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ニッケルブログ#28 ニッケル産業 - その6  硫化ニッケル鉱の処理

2026/04/16 16:50 FREE
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ニッケルブログ#28 ニッケル産業 - その6  硫化ニッケル鉱の処理

硫化ニッケル鉱の処理はラテライト系ニッケル鉱の処理に比べ、標準的な方法がない故により複雑です。

硫化ニッケル鉱の処理はラテライト系ニッケル鉱の処理に比べ、標準的な方法がない故により複雑です。一方、ラテライト系ニッケル鉱をフェロニッケルやNPI(ニッケル銑鉄)に製錬する生産設備は世界中に数多くあり、そこにはほとんど基本的な違いがないので、この点で大きく異なります。典型的な硫化ニッケル鉱の処理とは、選鉱して精鉱にし、その後ニッケルマットまで製錬した後、さらにこのニッケルマットを純金属まで精錬することです。

 

精鉱の生産

硫化ニッケル鉱のアップグレーディング(品位向上)は殆んど泡沫浮選法によります:採掘された鉱石はシルト状または細砂状(粒径40~150µm)まで破砕・粉砕された後、水と混合してスラリーとして一連のフローテーションセル(浮選槽)に送られ各種の添加剤が鉱石スラリー及び空気とともに強力に撹拌されます。硫化物粒子は小さな気泡に付着しセルの上部に浮上して泡沫中に集まり、そこで回収されます。

硫化物以外の脈石(廃石)は底に沈降し、浮選尾鉱として排出されます。分離工程を完結させるため複数段の浮選槽群が使用されます:まず「粗選機」で硫化ニッケルの大部分を回収し 、「清掃選機」で尾鉱中に残った回収可能な硫化物を回収します。最後に、「精選機」で硫化ニッケル精鉱から残存する脈石を除去します。

多金属鉱床に於いては優先浮選により大部分の銅はニッケルから分離され、販売可能な銅精鉱として回収されます。貴金属 (PM)は銅に、白金族元素 (PGM)はニッケルに随伴する傾向がありますが、いずれも精鉱全体に分布して含有されています。採掘された鉱石の95%以上が鉱山現場で尾鉱として排出されます。

ペントランド鉱が主要な硫化ニッケル鉱物であり、その回収率は一般的には良好ですが鉱物の粒度により異なります。粗い粒子は脈石から容易に分離されますが、超微粒子は脈石に閉じ込められ気泡付着が可能となる硫化物の表面がほとんど露出されません。また磁硫鉄鉱(ピロタイト)など無価値の硫化鉱物がペントランド鉱と密接に共存している場合には、精鉱が希釈されるため、回収はさらに複雑になります。場合によっては、磁硫鉄鉱の結晶格子中において、鉄原子の相当部分がニッケル原子によって置換されることがありますが、その濃度は経済的に回収できるほど高くはありません。その結果、ニッケル精鉱の多くは、銅精鉱の銅分25-30% 亜鉛精鉱の亜鉛分50%以上と比較しニッケル分は10-15%に留まります。

 

自熔製錬及び焙焼電気炉製錬

ニッケル精鉱はトン当たりの価値が高いため、現地処理される場合もあれば、世界各国に輸送される場合もあります。硫化ニッケル鉱の製錬所は比較的少数ですが、炉の操業条件を最適化するため様々な原材料をブレンドして処理します。製錬の主な方法は二つあります;自熔炉と焙焼電気炉製錬(roast-EF) の二つであり、いずれも通常約1400℃の高温で鉱石を溶解し、約95%という高いニッケル回収率を達成しています。

自熔精練は酸素富化ガスを用い、レンガ張りされた単一の大型炉で硫化鉱物を燃焼させます。鉱石を溶融させるためのエネルギーは硫黄分の部分燃焼から得られますが、亜硫酸ガスは排ガスとして回収され、溶融鉱石は炉底部でマット(硫黄と一部の鉄を含むニッケル・銅・コバルト・白金族元素)とスラグ(酸化鉱物)に物理的に分離されます。

マットは回収され、追加の処理容器である転炉に送られ、そこで大部分の鉄分が除去されて、精錬工程に供する低鉄分マットが製造されます。自熔炉マットの鉄分の20-30%に対し転炉マットの鉄分は5%以下ですが、まだ硫黄20%有価金属75%を含みます。一部の操業ではさらに鉄分の除去のため自熔炉を動かし、転炉の使用を省く事がありますが、この場合金属回収率を上げるためスラグのクリーニングが必要となります。

焙焼電気炉製錬では融点以下で硫黄を燃焼除去し、焼鉱を作り、高温のまま電気炉に投入されて最終的な処理が行われます。自熔炉マットの転炉処理も工程の考え方は同様で、どちらも最終目的は達せられます。

 

ニッケルマットの精製

転炉マットの精練には夫々複雑ないくつかの方法があり、多くの場合、特定の範囲のニッケルマット組成を効率的に処理するために、工程は個別に設計されています。

 

  • マットの硫酸浸出による金属分離は電解採取または水素還元と組み合わせてクラス1のニッケル金属製品が作り出されます。

  • 電解精練は、アノードとして鋳造されたニッケルマットをクラス1カソードに直接転換する方法としても使用されます。金属分離を伴うマットの塩酸浸出は、ニッケルを電解採取してクラス1カソードを製造する方法と併用されています。

  • カーボニル精製は気相プロセスですが、マットを追加的に前処理して金属化した後、これを一酸化炭素と反応させることでニッケルおよび鉄を気相中に揮発させ、最終的にそれぞれを高純度粉末として分離・析出させる方法です。

  • アンモニアリーチングもニッケル・コバルト・銅を抽出する手法として用いられ、これらの金属は分離されたのち、ニッケルは水素還元により回収されます。いずれの工程においても、PMsやPGEsは抽出残渣に移行し、将来的な回収対象となります。

多くの精錬プロセスにおいて、銅は「分離しやすい」金属であるため、最初にニッケルとコバルトから分離され、次にニッケルとコバルトがお互いから分離されます。これは溶媒抽出、アンモニア系プロセスにおける段階的沈殿、さらに水素還元プロセスにおいて、低濃度のコバルトに先立ってニッケルを段階的に回収する方法などによって行われます。

「ニッケル硫化物処理のフローシートは、ニッケルの製錬所や精錬所の数だけ存在する……などと冗談を言うことがありますが、実際のところ、その表現は決して大げさではないのです」

 

ニッケル協会とは

https://nickelinstitute.org/jp/

 ニッケル協会は、全世界の一次ニッケル生産者から成る世界的な団体で、会員全てを合わせれば中国を除く世界の年間ニッケル生産量のおよそ85%を占めます。協会の使命は適切な用途でのニッケルの利用を促進、及び支援することです。ニッケル協会はステンレス鋼など現行及び新規のニッケル用途の市場を成長・支援を行うと共に、公共政策と規制の基本として、健全な科学、リスク管理、社会経済的便益を促進しています。ニッケル協会の科学部門であるNiPERA Inc.を通じて、人の健康と環境に関係する最先端の科学研究も実施しています。ニッケル協会はニッケル及びニッケル含有材料に関する情報を集約する拠点であり、オフィスをアジア、欧州、北米に設置しています。

 

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