6月の世界経済は小康状態であるようだ。金融アナリストの川上敦氏は6月8日の「Chuck Kawakamiの金融経済Now」最新オンラインライブで、「中東紛争の折り込みが進み小康状態が続く」と分析した。特に日本は企業の内部資金の充足や株高による資産拡大もあり「そこそこ」だが、街角景気の悪さが重荷となっている。(図表は「Chuck Kawakamiの金融経済Now」から)
■「企業はため込み体質から脱却を」
内閣府が6月8日に発表した2026年1〜3月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.5%増、年率換算で1.8%増だった。川上氏は「日本のGDP成長率は2%程度、実質で0.5%程度と変わらない」と指摘。「株高によって資産価値が拡大しており、賃金も増えて少し物価上昇率を上回ってきた。総じてそれなりに悪くない」と話す。しかし、長い不景気で消費者心理がなかなか改善しないのも事実で、「街角景気は悪い」(川上氏)との指摘があった。
街角景気(先行き)の推移

川上氏は「失われた30年」からの脱却方法として、「企業はもっと投資に注力すべき」と、発破をかける。企業の設備投資は1990年代末から頭打ち。内部資金の豊富な企業が設備投資に回さず貯蓄に励む「ため込み体質」からの転換を呼び掛けた。
企業の設備投資の推移

6月は日本銀行が15、16日に金融政策決定会合を開く。ドル円相場が1ドル=160円前半と弱含む中、6月9日の一般紙各紙は「政策金利を現在の0.75%程度から1.0%程度に0.25%引き上げる公算が大きい」と伝えた。
ただ、利上げの可能性については、川上氏とセミナーに参加したアナリストとの間でも見方が分かれた。川上氏は「今週か来週に為替介入を再度行って円相場を支え、政策金利は据え置く可能性がある」と予想。参加者からは「これまで2度行った為替介入の効果が限定的だった」との指摘があり、「利上げに踏み切ったとしても0.25%程度の小幅にとどまりそうだ」との結論になった。
Chuck Kawakamiのデータでは、お金の量的な行き来を表す日米マネタリーベースは円高を示唆している。
日米マネタリーベースの推移

■原油はじめ商品は頭打ち、銅は構造的に供給不足
他に気になるコモディティ価格は中東紛争の影響を織り込み頭打ち。原油先物相場も$100/bareel近辺で上値が重くなっている。石油輸出国機構(OPEC)プラス有志国は6月7日に月次の会合を開き、7月も生産枠の引き上げを続けることを決めた。川上氏は「ホルムズ海峡の封鎖は長引いているものの、原油は潜在的に供給過剰だ」と指摘した。
銅の買い建て玉の推移

一方、銅は高値が続く。川上氏は銅について「世界の鉱山からの産出品の品質低下が始まっている一方で、AIデータセンター向けなど需要が多い」と、構造的な銅不足を要因に挙げた。また、注目なのは海運データのバルチック海運指数(BDI)。川上氏は「中国のオーダーが目立って増えている」とし、「食品なども含め、中国がやたらとオーダーを出している」と注視していた。
■米国の弱さ気がかり
日本以外の世界の地域は「米国がやや弱く、欧州は底入れ、中国は明らかに苦しい」(川上氏)。特に気がかりは米国の労働市場で、「失業者が4月に大きく増えた」(川上氏)。ただ、製造業の景況感指数は堅調で、川上氏は米経済について「住宅や自動車市況なども含めて少し嫌な感じではあるが、それほどひどくはない」と話していた。
米労働市場データ
