MIRUでは、スウェーデン・ヨーテボリで開催されているBIR国際リサイクル会議展示会場のブースを訪問、今回は再生メタルのトレーサビリティを推進する北欧拠点のNG Nordicを紹介する。同社部長Tero Holländer氏へ、現在の事業活動と今後の展望について伺った。
NG Nordicは約1年に設立された企業の新ブランドだが、その裏で100年にわたる長い操業の歴史に支えられている。同社は、NG Groupと Fortum Recycling & Wasteが合併した際に創設され、現在はフィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの全北欧諸国で事業を展開しており、ポーランドでもプラスチックリサイクル事業を有する。従業員数は約3,400名、施設90件、売上高は約13億ユーロにのぼる。北欧における循環性のソリューションを提供する企業としてはリーダー的存在だ。また、北欧最大の有害廃棄物処理会社およびケーブルリサイクル業者としての地位も確立している。同社がノルウェーに構えるシュレッダー施設はスカンジナビア最大規模を誇る。
同社の事業領域は多岐にわたる。廃棄物収集、焼却、有害・非有害廃棄物処理、産業解体、焼却底灰からの金属回収、鉄系・非鉄系の基本金属リサイクル、銅製錬所向けの銅ラフィネートを生産する電子機器リサイクル、銅および アルミニウム顆粒を生産するケーブルリサイクル、さらには一般プラスチックおよび医療機器プラスチックのリサイクルも手がける。2026年にはタイム誌が選ぶ「世界で最もインパクトのある100社」に選ばれている。これは、経済的な影響力に加え、技術革新や社会・環境への影響を通じて、その年の世界の動向を象徴する企業群を選出するものだ。
その同社が現在戦略的に注力しているのは「透明性の高い金属」(Transparent Metals)」と呼ばれる取り組みである。
「透明性の高い金属」の提供
「透明性の高い金属(Transparent metals)」とは、顧客に対し完全な材料トレーサビリティを提供することを目的としたNG Nordicのフレームワークである。この事業モデルにより、金属フラクションを購入した顧客が、材料の産地、加工方法、輸送時のCO2排出量、リサイクル法といったデータに、バッチ単位でアクセスすることができる。
同社の担当部長Holländer氏は、この取り組みは規制への対応にとどまらない概念であると説明する。「これは企業文化でもあります」と同氏は述べ、同じ透明性の理念が顧客のオンボーディングにも及んでおり、金融サービス業界に近いKYC(顧客確認)プロセスを採用していると述べた。
ただし、NG Nordicが扱う全ての材料フローが「透明性の高い金属」の認定を受けるわけではない。完全なデータが保証できるバッチのみがそのラベルを冠することができる。そのため大量生産は難しいが、これは「量」の最大化ではなく、同ブランドの信頼性を守るための意図的な制約だという。
需要を後押しする規制上の背景
同社のこうした取り組みは規制面においてもタイムリーである。EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)が来年、産業材料に対する排出権取引の枠組みを大きく変えようとしている。CBAM下では、EU域内に輸入される材料に内在するCO2フットプリントが価格に直接影響を与えるため、検証済みの低炭素加工履歴を持つ材料を調達することは、企業イメージの向上だけにとどまらず、財務上のインセンティブにもなる。
こうした圧力はすでに川上側にも波及している。二次金属に使用する電子機器メーカーや自動車メーカーは、調達先に対し材料の環境ポートフォリオの文書化をますます求めるようになっている。製錬業者もまた、ESG報告義務の強化により、認証済みのトレーサビリティ・データが差別化要因ではなく事業上の必要条件になりつつある。
Holländer氏は「透明性の高い金属」を、こうした構造的変化に対するNG Nordicの回答として位置づける。コンプライアンスの要求に先んじて対応しながら、川下産業が契約上要求し始めている製品ラインを構築するための取り組みである。
顧客事例
同氏はまた、一例として、アルミニウム製錬会社であるGrängesが、すでに「透明性の高い金属」のフレームワークのもとで取引を行っていることを明らかにした。同社はNG Nordicの「Circium」ブランドのアルミニウム顆粒を「透明性の高い金属」ポートフォリオの一環として受け取り、材料の産地と加工フットプリントを追跡にデータを活用している。
Grängesは、バッチ単位で文書化された情報により、単なる「主張」ではなく、自社の川下顧客およびESGレポーティングの要件を満たすことができるのだ。
透明なサプライチェーンの構築
材料トレーサビリティにおいて、あまり語られない課題がある。リサイクル業者は、そのパートナーが許容する範囲でしか透明性を確保できないという点だ。バッチ単位の完全な可視性を実現するには、物流業者、機械サプライヤー、そのほかのサプライチェーン参加者が、現状多くが達成していない粒度でデータを収集・共有する必要がある。
Holländer氏はこの制約を認めたうえで、NG Nordicが現在、データ共有能力を調達基準として位置づけているとした。必要なデータを提供できないパートナーは、他の商業的条件にかかわらず、透明性の高い金属のサプライチェーンから除外されることになる。これは適格なパートナーの数を絞り込むことになるが、Holländer氏はこれを、自社の製品品質を管理するだけでなく、業界全体の水準を引き上げるメカニズムと捉えている。
その理念の根底には、トヨタの「継続的改善モデル」であるバリューチェーンの各主体がそこに課せられる要求により改善される考え方があると言う。そのなかでは、NG Nordicの調達における判断がある種の業界統治として機能し、需要者側から購買力を通じてより優れたデータ実践への圧力を生み出すものとなるのだ。
業界標準へ向けて
Holländer氏が掲げる目標は、透明性の高い金属をプレミアムな付加サービスから業界標準へと昇華させるというものだ。ただ、その転換が規制によってもたらされるのか、顧客からの圧力によるのか、あるいは商業的な追随によるのかは、まだ断言できないと同氏は述べる。
現時点で明確なのは、NG Nordicが処理能力と同等に情報を軸として競争上のアイデンティティを構築しているという事実だ。長らく重量と品位によって金属を売買してきたこの業界において、同社は産地データと炭素データなど製品のサステナビリティが純度と同様に重要になる時代を見据え、その両方を証明できるサプライヤーとしての地位を築きつつある。
取材協力:NG Nordic, Director, Tero Holländer氏