2025年の錫価格は上昇した。ロンドン金属取引所(LME)の錫価格は12月22日に現物$4万2700/tonと年初($2万8900)から48%値上がりした。ミャンマーやインドネシアでの生産が不安定で、LMEの在庫が半減した。半面、半導体をはじめ電気自動車(EV)や太陽光パネル向けなど需要は堅調。電子機器向け需要が拡大し、再生錫は2倍超に値上がりした。
2025年のLME錫価格の推移($/ton)

LME錫価格は2022年4か月以来の高値圏にある。上昇は上海先物取引所(SHFE)の錫価格も同様で、12月22日にRMB34万2860/tonと、同じく2022年4か月以来の高値に上げた。年初(RMB245.960)からの上昇率は39%。価格推移はLMEに同調し、SHFEの固有の動きは乏しかった。
2025年のLMEとSHFE錫価格の推移($/ton)(RMB/ton)

■LME在庫、1-11月は前年から5割減
価格上昇の主な要因は供給不足だ。国際錫業協会(International Tin Association、ITA)が7月に発表した2025年の錫の需給見通しでは、錫は5600万トンの供給不足になる見通しだった。
錫の需給バランス

(出所:ITA)
状況は年後半もあまり変わっていない。実際に、LMEの錫在庫量は1-11月に2万7620トンと2024年の同時期(5万5030トン)に比べ50%低い水準にとどまった。年間を通し、在庫が前年からほぼ半減した状態が続いたことになる。
過去5年間のLME錫在庫量の推移

供給不足の主因は、主要生産国の不安定化だ。生産国の1つであるミャンマーでは、2023年から錫の生産を停止している。2025年は一時、鉱山再開の方も流れたが、国情が不安定で、結局、年末近くになっても再開した形跡が見られなかった。国境を接するタイがミャンマーの錫鉱石の通過輸送を停止したこともミャンマー産錫鉱石の供給不足につながった。
また、インドネシアでは、政府が密輸取り締まりに向けて錫産業の整備を進める。一部鉱山の閉鎖や採掘ライセンスの調整を行ったほか、錫鉱石の輸出停止も計画していると伝わり、2025年の錫生産も不安定だった。
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■再生錫、電子機器分野で「アップルに続け」拡大
2025年の再生錫プレミアム価格の推移(アジア&欧州)(99.9% ingots.cif)($/ton)

より深刻なのは、錫は古くから採掘されてきた鉱物だけに、鉱山の老朽化と資源枯渇への懸念がくすぶることだ。このため、再生錫への期待は年々高まっている。再生錫プレミアム価格は9月12日に仲値$1750/tonを付けた。年初($850)からは2.1倍に値上がりし、過去5年間での最高値圏に上げている。
過去5年間の再生錫プレミアム価格の推移(アジア&欧州)(99.9% ingots.cif)($/ton)

大きなきっかけは、米アップルが2022年、同社製品の再生素材の使用量が2021年に全体の2割まで拡大したと発表したことだ。脱炭素や環境保護への意識高まりを受け、金属分野の再利用の機運が高まり、電子機器業界を中心にアップルに続く動きが加速した。再生錫の需要も年々拡大することとなった。
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ただ、再生錫はプレーヤーが少なく、供給量が少ないこともあり「希少」な再生材でもある。加えてインドネシアの錫政策の不安定さは再生材にも影響し、2025年は高騰が加速した。ただ、9月以降は再生錫プレミアム価格に動きがなく、様子見ムードも漂っている。
■フィッチ、26年の錫価格予想を上方修正
2026年も生産国が安定しない限り、錫価格の高騰は続きそうだ。米英格付け大手のフィッチ・レーティングス傘下のフィッチ・ソリューションズBMIは12月初め、2026年の錫価格の見通しをこれまでの$3万2000/tonから$3万5000へと上方修正したと伝わった。
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(IR Universe Kure)