欧州、北米・南米、アジア、アフリカに広がる主要な供給源との直接的な取引関係と、数十年にわたって培ってきた信頼ネットワークを背景に、安定した調達力を有している。
日本市場との関係も深く、同社は鉛合金インゴットを日本向けに輸出する一方、日本からはブリオンを輸入している。加えて、日本国内の鉛二次精錬事業者とも複数の取引実績を持ち、日系リサイクル・精錬ネットワークとの連携を継続的に強化しているという。
また、チームの豊富な経験と専門知識により、市場動向を先読みし、短期・中期・長期の視点で顧客およびサプライヤーにとって実効性のあるビジネス機会へとつなげている。物流面では、陸上輸送、海上輸送、複合輸送を含む多様な輸送形態に対応し、サプライチェーンの複雑性を包括的に管理することで、顧客の多様な要件に応えている。
Tangent Tradingは、金融力と実務に根差した取引力、そして国際ネットワークを強みに、再生非鉄金属市場における信頼性の高いパートナーとしての地位を確立している。
ブース訪問をして印象的だったのは、東南アジアをはじめとする地域で鉛蓄電池や鉛製品の需要が依然として高く、今後も緩やかながら増加していくとの見方が共有されていた点である。エネルギー転換が進む中にあっても、コストや信頼性の面から鉛蓄電池が担う役割は大きく、当面は実需に支えられた市場が続くと考えられている。
一方で、鉛を取り巻く取引の環境の複雑さも改めて浮き彫りになった。クリーンな取引を重視し、ライセンス取得や管理体制の整備に力を入れる企業がある一方で、実務の現場では違法業者と合法業者の線引きが必ずしも明確ではなく、その比率を正確に把握することが難しいという課題も聞かれた。特に新興国市場では、制度や運用のばらつきが残っており、企業の自主的な取り組みだけでは対応しきれない領域が存在している。
各社が環境配慮や法令順守を前面に打ち出し、長期的な視点で取り組みを進めていく中で、鉛市場がどのように持続可能性と実需のバランスを取っていくのか、今後も注視したい。
(IRuniverse Midori Fushimi)