17~18日に開催した「第13回 Tokyo Battery Summit 」のバッテリーアプリケーションセッションIでは、セントラル硝子 やLE system、シャープが登壇。各バッテリーやその素材のメリットを訴求するとともに、開発状況を報告した。
地政学リスクの少ないナトリウム
セントラル硝子の久保誠氏は「ナトリウムイオン電池(SIB)用電解液の開発」の題で講演。ナトリウムイオン電池の優位性を訴求するとともに、電解液の開発状況を報告した。
久保氏はリチウムと比べナトリウムは「いくらでも採れるため地政学的なリスクが少ないほか値段の変動も少ない」と強調。さらに電池として比較した際も、エネルギー密度ではリチウムイオン電池(LIB)に軍配があがるが、最終的に寿命を迎えるまでの耐久性を示す指標となるサイクル特性においては、「リチウムと比べても遜色ないケースもあり、高温でも低温でも使えるなど利点も多い」と説明した。
その上で、構造上の違いなどから、LIBの電解液を適用するだけでは高性能なSIBは実現できないとし、SIB専用の電解液の必要性を訴求した。同氏によれば、SIBはLIBに比べてSEI(固体電解質界面)の安定性が低く、それをカバーするためにはLIBで良く使用される添加剤のFEC(フルオロエチレンカルボナート)では不十分だという。
これを踏まえ、セントラル硝子では負極用の添加剤である「Additive X(アディティブエックス)」を使用することでSEIの安定性を高め、サイクル特性としても良好な数値を出すことに成功したと伝えた。現在は最適化をさらに進めている段階であり、今後の成果が期待されている。
耐久性の高いバナジウム
続いて登壇したLE Systemの田中利朗取締役はバナジウムレドックスフローバッテリー(VRFB)の価値と重要性を聴講者に呼びかけた。
バナジウムレドックスフローバッテリー(VRFB)は、電解液の酸化還元反応で充放電する蓄電池。耐久性が高く、大規模な再生可能エネルギーの蓄電に適しており、大規模・大容量の定置式蓄電システムなどの用途として注目を集めている。
原料のバナジウムは溶解度が高く、水溶液安定性や反応可逆性に優れる一方で、高コストが課題となっている。田中氏はバナジウム資源確保手段について、「基本は主材料を抽出した後の各種スラグからの『回収』であり、日本の産業が得意としてきた分野」と強調した。
田中氏によれば、LE Systemは様々な廃棄物からバナジウムを回収する多種の技術を保有しているという。同氏はその上で、今こそ、オールジャパンの取り組みで「バナジウムの循環サプライチェーンの組立て」を目指すべきではないかと提案した。
安価かつ供給も安定の亜鉛
同セッションの最後の講演者はシャープの吉田章人氏。フロー型亜鉛空気電池の特性と開発状況について講演を行った。
フロー型亜鉛空気電池は、リチウムよりも安価な亜鉛を蓄エネルギー源とした二次電池で、一般的なリチウムイオン電池と異なり、「貯蔵部」と「充放電を担うセル」が分離された構造を持つ。充電時は酸化亜鉛(ZnO)が亜鉛に化学変化する際に電子を蓄え、放電時は空気中に含まれる酸素との作用によって、電気を取り出す仕組みだ。
吉田氏は、原料の亜鉛は多くの地域で産出されるため安価であり供給も安定していることを強調したほか、LIBの課題となっている発火リスクも極めて低いと説明。フロー型亜鉛空気電池の社会実装に向けた開発の意義を伝えた。
また、開発工程における技術課題やその克服に向けた研究プロセスも丁寧に説明した。フロー型亜鉛再生部セルでの粒子状亜鉛回収実証では回収に適したスラリー組成、充電電流密度条件の特定に成功したという。
吉田氏は講演のまとめとして、「亜鉛空気電池は実用化できないという偏見がある中で粒子を効率的に回収したりCO2の影響を無くすといった壁は突破できる可能性が見えてきた」と報告。「現在はこうしたブレイクスルーをもとに実証試験を展開しており、早期の社会実装に向けて開発を進めていきたい」と意欲を示した。
昨年10月にはオーストラリアのESI社との協業も発表。研究の加速化に業界内外からの期待が高まっている模様だ。
SIBに質疑集中
質疑応答では、ナトリウムイオン電池(SIB)に関しての質問が多くあがった。「セル単体で見たときにナトリウムは決して安くはない」という指摘について、久保氏はそれを認めたうえで、「スケールが挙がれば多少は安くなることが見込めるが限界はある。ただし、地政学リスクが無いという点は大きなメリットだと認識している」と回答した。
また、SIBが効果的に活用できるアプリケーションを問われた際は、「おそらくは定置用蓄電システム(ESS)」と答えたうえで、「熱い地域でも寒い地域でも使用できるため、多くのエリアで活用されるはず」と見解を示した。
(IRuniverse K.Kuribara)