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【市況】タングステン精鉱が過去最高値を更新、APTはトン当たり100万元の大台へ――急騰する市場の行方

2026/02/12 09:26
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【市況】タングステン精鉱が過去最高値を更新、APTはトン当たり100万元の大台へ――急騰する市場の行方

中国タングステン鉱石(WO3 65%)の相場推移

 

原料調達難が続くなか、旧正月(春節)を控えた季節的要因も重なり、中国のタングステン市場は「取引量縮小ながらも価格は上昇」という特異な局面に突入している。大手タングステン企業による相次ぐ指導価格(長契価格)の大幅引き上げが市場の強気心理に火をつけ、原料価格は歴史的な高騰を見せている。

 

1. 市場概況:年初から50%超の記録的急騰

2026年2月9日時点の市場データは、驚異的な上昇を示している。

  • 黒タングステン精鉱(品位65%以上): 平均価格は過去最高の68万500元/トンに到達。年初来の上昇率は50%を超えた。
  • パラタングステン酸アンモニウム(APT): 国内平均価格がついに100万元/トンの大台を突破。年初来で49.25%の上昇を記録した。

 

2. 企業動向:大手各社が指導価格を大幅引き上げ

市場の先高観を決定づけたのは、業界大手および協会による2月前半の価格改定である。

■ 崇義章源タングステン(Chongyi Zhangyuan Tungsten Co., Ltd.)

2月前半の大口購入参考価格を以下の通り大幅に引き上げた。

  • 黒タングステン精鉱(55%): 67万元/トン(前回比 +14万7,000元)
  • 白タングステン精鉱(55%): 66万9,000元/トン(前回比 +14万7,000元)
  • APT(国家標準ゼロ級): 97万元/トン(前回比 +21万元)

 

■ 贛州市タングステン協会(Ganzhou Tungsten Association)

2026年2月の市場予測価格を以下の通り発表した。

  • 黒タングステン精鉱(55%): 67万元/トン(前月比 +21万元)
  • APT: 97万元/トン(前月比 30万元)
  • 中粒子タングステン粉末: 1,630元/kg(前月比 +480元)

なお、一部のタングステン企業は価格変動の激しさから、大口取引価格の公表を一時停止している模様だ。

 

3. 価格変動の詳細:1年余りで約3.8倍の暴騰

SMM(上海金属市場)のデータに基づくと、価格上昇の異常さが際立つ。

  • 黒タングステン精鉱(≥65%):
    • 2月9日時点:68万~68万1,000元/トン(平均68万500元)。前日比1.19%高。
    • 昨年末比: 2025年12月31日の平均価格(45万3,500元)に対し、わずか1カ月強で22万7,000元(+50.05%)の上昇。
    • 一昨年末比: 2024年12月31日の平均価格(14万2,750元)と比較すると、上昇率は実に376.71%に達する。
  • APT(国産):
    • 2月9日時点:99万~101万元/トン(平均100万元)。
    • 昨年末比: 2025年12月31日の平均価格(67万元)から49.25%の上昇。

 

4. 市場実態:高値警戒感による「商い薄」

価格は天井知らずの状況だが、実需を伴う取引は低調である。背景には複数の要因がある。

  1. 春節前の様子見: 商社等は在庫リスクを避け、必要最小限の調達に留めており、投機的な買いだめは限定的である。
  2. 資金繰りの悪化: 原料価格の高騰により、市場参加者のキャッシュフローが圧迫されており、下流企業は現金の確保を優先している。
  3. 下流産業の苦境: タングステン需要の58%を占める超硬合金(セメントカーバイド)業界への打撃が深刻だ。原料コスト(炭化タングステン等)が切削工具製造コストの80%以上を占める構造下で、コスト転嫁が追いつかず、多くの企業が減産や調達の縮小を余儀なくされている。

 

5. 今後の見通し:短期的には強気相場が継続

短期的には、原料の現物不足が解消される見込みは薄く、サプライヤーの売り惜しみ姿勢も続くため、市場は強気基調を維持する公算が大きい。

今後の焦点は「春節明け」の動向にある。

  • 短期要因: 春節直前の駆け込み需要が発生するか否か。
  • 中期要因: 連休明けの企業の操業再開ペース、および下流(超硬合金メーカー等)の需要回復力が、現在の高値水準を支えられるかどうかが鍵となる。

また、国際相場との連動性や、コスト高にあえぐ下流産業への価格転嫁がスムーズに進むかも注視する必要がある。

 

6. 結論:産業構造の歪みと持続可能性

現在の価格急騰は、単なる需給ギャップを超え、中国タングステン産業が抱える構造的な課題を浮き彫りにしている。

上流の鉱山企業が莫大な利益を享受する一方で、下流の加工産業は深刻なコスト圧力に晒されている。この「川上と川下の歪み」が長期化すれば、中国が世界に誇る超硬合金産業の競争力が損なわれるリスクがある。

今後は、国家による資源管理政策や代替材料の開発動向が、市場の新たな均衡点を探る上で重要な要素となるだろう。価格乱高下を脱し、サプライチェーン全体で持続可能な利益構造を構築できるかが問われている。

 

(趙 嘉瑋編集MIRU)

 

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