6月初旬現在の国内ステンレススクラップ市場における、国内需要の強さと輸出環境の悪化がもたらす「国内還流」の潮流。鉄スクラップ市場と同様、海上運賃(フレート)の高騰が壁となり、輸出主導型ビジネスから国内資源循環型へと自然発生的に移行する構造変化の局面になっている。ただ、国内還流が顕著になっていても荷余り感はない。それだけ国内発生が少ないことを示している。

■ 中部地区特殊鋼メーカーが相場を牽引、日本製鉄も追随し230円台へ突入
国内実需家による旺盛な集荷意欲と、それに伴う価格の上昇基調。
- 304系(Ni系): 大同特殊鋼や愛知製鋼をはじめとする中部地区特殊鋼メーカーの買い先行。足元の価格はキロ当たり230〜240円の高値圏。
- 316系(NiMo系);国内メーカー買値実勢でキロ当たり390~420円、輸出向けはここから若干高め。
- 日本製鉄の動向: 6月入りに伴い5円値上げの230円へ価格を調整。大手引き合いの強さを裏付ける格好。
- 400系(Cr系): 304系に負けず劣らず、特殊鋼メーカーの購買意欲が極めて強い状況。キロ当たり75円前後。
■ フレート高騰と海外減産、輸出シッパーを直撃する二重苦
対照的に、一段と冷え込みを見せる輸出市場と、シッパー勢の採算悪化。
- 親和スチールの苦戦: 仕切り価格は210〜220円と、国内メーカー向け比で一段低い水準。主たる輸出先である韓国・ポスコ(POSCO)の溶解量低下(スクラップ需要減)が直撃。これはポスコのインドネシア子会社でスラブを生産し、韓国で圧延するという流れによるもの。従って親和社としても輸出だけではない売り先も確保したいところ。あるいは新規のビジネス展開(非鉄スクラップ子会社のレック)が活発化。
- コンテナ運賃の高止まり: ホルムズ海峡封鎖の影響大。インド向けでは20ftコンテナ運賃は900〜1,600ドルの高値止まり。
- インド向け採算割れ: インド向けのオファー価格はCIF 610ドル前後。しかし、上記フレート高が重荷となり、実質的な採算ラインを割り込むミスマッチ。
■ 「輸出から国内へ」シフトする流通構造、中華系ディーラーや地方大手の戦略転換
輸出環境の膠着が生み出した、国内市場への資源還流と新たなサプライチェーンの形成。
【新局面を迎える市場プレイヤーの動向】
| プレイヤー | 従来の動き | 足元の戦略転換 |
|---|---|---|
| 中華系ディーラー | 海外輸出・雑品横流し | 雑品からステンレスを徹底選別、日本国内のメーカーへ直接供給 |
| 宮城の大手ディーラーS社 | 韓国・ポスコ向け輸出 | 買わないポスコを敬遠、中国向け(雑品選別ステンレス)へシフト |
■ 総合展望:物流リスクが生んだ「地産地消」の定着度
海外の地政学的リスクと物流コストの急騰が、皮肉にも国内の資源循環を加速させるパラドックス。
国内メーカーの購買余力が続く限り、この「国内高・海外安」の二極化構造は継続の公算。輸出シッパーの中国シフトや中華系ディーラーの国内還流といった流通ルートの再編が、今後の国内相場の下値支持線をさらに強固なものにするかどうかが注視されるポイント。