2026年3月、東京ビッグサイトで開催された「SMART ENERGY WEEK 春」にて、MIRU編集部は次世代エネルギー分野の企業展示を取材し、一部企業の担当者へのヒアリングを実施した。 本稿では、水素関連技術および電池分野を中心に、現場で得られた情報をもとにレポートする。
今回注目したのは、大きく分けて「水素インフラにおける材料課題の克服」「用途で細分化する次世代電池とBMSの進化」、そして「量産を支える製造・設備」の3つのテーマである。それぞれの分野でどのような最前線の動きがあったのか、具体的に見ていきたい。
1. 水素関連技術:現場で聞く材料課題
水素エネルギーの活用においては、安全性や耐久性に関わる材料技術が重要なテーマとなっている。まずはじめに注目したのが、総合バルブメーカーとして約75年の歴史を持つ株式会社キッツ(KITZ)の取り組みである。もともと銅合金製バルブを中心に事業を展開してきた同社だが、現在は水素関連分野にも注力している。現場でのヒアリングでは、高圧水素環境における課題として「水素脆化」が挙げられた。 これは、水素が金属内部に侵入することで材料が脆くなる現象であり、水素インフラにおいて重要な技術課題とされている。担当者によると、同社ではこの課題に対応するため、ニッケル当量を調整した316系ステンレス材料などを採用しているという。 材料設計を通じて、過酷な条件下での使用を想定した製品開発が進められているという。

また、水素を「つくる・使う」側のアプローチとして、トヨタ自動車株式会社のブースでは「水素ファクトリー」部門による展示が行われており、心臓部である燃料電池(FC)スタックが紹介されていた。会場では水素と酸素の化学反応によって発電するクリーンな仕組みについて詳細な説明が行われていた。

2. 次世代電池とBMS:用途別に異なるアプローチ
続いて電池分野に目を向けると、用途ごとに全く異なるアプローチが取られており、セル単体だけでなくシステム設計全体の重要性が高まっていることがわかる。中でも興味深かったのは、深センを拠点とする深センAYAAテクノロジー株式会社である。同社はドローンやAGV(無人搬送車)といった産業向けのバッテリーソリューションを提供している。担当者へのヒアリングによると、同社は電池セルを自社で製造するのではなく、外部から最適なものを調達しているとのことであった。その上で、自社の強みであるBMS(バッテリーマネジメントシステム)と高度に組み合わせることで製品を構成しているという。また、SOC(充電状態)の厳密な管理に関する説明もあり、用途の特性に応じた制御がいかに重視されているかがうかがえた。

電池材料の進化という観点では、万邦新能源(UNION SHINE NEW ENERGY)等の展示も目を引いた。会場では主流のLFP電池に加え、「半固体」や「全固体」に関連する次世代型の展示も確認された。電解質材料に関する具体的な説明もあり、安全で高容量な次世代電池の開発動向が熱を帯びていることが紹介されていた。

このほかにも、台湾の格斯科技股份有限公司(GUS TECHNOLOGY)によるチタン酸リチウム(LTO)電池セルの展示が行われるなど、市場のニーズに合わせた多様な選択肢が提示されていた。

3. 製造・設備分野:量産に向けた動き
これらの高度な電池関連技術を広く普及させるためには、安定した生産設備と製造体制の整備が不可欠である。量産化を支える自動化の最前線として、日本HSJM株式会社(華数錦明)のブースでは、電池モジュールやPACKの組立ラインに関する展示が行われており、生産効率を飛躍的に高める自動化設備について具体的な紹介があった。加えて周辺領域の技術として、TAESUNGからはBMSなどの制御基板に欠かせないPCB関連の精密製造装置が展示されていた。そして、こうしたサプライチェーン全体を俯瞰する動きとして、双日マシナリー株式会社が電池製造設備のグローバルな調達や、ライン構築に関する支援サービスを紹介していた点が印象的であった。
今回の現地取材およびヒアリングを通じ、水素および電池分野において、各企業がそれぞれの得意領域で着実に技術開発を進めている様子が確認できた。特に、KITZが取り組む「材料技術」、AYAAテクノロジーが示す「バッテリーシステム(BMS)」、そしてHSJMなどが担う「製造設備」といった異なる分野の取り組みが、互いに連携するように並行して進んでいる点が非常に印象的であった。次世代エネルギー産業は、こうした各要素の進化が噛み合うことで、さらなる発展を遂げていくと実感させられる展示会であった。
(IRuniverse ショウキ)