欧州の巨大ステンレスメーカー・Aperam(アペラム)傘下であり、ステンレスブレンドスクラップ加工のパイオニアとして知られるELG。その日本法人であるELG Japanは、国内市場においてどのような戦略を描いているのか。長年の業界経験を持つ加藤社長に、中華系業者の動向、国内メーカーの現状、そして親会社が株主でもあるJSP(ジャパンステンレスプロセッシング)との関係性までIRuniverse棚町が切り込んだ。
聞き手: 棚町 裕次(IR Universe)
話し手: 加藤 社長(ELG Japan株式会社)
中華系シッパーの動向と、変わる国内の集荷構造
棚町: ここ数年の国内ステンレススクラップ市場の変化についてお伺いします。一時期、日本の業者も含めて中国市場を目指した時期がありましたが、最近は中華系シッパーの買いの勢いが国内市場に影響を与えているように見えます。
加藤: ええ。ただ、彼らも常に買いが強いわけではありません。買う時は一気に買いますが、ダメな時は全く動きません。昔から韓国のPOSCOや台湾メーカーの存在があり、その時々で中国の勢いが増すことはありましたが、「常に中国が強い」というわけではないのが実情です。
棚町: 確かにそうですね。関東圏でいえば、川崎の東和さんなどがステンレスにおいては強い存在感を示していますが、一方で中華系のヤードに直接持ち込まれるケースも増えています。国内の集荷状況において、彼らとの競合はどう見ていますか?
加藤: 中華系の業者が得意としているのは、解体物やアタッチメントが付いたままの「前処理が必要な雑品寄り」のスクラップです。彼らはそこにそれなりの値段を出して買っていく。一方で、日本の業者は手間の少ない綺麗なスクラップを好む傾向が強くなっています。棲み分けができている部分もあり、彼らの存在によって国内の大きな流れが激変しているというわけではありません。
ELG Japanの事業モデル:「淡々と2,000トンをこなす」

棚町: 御社の現在の具体的な取り扱い状況について教えてください。
加藤: 現在、月間約2,000トンのステンレススクラップ(300系、400系クロムなど全て込み)をコンスタントに扱っています。
棚町: ギロチンやシュレッダーなどの大型設備による解体加工などは行っているのでしょうか?
加藤: 基本的には行っていません。私たちがメインで買っているのは、市中のヤードに集まった「炉前材(発生スクラップ)」です。解体物をメインで狙っているわけではなく、炉前材を買ったら結果的に解体物が付いてきた、という程度です。綺麗な炉前材を集め、そのままコンテナにバンニング(詰め込み)して台湾などをメインに出口として輸出しています。
棚町: 日本国内でのシェア拡大や、拠点を増やす、あるいはM&Aを進めるといったアグレッシブな戦略はありますか?
加藤: そういった考えは今のところありません。日本のステンレススクラップ市場において、我々のシェアは数パーセントに過ぎません。日鉄さん系列や、月間1万トンを扱うような巨大なシッパーと真っ向から規模で勝負する立場にはないのです。だからこそ、我々は「淡々と」月間2,000トンを確実にこなしていく。これが基本方針です。
「親会社は同じでも国内では競合」JSPとの複雑な関係性
棚町: 少し答えにくい質問かもしれませんが、ELG本社とJSP(※(旧)日鉄ステンレスとの合弁会社)の関係についてお聞きします。ELGはJSPの株主ですが、日本国内の市場においては、ELG JapanとJSPはスクラップ集荷において部分的には競合(コンペティター)になりますよね。ELG JapanからJSPへスクラップを納入するといったことはあるのでしょうか?
加藤: それは非常に難しいところですね(笑)。前提として、JSPのジョイントベンチャーとしての管理はELG本社(ドイツ)が行っており、我々ELG Japanはノータッチです。ですので、我々ELG Japanから見れば、JSPさんは「単なる国内の同業他社・競合」という位置づけにはなりますが、JSPに納入もしているので競合であり協業でもありますね。一方で、日鉄さん側から見れば「ジョイントベンチャーのパートナー(ELG)の日本支社」という見え方になる。
輸入材の脅威と、国内メーカーの「高値維持」戦略
棚町: 国内のステンレス需要についてですが、足元では日鉄、日本冶金などのステンレスメーカーが減産を続けています。一方で、海外からの輸入材の流入が目立っていますね。
加藤: はい。特に製品(ステンレス鋼材や加工品)としての輸入材の影響は大きいです。年間約30万トン規模の輸入があり、ベトナムの青山集団系や、マレーシア、インドなどからの流入が増えています。
棚町: アンチダンピング(不当廉売関税)の議論もありますが、それでも入ってくる。逆に言えば、それだけ日本のステンレス市場が高値で魅力的なマーケットだということですよね。
加藤: おっしゃる通りです。日本のメーカーは生産量(ボリューム)を落としてでも、販売価格を高く維持し、利益を確保する戦略をとっています。ある意味で「高値の聖域」を守っているからこそ、海外メーカーからすれば、多少の関税を払ってでも日本に輸出するメリットがある。ただ、海外メーカーも日本の商社やコイルセンターと組んで強力な投資を行っており、この輸入材の流入は今後も防ぎようがないかもしれません。
棚町: 欧州市場でもOutokumpu(オウトクンプ)などが「98%リサイクル材でステンレスを製造する」と環境価値(低炭素)を前面に押し出していますが、日本市場はまた独自の難しさがありますね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

(IRUNIVERSE YT)