エヌ・ピー・シー(6255) 26/8Q1決算メモ ややネガティブからややポジティブに変更
26/8期は減収とMIX悪化で13.6%減収60.4%営利減予想も、受注増で27/8期収益上伸へ
株価円(1/16)730円 時価総額161億円 発行済株22052千株
PER(26/8期DO予:31.0X)PBR(1.52X) 配当(26/8期予)10円 配当利回り:1.4%
要約

26/8Q1は、元々FS向け改造や部品以外の売上が無い計画で76.8%減収0.88億円営業赤字
1/13に26/8Q1決算が開示、説明会、補足資料の開示はなく、1/15にNPC通信にて補足説明文が届いた。26/8Q1は、売上高3.68億円(76.8%減)、営業損失0.88億円(同期比4.61億円減、赤字転落)となった。元々、FS向け改造、部品以外の売上は少ない計画で、部品調達が想定より上回ったもののほぼ計画通りに推移した。PV装置はFS向け改造、部品以外は少なく、その他ではPVCリサイクルでフレーム・J-BOX分離装置とガラス分離装置を海外1社向けに販売した。受注は24.32億円(同期比4.5倍、同18.96億円増)、主にFSサウスカロライナ新工場に向け、ベトナムやマレーシア工場から既設設備を移管するプロジェクト(改造含む)が中心。また新領域のペロブスカイトPVの前工程向けインクジェット塗布装置もFSから受注した。受注残は下期偏重になるため87.66億円(同期比25.0%増)、生産は下期出荷を睨み26.66億円(88.2%増)となった。

26/8期ペロブスカイト売上寄与も低採算、FS向けも低調で13.6%減収60.4%営利減予想
26/8期会社予想に変更はなく、売上高80.14億円(13.6%減)、総利益19.52億円(37.1%減)、営業利益7.60億円(60.4%減)予想を据え置いた。なお、再エネに対する政策見直しによるFSの既存CdTePV設備投資の不確実性があること、またペロブスカイト(Perovskite Solar Cell:以下PSCと表記)PV量産設備投資の実行時期が未定で、従来の中計計画を白紙としている。

現状、FS向けCdTe新設装置受注残が減少、受注残高では国内量産向けのPSCPV向け装置の受注残が多く残っている。26/8期も下期偏重の売上計上となる見通し。しかもPSCPV装置は採算面で劣り、高採算の部品売上もさほど増えない前提で、減収影響とMIX悪化で大幅減益となる見通し。
事業別売上では受注済みの国内向けPSC生産ライン向けが下期に売上計上を予定している。またFS向けPSC装置は、開発装置の計上(パイロットプラントは27/8期に売上予想)を見込む。PVパネルリサイクル向けでは受注済みのフレームJ-BOX分離装置、ガラス分離装置が売上計上され、短納期のガラス分離装置の当期受注、売上も期待するが、収益寄与は小さい。このため、円安寄与があるものの、会社計画並の収益にとどまろう。
トランプ政策は自国主義で追い風、高市政権PSC強化で27/8期以降収益上伸へ
同社はトランプ政権の再エネ政策が不透明として、27/8期に売上高130億円、営利26億円を目指すとした中計を一旦白紙とした。しかし中期的な事業方針として、FS向けの取組を継続し、高付加価値事業の柱を拡大し、利益率向上を図るとしている。FS向け4:PSC向け3:PVパネルリサイクル2:産業自動化装置ほか1との構成を目指し、恒常的に総利益率30%確保を目標とする。
まずFSのCdTePV向けは、トランプ政策の意向が鍵を握る。現在、米国政府が実施しているセクション201および反ダンピング・相殺関税(AD/CVD)は、太陽光パネルの市場競争力に決定的な差を生じさせている。ベトナム(396%)、カンボジア(652%)など、東南アジア諸国からの輸入結晶シリコンセル・モジュールに対し、極めて高い関税が課されている。これにより、米国の大規模太陽光プロジェクトのコストは20〜54%上昇したと推定される。これに対しFSが製造するCdTe薄膜モジュールは材料が異なるため、シリコン関税から免除されている。このため、関税コストを回避できる国内製造の薄膜製品が市場での地位を急速に高めている。さらにSection 45X税制優遇などの支援策により、米国国内での製造が強力に推進されており、FSは2026年末までに米国国内の製造容量を14GW以上に拡大する計画が進行している。また米国ではAIデータセンタの電力需要を支えるため、2030年までに60GWの追加容量が必要になると予測されている。トランプ政権下で天然ガスが推進されているものの、実際には「太陽光+蓄電池」の組み合わせにより2025年実績では新規グリッド追加の85%がこの組み合わせでなされている。これはPVが最もコスト効率が高く、かつ許認可から稼働までのリードタイムが12〜24ヶ月と短いため。データセンタの需要に応えるため、2030年までに太陽光は米国の追加発電容量の約25%(12GW)を担うと予測されている。このような環境下で、同社が懸念するFSのCdTePV追加投資の不透明感はむしろ追加投資の拡大に変化するとみられる。同社はFSに対しCdTe薄膜モジュール用ライン向け(後工程)で、ガラス/EVA/バックシート供給、自動レイアップ、バッシング/リード配線(薄膜基板上の電極接続)、真空ラミネーション(ダブルガラス対応)、フレーミング、J-Box実装などを納入している。また検査工程ではラミネート前/後レーザー検査、耐電圧試験、クラスAAAのモジュールテスター(薄膜向けパルス対応)、最終ソーティング等を納入している。薄膜対応ではCd管理などで差別化できているとみられ、改めて同社の主力事業として再拡大してこよう。
FSの次世代技術(PSCについては)は前倒しで実用化の方向にある。FSのPSCタンデム太陽電池開発は、2023年のEvolar AB買収を契機に加速している。Evolarは2019年設立の企業で、不況に陥ったCIGS(銅インジウムガリウムセレン化物)薄膜メーカーSolibro創業者らによって立ち上げられ、PSC薄膜技術と製造設備開発を専門としていた。技術の中核は「PV Power Booster」と呼ばれるPSC蒸着技術であり、PSC層を既存シリコンまたはCIGS生産ラインに統合させ、セル出力を最小限のコスト追加で25%向上させることが可能とされている。FSはオハイオ州Perrysburgの「Jim Nolan Center for Solar Innovation」をPSC技術開発の中核的拠点とし、単接合および2接合(タンデム)薄膜モジュール開発を支援する前スケールパイロットラインを装備している。同センター内にPSC開発専用ラインが設置されることになり、これが売上となる見通し。今後、初期商用化(2026-2027年)を目指し、2027年に27%効率モジュールの量産開始、その後、全薄膜タンデム(all-perovskite tandem)の生産を開始し、30%以上効率製品の商用供給を行う予定で、FSのPSCPV向け売上も拡大が続くとみられる。
同社はPSCPVの取組について、国内でも本格的な取り組みを行っている。薄膜CdTe製造で培った実績、さらにFS向けの納入実績が評価され、国内向けで25/8Q3に後工程での国内大型受注を獲得(時期的には積水化学向けの可能性)した。この背景には、「First Solar向けCdTe薄膜PVで鍛えた“薄膜量産”のノウハウ」+「Cd(カドミ)対応のEHS実務がPb(鉛)管理に転用できる」があるとみられる。薄膜系で培った製造装置の実績が強みで、電極形成・シート積層・貼り合せ等が活用できる点が示されている。実際ペリブスカイトPVでは、量産で一番効くのは「薄膜の歩留まりを落とさない“搬送・貼合・封止”」にあるとされている。フィルム型PSCは、軽量・フレキシブルである一方、量産では薄膜が傷つく/シワ/伸びや微小欠陥(ピンホール、粒子、ムラ)が致命傷となり、
封止(バリア)が弱いと寿命が一気に落ちる点が指摘され、ボトルネックになりやすい。ここで同社が強みとして挙げる「シート積層」「貼り合せ(ラミネーション)」系の量産ノウハウが活きることになる。また薄膜PV量産にあたり、電極形成工程でスループット×均一性×欠陥の向上が求められている。具体的に透明電極(TCO等)の形成にあたり、金属電極の成膜・接合、パターン形成(モジュール直列化のためのスクライブ類)、低温プロセスでの密着/抵抗/ばらつきについて、速度と歩留まりを両立させる必要がある。ここでは同社のFSCdTeでの実績が大きな優位点となる。

加えて、CdTeはカドミウム化合物を扱うため、工場側は作業者曝露(粉じん/蒸気/拭取り)管理排気・局所排気・HEPA等の設計、排水・廃液(重金属)の回収と処理フロートレーサビリティ、監査、教育事故時の封じ込め・復旧手順を“量産前提”で組まないと動かない。PSCPVがについては現状鉛系(Pb)が主流で、EHS運用(環境 (Environment)、健康 (Health)、安全 (Safety) の3つの要素を統合的に管理し、企業の持続可能な事業活動とリスク低減を実現する仕組み)についてCdと同様な取扱となる見通し。鉛の拡散・飛散を前提にした装置設計(密閉、洗浄性、回収)、廃液・フィルター・清掃廃材を“鉛含有物”として扱う運用設計点検・保全時に汚染を広げないメンテ手順まで含めた“パッケージ力”が求められ、同社は仕様書に落として現場運用まで含めて提案できる点も差別化要因と言える。同社は今回受注した以外からの開発用装置受注も獲得している。経産省が2040年までに国内に20GW程度の導入を目指す計画を公表、高市政権でも再生可能エネルギーに関し、PSC太陽電池の普及を進め、「海外から輸入した太陽光発電パネルを並べるのではなくて、むしろ日本で発明されたPSCPVを普及していく」と表明しており、今後も継続的な受注獲得が期待される。
なお、9/29に韓国のGosanTech(高性能なインクジェット技術を有し、サムスン電子やLG電子にFPD製造用塗布装置やPSC向け塗布装置を提供)と業務提携を発表、PSC製造の前工程向けに米国、日本メーカー向けにインクジェット塗布装置を供給していく方針。これによりPSCPVについては前工程、後工程の両部門の受注が可能となる。特に米国向けではFS向けにPSC前工程で上部セルのインクジェット塗布向けにQ1で早くも受注を獲得、27/8期には納入できる見通しとしている。

太陽光パネルリサイクル装置については、市場が内外で拡大中であり、今後、大きな柱となる期待をもっている。国内はパネルのガラスのリサイクルがポイントとなっている。PV(主にc-Si)のリサイクルで課題になっている点は、現状、収益の“柱”がアルミ枠・銅・銀などの高価金属で、ガラスは低単価で重量比70%を占め、運搬・前処理コストが高く、政策や規制スキームの有無で採算が左右される点が指摘されている。しかもガラスとセル/バックシートを“きれいに”剥がす工程(脱ラミ:EVA/POEの分離)が難問で、ここがLCA(ライフサイクルアセスメント)・エネルギー・品質に直結している。ガラスを高付加価値で再利用するには混入物や有機残渣の少なさが必須で、粗い破砕では“ダウンサイクル”になる課題がある。現在、モジュールに対し、有機封止材を熱的に分解・気化させる熱分解法の採用が多い。これはEVAを完全に分解除去し、回収されるガラス表面に残留物がほとんど残らないため、高純度が確保され、ガラスは骨材ではなく、ガラス原料としての再利用(クローズドループリサイクル)の可能性が高まる点にある。また、セル層に残されたシリコンウェハや貴金属(銀)もEVA残渣のない状態で回収され、その後の精錬処理や化学処理工程における純度確保が容易になるとしていた。しかし一方では、工程エネルギーと排ガス処理が問題となっていた。これに対しガラス分離という難題工程の環境負荷を低減できる手段とし、AGC、セントラル硝子が同社のホットナイフ法を用いて分離したカバーガラスの水平リサイクルを実現した。さらに同社は廃棄パネルのカバーガラスから封止材を除去する中間処理用の装置『EVA スクレーパー』を開発、2025年9月に発売を開始した。特殊なブラシでガラスを割らずに封止材を取り除く装置で、自動化で処理効率を高めつつ、不純物のない廃ガラスの供給に寄与できる。非破損パネルが一定割合で確保でき、ガラスの高位用途(新板/高品質カレット)を持つユーザーは、ホットナイフ法が板で抜けるため歩留まりと単価が両立しやすく、電力・排ガスの負担も小さめで優位点が見いだせる。

さらに同社は12/15に割れガラスPVパネル用リサイクル装置の提供を2026年4月より始めるとリリースした。具体的には災害や運搬中に破損したPVパネルに対し、ガラスを掻き取ることでガラスとセルシートを分離する装置。この投入により、同社のPVパネルリサイクル装置の製品ラインナップが4種類となり、ガラスの損傷の有無によらず処理が可能となった。

現在、同社の国内PVパネルリサイクル装置を導入した企業は18都道府県、22社で、ガラス分離装置12台、フレーム&J-Box分離装置20台の実績がある。2025年11月より開始されたリサイクル義務化に向けた再資源化事業等高度化法(リサイクル事業者の認定制度)に基づき、広域認定を受けるために同社ユーザーが申請手続きを開始している。ガラスを割らずに分離する方法が有力な方法として採用されることで、更にユーザーの拡大が期待される。具体的に広域認定などの許認可取得や将来の義務化を見据えた際に、同社の装置が選ばれる理由は以下の3点に集約されるとみられる。まず認定においては、「単に破砕して埋め立てる」のではなく、「高い純度で素材を回収し、再利用する」ことが重視される。「ホットナイフ分離法」は300℃に加熱したナイフで封止材(EVA)を溶融し、ガラスを割ることなくセル・バックシートと分離するため、「板ガラス」のまま回収できる高度な分離技術となっているため。第2には、一般的な破砕方式ではガラスと金属などが混ざり合い(コンタミ)、低品質な路盤材などにしかリサイクルできないことが多いが、同社方式では金属を含まない純度の高い「板ガラス」の状態で回収でき、ガラスメーカーへの有価売却や水平リサイクル(ガラスからガラスへ)が可能となり、再資源化事業としての質の高さを証明しやすくなること。第3には、認定を受ける際に、導入技術が環境保全上適切であり、確実な処理能力を持っているという認定が重要なこと。環境省が発行した『太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン』に同社技術が参考事例として掲載されており、既にフランスの産廃処理業者や、国内(九州の協和商会など)で導入実績があるなど、審査において有利な材料となる。さらに国の「第五次循環型社会形成推進基本計画」などでは、リサイクルプロセス自体の脱炭素化も求められている。同社技術はガラスを破砕せずに剥離するため、粉砕方式に比べて低騒音で、周辺環境への配慮が必要な施設でも導入しやすい利点がある点も見逃せない。
一方海外ではフランスにおいて2026年は、廃棄パネルリサイクルを行う組織Sorenが2027年1月以降の委託先を選定する入札を行い、委託先選定と認可更新を行う重要な年となっている。具体的にフランス本土における使用済みPVパネルの撤去、回収業務、海外領土における物流、輸送業務の委託先が決まる。この中で同社技術の継続採用、拡大が見込まれている。これはすでに同社が仏廃棄物大手Envie Aquitaineに対し、ホットナイフ分離法を用いた解体装置を納入、2022年稼働以来、順調に稼働している事が挙げられる。またSorenがガラスやシリコンを再度製品に戻す「水平リサイクル」を重視、同社技術がガラスを割らずに高純度で回収でき、水平リサイクルを唯一実施(板ガラスとして再利用済みで600t以上の実績)していることも大きいとみられる。Sorenは2026年以降の廃棄量急増に対応するため、Envie社(NPC設備導入)のような自動化・高速化された拠点をフランス全土に展開する見通しで、同社ユーザーのEnvie社の追加発注が期待される。なおさらに欧州では潜在顧客6~8社に対しデモも実施し、豪州、米国、台湾でも商談が進みつつあり、海外向けでの拡大が見込まれる。いずれにしてもパネルリサイクル装置については国内外の法整備が進むことが前提で、収益の本格寄与は27/8期以降に期待が膨らむ。
このほか、FA装置、産廃自動化装置、環境サービスとして植物工場等があるが、寄与は小さいと見られる。
全体を通じ、FSの中長期的な需要拡大、加えてPSCPV、ホットナイフ分離によるPV解体分離装置の拡大が期待される。同社は潜在的な成長力が高まるものの、収益寄与は27/8期以降になるとみられる。ただし、高市政権のPSC戦略やトランプ政策の自国主義とAIデータセンタの膨大な電力需要の高まりから、27/8期以降の企業変革に期待が高まる。
株価は10/9の25/8期本決算発表で26/8期収益大幅低迷予想となったことで暴落、10/14には583円の年初来安値を付けたが、10/17の決算説明会を期に改めてPSC関連として790円まで高騰した。しかし高値は長続きせず、その後は材料も乏しく値を下げてきた。現在、26/8期会社予想EPS24.59円に対しPER30.0倍は、スタンダード機械PER14.2倍に対し割高な状況にある。基本的に同社収益、受注はFS頼みの点は変わりがないが、トランプ政権の再エネ政策が自国主義のもとでFSに有利に作用する中でAIデータセンタ向けの電力供給設備投資が膨れ上がる見通しで、同社にも追い風が吹く可能性がある。またFSを含めPSCPVの拡大もプラス要素となる。今後、国内では高市政権により、PSCPVに対する大型設備助成策が強化されると見込まれ、PVリサイクルにおいては法規制の整備から解体関連製品の拡大も期待される。このため、収益拡大は基本的にFS頼みではあるが、27/8期以降に収益上伸が期待される。このため悪材料を織り込んだと判断、ややネガティブからややポジティブに評価を引き上げたい。



(図表は25/8H1会社説明会、25/8期会社決算説明会資料、AGCニュースリリース、GosanTechのHPなどから添付、チャートはヤフーから添付)
(IRuniverse Okamoto)