国内のステンレススクラップ(304系)市場における、特異な需給バランスを背景としたじり高基調。韓国向け輸出市場の冷え込みと、国内特定メーカーによる強気な調達が下支えする、明確なデカップリング(非連動)の様相。
■ 相場牽引の主役は珍しく?NY社
現在、国内マーケットを力強く牽引しているのは、通常であれば相場のプライスリーダーとはなりにくい日本冶金(以下、NY社)。間違いなく3月までは長きにわたって日本製鉄や輸出組の追随に終始していた。
しかしながら
4月に入り突如として鮮明になった同社のスクラップへのシフト。背景にあるのは、大江山ニッケル精錬工場における建屋損壊事故があった。ニッケル源の不足を補うための、緊急的かつ戦略的な措置だと思われる。
→大江山製造所における選別工場建屋の屋根一部損壊に関するお知らせ
特筆すべきは、そのアグレッシブな調達ルート。裏日本ルートから集荷されたスクラップの川崎工場への精力的な供給。国内市場のバランサーから「相場の牽引役」へと変貌を遂げた、NY社の異例の動向が業界内でひそかに注目されている。それこそ関西地区からも同社に走る業者は少なくない。
■ 日本製鉄の「キロ200円」を上回るプレミアム価格
現在の304系スクラップ国内ベース価格のスタンダードは、最大手・日本製鉄向けのキロ当たり200円前後。
しかし、足元のNY社が設定するのは、この基準値をやや上回るプレミアム価格。高値買いを展開してでも必要数量を確保する強気の姿勢。
業界内では「このアグレッシブな買いは6月頃まで継続」との噂。当面の国内価格の下値支持線として機能する公算が大、である。
指標としてのLMEニッケル相場はトン当たり17,000ドル台を安定的に推移。可もなく不可もなく。
(LMEニッケル相場と304系スクラップ市中実勢相場の推移)

■ アジアSABOT価格の停滞と輸出市場の苦戦
国内の局地的な活況とは対照的な、輸出市場の冴えない展開。
アジア市場における304系ソリッドスクラップの指標、SABOT価格はトン当たり1,300ドル前後のボックス圏での膠着状態。インド向けは1400ドルだかフレートの高さがネック。
輸出主導型のヤード業者へは逆風である。これは鉄スクラップ市場とも似ているかもしれない。主力である韓国向けおよび台湾向けの成約に苦戦を強いられる親和スチールをはじめとする主要シッパーは輸出だけでは厳しい状況だ。
■ 今後の展望と注視すべきポイント
「輸出不振によるダブつき」を「NY社のスポット的な特需」が吸収する、現在の極めてイレギュラーな需給環境。
今後のマーケットを占う上での最大の焦点は以下の2点。
NY社の高値買い終了時期(6月限界説の真偽と大江山工場の復旧状況)
アジアSABOT価格がトン1,300ドルを上抜けるタイミング
NY社の買いがピークアウトする6月以降、アジア向けの輸出環境が好転していなければ生じる相場調整局面入りのリスク。当面予想されるのは、国内需給の綱引きと海外市況のタイムラグを注視するシビアな相場展開。
(IRUNIVERSE YT)